論点
理論的には、従来の刑法学の体系との整合性が問題となる。実際的な観点からは、共謀罪の創設による犯罪の未然防止と市民の権利・自由の範囲が問題となる。
共謀罪
組織的な犯罪の共謀罪(そしきてきなはんざいのきょうぼうざい)は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「本法」)案6条の2所定の、一定の重大な犯罪の共謀を構成要件とする犯罪をいう。
日本の刑法は、未遂罪は「犯罪の実行に着手」することを構成要件としており(同法43条本文)、共同正犯(共謀共同正犯)も「犯罪を実行」することを構成要件としているために、組織的かつ重大な犯罪が計画段階で発覚しても、内乱陰謀(同法78条)などの個別の構成要件に該当しない限り処罰することができず、したがって強制捜査をすることはできない。
日本国政府は小泉政権当時、同罪導入のための法案を国会に3度提出したが[注釈 1]、いずれも廃案となった。
2007年2月、安倍晋三総理の指示により、自由民主党法務部会の「条約刑法検討に関する小委員会」(笹川尭委員長)は、共謀罪を「テロ等謀議罪(てろとうぼうぎざい)」に名称を改め、対象犯罪を600以上から128~162(テロ犯罪が72、薬物犯罪が23、銃器等犯罪が10、密入国・人身取引等犯罪が8、その他、資金源犯罪など、暴力団等の犯罪組織によって職業的または反復的に実行されるおそれの高い犯罪が14~48)まで減らす「修正案要綱骨子」を決定したが、同年7月の参議院選挙で自民党が大敗し、自公連立政権の参議院議席が過半数を割り、ねじれ国会になったため、国会に提出されなかった。
平成29年の第193回国会(2017年)へのテロ等準備罪(てろとうじゅんびざい)法案提出に際し日本国政府は、テロリズムを含む組織犯罪を未然に防止する国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(国際組織犯罪防止条約、パレルモ条約、TOC条約)の締結のために必要であると主張し、犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定し、計画行為に加えて実行準備行為が行われたときに初めて処罰される等の点が、かつての「組織的な犯罪の共謀罪」との違いであると主張している。
2017年8月28日にシーシェパードは、団体の活動資金が限られていることと、日本でテロ等準備罪が施行されたことにより、活動の継続が難しくなったとして、南極海での日本の調査捕鯨に対する妨害活動を中止することを発表した。
立憲民主党の逢坂誠二により、「構成要件が厳しく、実務面で意味がないのではないか」との質問が政府に対してなされたが、政府は「テロ等準備罪」の新設を柱とする改正組織犯罪処罰法施行を受け日本が締結した国際組織犯罪防止条約を踏まえ、「国際社会と協調してテロを防止する上で大きな意義がある」と反論している。
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11年法律第136号)[編集]
- (定義)
- 第二条 この法律において「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるものをいう。
適応範囲
- 1 この条約は、別段の定めがある場合を除くほか、次の犯罪であって、性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものの防止、捜査及び訴追について適用する。
- (a) 第五条、第六条、第八条及び第二十三条の規定に従って定められる犯罪
- (b) 前条に定義する重大な犯罪
- 2 1の規定の適用上、次の場合には、犯罪は、性質上国際的である。
- (a) 二以上の国において行われる場合
- (b) 一の国において行われるものであるが、その準備、計画、指示又は統制の実質的な部分が他の国において行われる場合
- (c) 一の国において行われるものであるが、二以上の国において犯罪活動を行う組織的な犯罪集団が関与する場合
- (d) 一の国において行われるものであるが、他の国に実質的な影響を及ぼす場合
第五条 組織的な犯罪集団への参加の犯罪化
- 1 締約国は、故意に行われた次の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
- (a) 次の一方又は双方の行為(犯罪行為の未遂又は既遂に係る犯罪とは別個の犯罪とする。)
- (i) 金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの
- (ii) 組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為
- a 組織的な犯罪集団の犯罪活動
- b 組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)
- (b) 組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、幇助し、教唆し若しくは援助し又はこれについて相談すること。
- 2 1に規定する認識、故意、目的又は合意は、客観的な事実の状況により推認することができる。
- 3 1(a)(i)の規定に従って定められる犯罪に関し自国の国内法上組織的な犯罪集団の関与が求められる締約国は、その国内法が組織的な犯罪集団の関与するすべての重大な犯罪を適用の対象とすることを確保する。当該締約国及び1(a)(i)の規定に従って定められる犯罪に関し自国の国内法上合意の内容を推進するための行為が求められる締約国は、この条約の署名又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の際に、国際連合事務総長にその旨を通報する。
組織的な犯罪の共謀
第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
- 一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮
- 二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、第三条第二項に規定する目的で行われるものの遂行を共謀した者も、前項と同様とする。
一部改定
(テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画)第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
- 一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
- 二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮
wikipediaを一部修正
ファーファ「これも2007年だよね」
soop「当時の事を知る人には解るよね」