四半世紀前のつまらないお話!
英国からの一時帰国の期間は10日ほどだったでしょうか、本社に顔を出した後に佐藤師匠に電話しました。
佐藤師匠は当時上野支店長でした。
「師匠!只今帰国しました。娘さんに土産もあるし、夜どうっすか?」
「お、朴ちゃん。帰ってきて直ぐに連絡くれるなんて嬉しいね~。まあ、俺が偉くしてやったから当たり前だけどね。ま、いいや何喰いたい?」
「ありがとうございます。では、美味い寿司喰いたいっす。」と銀座とか築地とかを期待して吹っかけると。
「分かってるよ~朴ちゃん。では、エリートの朴さんに最高級の寿司をご馳走しますから19時にJR大塚駅の改札で!」
と電話が切れました。
「え~ 大塚?もしかして、師匠の昔のお客さんで、回転寿しだったりして。」と昔によく付き合わされたお店を思いました。
さて、約束通りに大塚で待ち合わせ、歩みを進めていくうちに辿り着いたのは予想通りに師匠の昔のお客さんの回転寿しのお店でした。
「お、大将!こいつのこと覚えてる?俺が偉くしてやった朴君。大将!美味しいとこ握ってやってよ!」
「朴ちゃん。どんどん食えよ~‼︎」
まあ、気持ちの問題ですから、それはそれでよしです。ありがたい限りでした。
問題はですね。
例えば、我々ふたりの上司、小淵さんが亡くなった時の葬儀のお浄めや、その流れで行った飲み屋で、
「朴ちゃん、昔、一時帰国した時に銀座の寿司を喰わせてあげたら、涙流して美味い美味いと食ってたよなあ。あの時、ご馳走になったの忘れてはいないよね?」
また、今もたまに電話があり、何かと思うと
「お~!稼いでるか?朴ちゃん、外資系で働けるくらい鍛えられたのは誰のお陰でしょう? お前、年収いくら? え?言わない?言わないんじゃなくて、言えないくらいもらってるんだろ? 」
「あ~ 昔、一時帰国した時に銀座で寿司を喰わせたら、俺、北海道生まれだからこんな美味い寿司初めてですと泣きながら食ってたのは忘れてないよね?」
四半世紀前のことですよ。それも銀座じゃないし。
「師匠!すんません。今、忙しいんで。用件はなんすか?」
「馬鹿!用件なんかねーよ。暇だからかけたんだよ。お前、散々俺に世話かけたんだから、たまには奢れよ!」とか
「あ~。偉くなっら昔の恩も忘れちゃうんだあ。そんな教育したつもりないんだけどなあ」
とかぐちぐちいうんですよ。
多分照れ隠しなんでしょうね。
あと寂しいんですよね。
たまに僕もそうですから。
じゃあ、ふたりで大塚行きましょう。
いつでも言って欲しいなあ。
僕がとびきり美味い寿司をご馳走させて頂きます。大塚です!
大塚咲ではありません。
その店まだあるといいですね。
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