年の瀬の夕方。
信号待ちで、後部座席から息子が話しかけてきた。
「みてみて、あそこ、うちとおなじのがかざってある!」
彼が指さす方向を見ると、通りの向こうの一軒家の玄関のドアに正月飾りが取り付けられていた。
「あ、本当だね。正月飾りっていうんだよ」
「どうして しょうがつかざり かざるの?」
私は一瞬考えてから、
「飾ると良いことあるみだいだよ」
と答えたら、
「いいことってどういうことがあるの?」
と、彼はなんだか楽しそうにいうので、
私は再び一瞬考えてから、
「そうだね、たとえば、〇〇とママとパパがこれからの一年間健康で元気でいられるとかね」
と答えたら、4歳の彼は呆れたように、
「そんなのあたりまえじゃーん」
と答えた。うーん、当たり前のことじゃないんだよ、と言いそうになって、またちょっと考えて、
「そうだね、確かに当たり前かもしれないね」
と言ったら、「そうだよ、あたりまえだよ」と彼は繰り返した。もっといいことないの?と。
毎日手を合わせるような気持ちで過ごしている自分としては、家族の健康が何よりだけれど、息子がそれを当たり前だと認識している現実がまたありがたくて嬉しかった。