https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170831-00010000-hokkaibunv-hok
札幌市で2012年12月、新人看護師だった杉本綾さん(当時23)が自殺しました。
母親は、業務の過酷さなどによる過労により、うつ病を発症し自殺をしたとして、労災認定しなかった国に、労災を認めるよう訴訟を起こしていますが、これまで3回を重ねた裁判で、国側は「自殺の原因は業務によるものではない」とし、双方の主張は対立したままです。
10月に4回目を迎える裁判の行方は。あなたが裁判官ならどう判断しますか?
「杉本さんです イエイ!」
友人の結婚パーティーで、笑顔でカメラに映る杉本綾さん。
自ら命を絶ったのはこの3年後。看護師になってわずか8か月後。
23歳だった。
綾さんの時間外勤務の全記録には、過酷な状況が残されている。
看護師になってわずか1か月後の、5月の時間外は、91時間に及んでいた。
証言をもとにした1日の生活の流れは…。
午前4時30分に起床、午前6時の電車で出勤。受け持ち患者の記録を見るため定時の1時間前には出勤。
5人の患者の対応をし、その日のまとめを先輩看護師とし、午前0時ごろ帰宅。
足りない知識を補うため勉強。また出勤するという毎日だった。
そばで見ていた母親は…。
綾さんの母親:「睡眠時間は2~3時間になっちゃっていたので毎日毎日私も働いているかのように気持ちが安らがなかった」
幼い頃の綾さん:「腕が見えてきました~」
札幌市内で生まれ育った綾さんは、5歳離れた妹の面倒をみる心優しいお姉さんだった。
同居していた祖父母が、認知症や糖尿病を患ったことがきっかけで看護師の道を選んだ綾さん。札幌市内の大学の看護学部へ進んだ。
大学の卒業アルバムには、「Q. どんな看護師になりたい?」との問いに、「心身ともに癒す看護師」。
「Q. 将来の野望は?」には、「いつも「しあわせ」って言える人生」。
綾さんが就職したのは、札幌市豊平区の総合病院。肺がんや肺炎患者が入院する急性期病棟だった。
休む間も乏しい“残業の日々“が始まる。
5月の時間外は、約91時間。6月以降も時間外は続き、6月は85時間、7月は73時間、8月は85時間、9月は70時間、10月は69時間、そして、11月は65時間の勤務を重ねた。
なぜ長時間労働は続いたのか?
勤務終了後に作成が毎日義務付けられていた先輩看護師との記録には…。
(作業報告記録より):「なんでその処置が必要か、根拠について確認してください」「知らない時は調べる」
知識不足を指摘され、その要求に応えようとと、必死になっていた綾さん。
しかし、看護師になって3か月、すでに心は折れていた。
(SNSより5月13日);「この前の初めての夜勤で事故起こしたんだよね。患者さんの麻薬の量、間違ったんだ。それがもうとどめって感じで」
(SNSより7月23日):「本気でどうやったら病院に来なくていいか、存在消せるか。死ぬか?とか考えました」
夜勤明けの11月30日号泣して帰宅。その夜…。
(SNSより11月30日)
「看護師向いてないのかもー あー自分消えればいいのに なんてねー」
この2日後、一人暮らしのアパートで遺体で発見された綾さん。
遺書にはこう記されていた。
(遺書より):「自分が大嫌いで、何を考えて、何をしたいのか。何ができるのかわからなくて苦しくて、誰に助けを求めればいいのか、助けてもらえるのか全然わからなくて考えなくていいと思ったら幸せになりました。甘ったれでごめんなさい」
綾さんの母親:「一生懸命温めたら起きてくれるんじゃないかと思って、足をさすって温めようとしたが、結局目を開けてくれなかった。気付いていた人はいたはずなのに、どうして何とかできなかったのか」
母親は、綾さんは過労によりうつ病を発症したとして、労災認定を求めたが、労働基準監督署は認めなかった。
労基署によると、判断基準は、精神障害を発症するまでの6か月間を基本的に評価するという。
一つの目安は、出来事の前後に100時間くらいの時間外労働があれば、精神的な負荷を強める判断もしているという。
日本医労連の調査では、慢性疲労があるという看護師は全体の7割に達する。
特に、重い責任と判断力が求められる月に4回ほどの夜勤が、新人看護師にとって大きな負担になっている。
高齢化に伴う重症化や認知症の増加も、忙しさに拍車をかけている。
誰にも相談できず、孤立した新人看護師、綾さん。母親は娘の思いを訴える。
綾さんの母親:「現在、看護師の方もひょっとしたら1か月後うつになって亡くなるかもしれない。だから“こんな働き方でいいのか“と考える機会になれば、それで綾はようやくほっとしてくれるんじゃないかと思う」
2017年8月4日、綾さんの母親が国に労災認定を求めている裁判。
3回目となったこの日、国側は、「自殺の原因は、業務のせいではない」と双方の主張は対立したままだ。
10月に4回目を迎える裁判では、綾さんがうつ病を発症した時期などについて審理される。