先日、M氏と話した折りに、映画「ニーチェの馬」が話題にのぼった。
話を聞きながら、これは見てみたいと思った。
1889年、1月…トリノ市往来の広場で、御者に鞭うたれている馬をみたニーチェ。
その馬の様子に動揺し、馬を守ろうとして駆け寄り…その首を抱きしめながら…泣き崩れる。
その後昏倒。
超人を目指した男が狂気の河を渡っていく瞬間。
この事件以後10年…正気の世界に戻ることなく静かに息を引き取った。
映画の原題は「トリノの馬」
監督はハンガリーのタル・ベーラ監督。
モノクロの映像。
疲弊した馬が荷馬車を牽いて走っている。
馬の荒い息ずかい。御者台には老人…馬と同様疲弊している。
強風が吹き荒れ、土埃、枯葉を巻き上げている。
そして、痺れる寒さ。
映画は父親と娘の単調極まりない日常を描く。
父親の着替え。井戸の水汲み。
茹でジャガイモ一つと塩だけの食事。馬小屋の掃除。
その間ずっと風が吹いている。暴風である。
土、小石、が舞い上がる。
不穏な空気も感じる。
尋常でない何かが起きつつある世界でもある。
毎日、大切な何かが一つ、又一つ失われていく。
仔細な状況説明はない。
日々の労働の喜び、食後の会話、冗談、歌など…一切無い。
無駄がない。
短い会話に示唆がある。
淡々と営まれていく日常に緊迫感を感じる。
6日間を2時間34分で描ききっている。
映画に引き摺られてしまっていた。
6日目の夜、荒れ狂っていた風が収まる。
7日目は暗闇。
邦題は「ニーチェの馬」だが、題名に才気を感じる。
映画の中の「馬」は老いているが、トリノの馬ほど悲惨ではない。
ニーチェの「ツァラトストラはかく語りき」が下地にあるのかも知れない。
「神は死んだ」という言葉である。
創世記…神は6日間でこの世界を創造された。
孤高の鬼才タル・ベーラ監督は6日間で世界を破壊させた。
「一切の書かれたもののうち、私はただその人がその血をもって書いたものだけを愛する」
ニーチェは、その血でもって著作を書き表し、そして又読んでもいた…のだ。
タル・ベーラ監督の最後の作品だという「トリノの馬」
この監督のその血をもって、 撮られた映画だと思う。
話を聞きながら、これは見てみたいと思った。
1889年、1月…トリノ市往来の広場で、御者に鞭うたれている馬をみたニーチェ。
その馬の様子に動揺し、馬を守ろうとして駆け寄り…その首を抱きしめながら…泣き崩れる。
その後昏倒。
超人を目指した男が狂気の河を渡っていく瞬間。
この事件以後10年…正気の世界に戻ることなく静かに息を引き取った。
映画の原題は「トリノの馬」
監督はハンガリーのタル・ベーラ監督。
モノクロの映像。
疲弊した馬が荷馬車を牽いて走っている。
馬の荒い息ずかい。御者台には老人…馬と同様疲弊している。
強風が吹き荒れ、土埃、枯葉を巻き上げている。
そして、痺れる寒さ。
映画は父親と娘の単調極まりない日常を描く。
父親の着替え。井戸の水汲み。
茹でジャガイモ一つと塩だけの食事。馬小屋の掃除。
その間ずっと風が吹いている。暴風である。
土、小石、が舞い上がる。
不穏な空気も感じる。
尋常でない何かが起きつつある世界でもある。
毎日、大切な何かが一つ、又一つ失われていく。
仔細な状況説明はない。
日々の労働の喜び、食後の会話、冗談、歌など…一切無い。
無駄がない。
短い会話に示唆がある。
淡々と営まれていく日常に緊迫感を感じる。
6日間を2時間34分で描ききっている。
映画に引き摺られてしまっていた。
6日目の夜、荒れ狂っていた風が収まる。
7日目は暗闇。
邦題は「ニーチェの馬」だが、題名に才気を感じる。
映画の中の「馬」は老いているが、トリノの馬ほど悲惨ではない。
ニーチェの「ツァラトストラはかく語りき」が下地にあるのかも知れない。
「神は死んだ」という言葉である。
創世記…神は6日間でこの世界を創造された。
孤高の鬼才タル・ベーラ監督は6日間で世界を破壊させた。
「一切の書かれたもののうち、私はただその人がその血をもって書いたものだけを愛する」
ニーチェは、その血でもって著作を書き表し、そして又読んでもいた…のだ。
タル・ベーラ監督の最後の作品だという「トリノの馬」
この監督のその血をもって、 撮られた映画だと思う。