少し間が空いたので、初回分も含めて~一緒に登場人物たちを育てましょ!感想をお待ちしています。前回も、今ではコメントがなくなりましたが、「よしいさん」に支えられ書き上げることができました。
今回も、そんな素敵な読者が現れないかな~期待です。
先日、コメントをくれた、Cさん、ぜひ、お読みくださいね。
「よーし、食べろよ、たくさん食べろよ。ここのミートソースは格別なんだ!」
ミートソースのたっぷりかかったスパゲティーが運ばれてくると、南先生はこう言った。話すリズムや声の色、言葉の種類、すべてがあの時のままで、懐かしい。もしかしたら、変わっているのかもしれないけれども、先生の顔を見ると小学生のころの自分に戻り、そう感じてしまうのかもしれない。
「坂田君、大学生活はどうですか?楽しくやっていますか?」
今度は、明らかに気取った口調で聞く。
「先生、『坂田君』なんてやめてくださいよ。『ハルキ』でいいですよ」
「立派な大学生になったんだ、『ハルキ』なんて呼ぶのは申し訳ないからさ」
「いいんですよ、先生はいつまでも僕の先生ですから…」
「すまないなあ。勝手な思いで、時々、メールして。でも、ありがたいなあ、こんなふうにわざわざ会いに来てくれて。ありがとうな、本当にうれしいよ」
緑川市のレストラン。僕は朝日川から舞鳥に帰省する途中、緑川の駅に降りた。
薄い黄色の壁にひまわりの大きなポスターが貼られている。僕らの他に、お客さんは二組。高校生の男の子と女の子が仲良く、一つのパフェを食べている。
もう一組は、小さな男の子を連れた若い夫婦。男の子が、僕らと同じミートソースのスパゲティーを食べ、ソースの色で口が顔の半分になっている。お母さんがその顔を見て、笑いながら、小さなタオルを鞄から出して拭いている。
南先生に最後に会ったのは、中学の卒業式の日。舞鳥中学校は、卒業式の日に小学校時代の先生方を招待する。当時、広人が転校して行った寿町の小学校に勤務していた。
僕は、中学卒業後、高杉君との約束どおり、北城高校へ進学した。卒業式当日は、まだ、合格発表前で、僕は入試の自己採点の結果が満足いくものでなかったので、随分、落ち込んで、先生に、
「落ちたらどうしよう?」と相談したことを覚えている。
「ハルキ!大丈夫だ。落ちたって、命を取られるわけじゃなし、やり直しはいくらでもきくから」
南先生らしい励ましの言葉と大きく口を開けて笑った表情に元気をもらった。
今日は、三年ぶりの再会の日だった。丸いテーブルを挟んで向かい合い、懐かしい笑顔に再会して僕はたまらなくうれしい気持ちだった。
「くるみちゃんは、元気ですか?」
「もちろんさ、時々、メールで写真も送ってたけど、元気さ。二歳になった。さおりに似て美人になるぞ。まあ、まあ、話は夜にでもできるから、冷めないうちに食べるといい」
僕は、スパゲティーを思い切り頬張った。美味しかった。美味しくて涙が出た。
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