久しぶりにボクシング的なお話をひとつ。
コロナ禍にあっても生きていくためにはせめて仕事したふりくらいしないと。
昨日、取引先とのアポに遅れそうなので、地下鉄溜池山王駅構内の複雑なコンコースを小走りに駆けていました。
小春日和で少し汗ばむ陽気。スーツを着て鞄を持ちながら息を切らすこともなくコンコースを駆ける私。
このタフさはやはりボクシングや走り込みの成果だなあ。
さてさて、その長いコンコースの中程で、右足を下ろしかけ着地する瞬間に、寿命が尽きる前の緩慢に動くゴキブリくんが視界に入りました。
旬のゴキブリくんはご存知の通り、丸めた新聞や雑誌で叩こうにも気配で巧く距離を取ったり、と思えばたまにステップジャブらしき好戦的に反転してきたり。
ゴキブリくんは我々をビビらせる存在です。
が、しかし。
今日のゴキブリくんはもう風前の灯火。
私が仮にその右足を下ろすと、靴底中央から踵の何処かで、黒艶を失った甲羅を間違いなく完全に踏み潰し、容易く圧死させるどころか、溜池山王液コンコース床の紋様の一部とさせることは必至です。
ここで私、
それまでのリズムでは完全に踏みつけるはずのゴキブリくんの眼前数センチに右つま先を着地。
そしてさらに左脚に力を込め、右足をもう半歩前に踏み出し、ゴキブリくんを踏まずに済みました。
これはサウスポーの私が好きな、
ステップジャブのフェイントです。
リングではなかなか難しいものですけれど。
右ジャブを打つと見せかけて打たない、右足を踏み込みと思わせて踏み込まない。
右足を前に出し、打つと見せかけ打たない。その直後に打つ。
この連携は考えてもなかなか出来ません。
が、しかし、図らずしも本日、ゴキブリくん相手に日頃の鍛錬の一端を確かめることが出来ました。
ふつうのオヤジであれば不意にそのリズムやスピード、歩幅は変えられないのですから。
さて、私の日頃の鍛錬と機転により圧死を免れたゴキブリくん。
タコせんべい如くならずに済んだゴキブリくん。
あ~よかったね。
と思ったのも数秒。
私の後に来たベビーカーに呆気なく潰されちゃいました。
ベビーカーを押してたマスク着用の金髪ヤンママとマスク着用の茶色アイパーみたいなヤンママの母は下品に喚き散らすように闊歩闊歩~。
ゴキブリくんを踏み殺したのに気づいてませんでした。
あ~
なんということよ。
あ~
幸せってなんだろう?
運と不運の分かれ目はどこにあるのだろうかとしんみりと取引先へ向かったのでした。