春休みだけの特別レッスンを頼まれました。
レイ君・18歳です。
レイ君は4月から、某大学の初等教育科に進学するのですが、
ピアノの経験が無い為、短期集中でレッスンを受けたいとのことでした。
レイ君が、知的を伴わない発達障がいだということはうかがっていました。
コミュニケーションが苦手、
それから、色々なことに拘りがあるということ等、
お母様から事前に説明を受けましたが、
会ってみないことには、どのような様子なのかは分かりません。
あと、紹介して頂いた方から、
お母様の過干渉が強く、自立できていない、とも聞いていました。
私は、緊張感を持ちながらレイ君を待ちました。
レイ君は、お母様と一緒にやって来ました。
はっきりとした目鼻立ちのイケメン君でした。
立ったまま簡単な挨拶をした後、
私は思いきってお母様に言いました。
「出来れば、レイ君ひとりでレッスンさせて頂けませんか。」
「えっ!?だいじょうぶでしょうか。」
「4月から大学生ですし、レイ君はひとりでも大丈夫じゃないかな?
レイ君、どうですか?」
「はい、ひとりでも大丈夫です。」
お母様は、不安そうな表情で帰っていかれました。
私はレイ君をピアノの椅子に座らせて聞きました。
「今からレッスンを始めますが、まず最初にうかがいますね。」
「はい、何ですか?」
「あなたの事を、何とお呼びしたら良いでしょうか?
レイ君? それともサトウ君?
どちらが良いですか?」
「レイ君でお願いします。」
「分かりました。それではレイ君、と呼ぶことにしますね。」
このような事を聞いたのには訳があります。
レイ君のようなタイプの子は、
馴れ馴れしい接し方を嫌う場合があるのです。
なので、初対面の私に、
「レイ君。」と呼ばれる事に嫌悪感を感じることもあるかも、と考えたのです。
「それでは、レイ君、」
と私が言ったところで、レイ君は一気に喋り始めました。
喋った内容は、Hzについてです。
「ピアノのHzは440と442の2種類があると聞いていますが、
このピアノは何Hzで調律したのですか?」
「このピアノは、442で調律してありますよ。」
「それでは、440Hzで調律してある僕の電子ピアノとは全然違う響きになりますね。
Hzによる響きの違いは。。。」
こんな具合で、Hzの違いについて語り始めたのです。
「レイ君、Hzの話は興味深いのですが、
その話はピアノのレッスンが終わってからにしましょう。」
「あっ、すみません。」
「大丈夫ですよ。
Hzの話も含めてピアノレッスンですから。」
「ありがとうございます。」
「ただ、大学でピアノの授業が始まるまでに、少しは指を慣らした方が良いので、
今回は、ピアノを弾く事を中心にレッスンしましょう。」
そんな感じでレッスンを始めました。
次回に続きます~
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