https://www.ctv.co.jp/news/articles/w3ok79wk7crkql21.html
学校や社会活動が再開されるなか、いまだ拭えない新型コロナウイルスへの不安。“見えない敵”との共存を強いられるいま、私たちはどう過ごしていけばよいのでしょうか。
実際に新型コロナウイルスの感染が起きた現場で、専門家監修のもと“空気のよどみ”を徹底検証しました。
店内で感染? “接客していない”女性が感染の謎
取材班が入手した、防犯カメラの映像。今年3月、愛知県蒲郡(がまごおり)市の飲食店の様子が映されていました。店に1人の男性が来店すると、待合室のソファに腰をかけます。その後、男性は座席へと案内され、女性と密着しながら会話をしていました。
実はこの男性、店を訪れた当時は新型コロナウイルスに感染し、自宅待機を要請されていました。自宅を出る際には「コロナをうつしてやる」などと話していたといいます。男性はその後、容体が悪化し死亡しました。
この男性が店を訪れた影響かはわかっていませんが、この店ではもう1人の感染が確認されています。感染したのは、接客していた女性ではなく、男性の席から離れた待合室に座っていた女性でした。
オーナーが証言「横にも座っていない」
当時の状況を、オーナーが証言しました。
「全く(男性の)横にも座っていないです。その状態で感染するのかなって」(YOU&ME オーナー 安田知洋さん)
感染が確認された女性は、男性と直接接触はしていません。一方で、女性は男性が来店直後に寝転がるなどしていたソファで、化粧をしていました。
少し前に男性がいた場所に、座っていた“だけ”。それにもかかわらず女性が感染したことに、オーナーは首をかしげます。
専門家は“空気のよどみ”を指摘
感染制御に詳しい愛知県立大学の清水宣明教授は、女性がこの男性から感染したと仮定した場合、2つのルートが考えられると指摘します。
「一つは接触感染なんですけど、映像で見る限り男性の手がソファに触れたのは、ほんの一部で非常に短い時間。そこで女性が同じところを触って、感染した可能性はかなり低いのでは」(愛知県立大学看護学部 清水宣明教授)
もう一つの可能性は、エアロゾル感染。吐き出した息の中に含まれるウイルスが空気中を漂い、それを吸い込むことで感染するといいます。空気が同じ位置からほとんど動かず、“よどんでいる”と発生しやすくなります。
当時、店内は換気されていたのか。オーナーに尋ねると…
「営業が始まると、ドアを閉めちゃうし、換気扇はふさいでいる状態。(3月なので)エアコンは使っていないと思います」(YOU&ME オーナー 安田さん)
**“空気のよどみ”当時の状況を徹底再現
高まる“エアロゾル感染”の可能性。男性がソファにどの程度とどまり、女性はいつ来ていたのか。映像に記された時間をもう一度確認してみると。
ソファで男性が休憩していた時間は1分50秒。そして女性がソファの前に来た時間は、その2分14秒後。この間、ウイルスが浮遊していれば、女性がここで感染した可能性が高くなります。
当時の空気の流れを再現するため、男性がとどまっていた1分50秒間に吐く息を想定した10リットルの煙を用意し、感染が確認された女性がソファに座った、“2分14秒後”の状況を検証します。
放たれた直後、ゆっくりと下に沈み始めた煙。大きく流れることはなく、その場にとどまっている様子が確認できました。
「決して閉じた空間ではないけど、ずっととどまっていますね」(愛知県立大学 清水教授)
そして、煙に大きな変化がないまま、2分14秒が経過しました。
「十分とどまっていますね。ちょうど、このいすに座ったあたりで、口がくるような位置にとどまっている」(愛知県立大学 清水教授)
この煙のようにウイルスが漂う空間で、女性がこの空気を吸い込み続けていました。女性がソファに20分以上座っていたことから、感染の可能性は十分にあったと考えられます。
「比較的広い空間であっても、そこに感染している方がいて、ウイルスを出すと感染する可能性はあるので、換気は十分にしていただく必要があるということ」(愛知県立大学 清水教授)
よどみ”避ける喚起の方法とは
検証で明らかになった、“空気のよどみ”が引き起こす感染の危険。このリスクを特に恐れているのが、再開に向けて動き出した教育の現場です。これまでに国内でも、学校内での集団感染が確認されています。
愛知県立芸術大学協力のもと、実際の教室で実験を行いました。
大学の関係者は、“見えない敵”との戦いに不安の声を漏らします。
「ある程度の人数が入るので、空気がよどんで感染につながるってことは絶対に避けないといけない。どのくらい換気ができればいいのか、場所によって換気のいいところ悪いところ、そんなところは心配というか、わからないですね」(愛知県立芸術大学音楽学部 福本泰之学部長)
空気のよどみを防ぐため、欠かせないのは“換気”です。ここでも煙を使って、実際の教室で換気の効果を検証していきます。
検証① 教室の出入り口を開放
空調設備を切った状態で、教室に煙を充満させます。そして、出入り口を1か所だけ開放してみると…。
「少し漏れているという感じですね、よくはでてこないですね」(愛知県立大学 清水教授)
煙は開けた扉から少しずつ漏れてきますが、5分経っても教室内の視界は変わりません。
「よどんだ状態ですね。ほとんど換気はできていないと言っていいと思います」(愛知県立大学 清水教授)
その後時間が経過しても、換気の効果はほとんどありませんでした。
検証② 片側の窓を全開
続いて、教室の片側の窓を開けて検証。入り込む風によって、空気の流れは変わるのでしょうか。
「窓のところだけで動いている。窓の付近は出たりかく乱されたり、薄くはなりますけど、内側からは全く動いていないですね」(愛知県立大学 清水教授)
窓の近くで煙の動きがあるように見えますが、実際には窓の近くで空気が循環しているだけでした。
そして、10分後。
「もうちょっと出るかなと思ったんですけど、少し風も感じますし。それでも換気は片側だけでは、なかなか空気の流れとしてうまくいかないんだなというのがよくわかりますね」(愛知県立大学 清水教授)
少し煙は薄くなりましたが、教室内の換気は十分とはいえない結果になりました。
検証③ 両側の窓を全開
最後に、両側の窓をすべて開けて検証。空気の流れはどうなるのでしょうか。
これまでの検証と比べると、明らかに空気の流れが違うのがわかります。開始から3分ほどで、反対側の窓を見通せるほどになりました。
窓際を見てみると、部屋の空気が効率よく外に流れでているのが確認できます。
そして、開始から9分後、煙は天井に少し残っている程度になりました。
人が行き来する高さには煙はほとんど残っておらず、10分足らずで“空気のよどみ”は解消されました。
「できれば同じ側でなくて反対側、または斜めでもいいんですけど、2か所開けてもらうのが大事かなと。肌で感じていただいて、空気の流れを感じてくれればよろしい一つの基準になると思います」(愛知県立大学 清水教授)
新型コロナウイルスと向き合い続ける上で重要な“換気”。肌で空気の流れを感じることが大切です。
また窓がない部屋には、空気を動かす扇風機などを使用するのも効果的。よどみを作らない意識が、今後の感染対策の“カギ”を握ります。
「一番大切なことは、教員も職員も学生も感染防止に対する意識を相当高く持っていただいて、社会全体で闘っていくしかないと考えています」(愛知県立芸術大学 戸山俊樹学長)
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