趣味の週末懐古茶房を始めたのはよいが、珈琲の温度調整のばらつきがあったり慣れないことも多くちぐはぐな日々を送っている。それでも閑散とした商店街を通りがかった人が見知らぬ店を選んで寄ってくれることはとてもありがたいことだ。
和風店内の様子が見えない閉鎖感を救ってくれたのが北鎌倉からベスパスクーターでやってくるDさんの飄逸感に満ちた看板文字ではないかと思っている。開店して三日間の客筋を分析すると中年婦人の単身客が以外と多いことに気付いた。新規客の四割くらいを占めている。婦人客というのは様子の見えない店を忌避する傾向があるらしい。
むろん知己の訪問者もいるが、黄昏時にやってきてビールを飲みながら真空管フィールド型スピーカーから流れているモード盤男性ボーカリスト、ドン・ネルソンの「ディス・イズ・オール・ウェイズ」等をうっとりと聴き込んでいる光景を眺めていると店を始めてよかったという感慨が湧いてくる。寿司店閉鎖中にはびこったカビ退治、古い備品の放置物整理、一番苦手な分野で苦労させられた手作り店舗、よい味わいを滲みだすのはこれからの日常にかかっていると、一息入れた週初めの思いである。