中山七里さんによる原作の方は未読だった
のですが、物語の背景やテーマにも興味が
あったので映画「護られなかった者たちへ」
を鑑賞してみました。
この作品は2011年の震災が物語の背景に
あり、とても切なく重いテーマを扱った
お話になっていたのですが、演者の皆さん
が素晴らしい演技をされていたので最後の
エンドロールが始まる前までは完全に魅了
されていました。
佐藤健さんと阿部寛さんの演技も素晴らし
かったのですが、演技力に定評がある
清原果那さんの存在感には圧倒されました。
そして劇中の清原さんの行動を通して今作が
訴えようとしているメッセージが強く伝わって
きて胸が詰まってしまいました。
でもエンドロールを迎えた時、この映画の深い
意味についてもっと思いを巡らせたいという
ささやかな願いは叶いませんでした。
エンドソングを担当していた桑田佳祐氏に何も
悪意はありませんが、この映画の最後に安直に
「今がこの映画の一番の泣きポイントです」の
ようにバラード曲を流すというのは、今作が
ずっと積み上げてきたものを投げ出し安っぽい
ものにしてしまう演出で、本当に興醒めでした。
メッセージ色がとても強い今作のエンディングは
静かな曲の方が余計なノイズなどなく、観客達に
ストレートにこの映画が伝えようとしている大切
なメッセージが心に染みるようにもっと素直に
伝わったのではないでしょうか。
勿論受け取り方は人それぞれで、桑田氏の曲が
あったからこそより感動した方もいるのかも
しれませんが、個人的にはこの映画は最後の
一番大事なところで今の日本の芸能界の暗部
が出てしまったのではないのかと。
もし今回の件は桑田氏と同じ事務所のアミューズ
に所属している俳優を主演させる条件としての抱き
合わせのバータータイアップで始めから決まって
いたことだったとしたら、そのような下品なことは
謹んでいただきたいです。
十分に完成された作品に対し、そこに安易な歌などで
感動を上書きし、押し付けようとするのは無粋です。
そしてそれは社会的意義のある作品や、それに真摯に
応えようとした俳優やスタッフの皆さんの情熱を無に
喫する行為に他なりません。
正直今回の作品に限っては、主演の皆さんの熱の
こもった演技に感銘を受けたのにも関わらず、映画
ではなく原作小説を読むべきだったとも感じました。
これは本当に不幸で残念なことです。
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