https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170918-00052288-gendaibiz-soci
40~70代の約22%の人に耳鳴りの自覚症状があると言われており、その数は増え続けている。
「耳鳴りは、内耳の神経的な『異常興奮』で起こります。実は耳鳴りは全員に起こっている。どんな人でも、特殊な完全防音室なんかに行くとシーンという耳鳴りが聞こえるはずです。普段は周りの音にかき消されて気が付かないだけなんです。
ですから耳鳴り治療の終着点は、耳鳴りを失くすことではなく、『耳鳴りを気にせずに日常生活を送れるよう、その音を小さくする』ことになります」(坂田氏)
一口に耳鳴りと言ってもいくつか種類がある。ゴーとかザーという低い音が聞こえる、かん高い金属音や電子音が聞こえる、異音が混じるなど、症状は人によって千差万別。さらに急に音が聞こえる突発性の耳鳴りと、長期間続く慢性の耳鳴りがある。
耳鳴りはいかにして起こるのか。
「長時間にわたり騒音にさらされる、睡眠不足、不眠症、頭痛、ストレスなど様々な要因が考えられます。こういうものが複合的に絡んで、神経が異常興奮した状態が耳鳴りなのです。カフェインの過剰摂取も神経を興奮させるので、耳鳴りを増幅させると言われています」(坂田氏)
耳鳴りや難聴を訴えて病院に来る患者は、血管にトラブルを抱える人も多い。内耳には音を感知する「蝸牛」と身体の回転を捉える「三半規管」、頭や身体の傾き具合を感知する「耳石器」という器官があり、血流が滞ると、異常が生じ、耳鳴りやめまいが発生する。
本田耳鼻咽喉科医院院長の本田哲朗氏が言う。
「耳鳴りや難聴に関わっているのは末梢の血管ですが、そこに問題があるということは、のちのち太い血管にも障害が起こる可能性があるということ。耳鳴りを訴える人に糖尿病や高血圧、高脂血症を抱えている人が多いのは血流が悪くなっているから。
やがては脳梗塞や心筋梗塞を起こすこともあるので、早めの治療が必要になります」
ここで音を感じる仕組みについて簡単に触れておこう。
外界で生じた音(空気の振動)は耳介で集められ、外耳道(外界と鼓膜を繋ぐ耳の穴)を通って鼓膜に伝わる。
鼓膜に伝わった振動は、ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨という3つの耳小骨に順に伝わり増幅される。そして増幅された振動は、カタツムリのような形をした蝸牛で電気信号に変換されて脳へと届き、音として認識される。
この内耳部分になんらかのトラブルが起こると、耳鳴りが発生するとされている。
では耳鳴りには、どんな治療法があるのか。
JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井正則氏は、こう語る。
「脳内の聴神経腫瘍、中耳炎が原因で起こっている耳鳴りに対しては手術も治療の選択肢となります。しかし、内耳や聴神経など感音系と呼ばれる部分の障害によって起こる感音難聴に伴う耳鳴り、また原因不明の耳鳴りなどに対しては、現在、特効薬は存在しません。
そのため睡眠改善やストレス軽減を含めた生活指導や対症療法が主体となります。一般に行われているのは薬物療法で、精神安定剤、ビタミン剤、血管拡張剤などが用いられます」
原因が分からないことから、何年も病院にかかっているのによくならず、医師からも見放され「耳鳴り難民」になってしまう患者も少なくないという。なかには治療を諦めてしまう人もいる。
前出の本田氏は「耳鳴りで診察に来る人の9割が首に強いコリを抱えている」と語る。
「耳鳴りの患者さんの首を触るとカチカチになっているのが分かります。首は、脳や耳へと通じる血管の通り道なので、首周りの筋肉が硬直すると、この血液の流れが阻害されます。血液循環の悪化は、自律神経の乱れにも影響を及ぼすため、当然耳の働きにも深く関わってくる。
首のマッサージや針治療は、医学的なエビデンス(根拠)はありませんが、実際に首のケアをすることで耳鳴りが治る人もいる」
さらに、実は「顎の歪み」が耳鳴りの隠れた原因になっていることもある。実際、耳鳴りを訴える人の中には、顎関節症などを抱えているケースも多い。
広島大学名誉教授で医療法人あかね会老健シェスタ施設長の土肥雪彦氏が語る。
「顎が歪み、動きが悪くなると、中耳の内圧を調節する耳管の機能も低下し、耳内部を流れるリンパ液や血液の循環も悪化します。それが耳鳴りや聴力低下に繋がる。
そこで効果的なのが、耳を温め血流をよくすること。蒸しタオルや使い捨てカイロなどで温めるのもいいですが、耳をこすってやればいい。それだけで温度が上がり症状も改善するでしょう。
もう一つは『耳ひっぱり』が効果的です。やり方は簡単で、耳たぶの上部のくぼみにある『神門』と呼ばれるツボを刺激しながら、耳をキュッキュッと引っ張るだけ。
神門を刺激することで、血管が拡張し、自律神経の働きを正常にします。実際私はそれで耳鳴りが改善しました」