第206回記事(2014年8月25日(月)配信)・・・・・(毎週月曜日配信予定)
この「経営の本棚」のカテゴリーの紹介本は、著者が経営者で出版からかなりの年数が経過しているものを中心に選択しています。
その基準からすると、出版が2012年10月とかなり新しいのですが、
タイトルから受ける衝撃性と、
著者の中川さんをテレビで2回見させていただいき、かなり実績を積まれているようなので、
選びました。また、ブランドをつくる考え方は参考になると思います。
本のタイトル:
老舗を再生させた13代がどうしても伝えたい 小さな会社の生きる道。
というのが正式な本のタイトルとなるようです。
著者:
著者名記載欄には単に 中川淳 と記載されているのではなく
中川政七商店 十三代 中川淳
と記載されていることが多いです。そのため、
中川政七商店と著者の経歴について簡単に紹介しておきます。
中川政七商店:奈良市で主に麻問屋をやっておられた。
シェアはかなり高かったようですが、麻の需要減退で経営的に苦しくなる。
その後、「遊 中川」などの小売業に進出されています。
経歴:富士通を経て、中川政七商店に入社。現在社長。
自社の経営を改善された。
(その経緯は、「奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。」に詳しい)
その後、「日本の伝統工芸を元気にする!」というビジョンでコンサル活動を実施。
目次:
第1部と第2部に分かれていて、第1部は今までのコンサル5社が時系列で書かれている。
第2部が事例から導きだされる、これからの生きる術が書かれている。
基本的には「ものを売る」という考えではなく、「ブランドをつくる」という考えで統一されており、
ぜひこの「ブランドをつくる」というとこをお読みいただき、理解されたらと考えて、
今回掲載しています。
第1部
5つのケースにみる小さな会社の生きる道
(豊岡市の鞄製造メーカのバックワークスさんが第2章に載っています。)
第2部
ものづくりの会社に必要な考え方
(経営、ブランディング、ものづくり、コミュニケーションの4編に整理して説明。約60p。)
(特に、244pからの「イメージコラージュ」は私には大変参考になりました。お勧めです。)
写真:
出版社:阪急コミニュケーションズ
初版:2012年
定価:1500円+税
(井上 直久)
第197回記事(2014年6月16日(月)配信)・・・・・毎週月曜日配信予定
井上三郎右衛門@晴耕雨読です。
いよいよブラジルワールドカップが開幕しました。
日本チームには頑張ってほしいですね。
そして、ちょうど今、コートジボアール戦で本田選手が1点入れたところです。
私もこれから頑張って記事を書いていこうとしています。
はじめに
今回紹介する本は、良品計画会長の松井忠三さんが書かれた、
「無印良品は仕組みが9割」です。
本の出版は2013年度と比較的新しいのですが、2000年ごろからの良品計画(無印良品の会社名)の苦境をどのようにして脱出されたかが書かれています。
方法は、「仕組み」をつくることによってですが、その多くの割合の部分は「MUJIGRAM」というマニュアルをつくることです。その自社のノウハウともいえるマニュアルが一部公開されていますが、わざわざ公開してまでこの本を書かれたのは、
一つ目が「日本の経済を元気にしたい」、
二つ目が「「仕組みを大切にする考え方」は働くうえで大いに役に立つ」、
と考えられたからです。
データ
1400円(税別)
角川書店
221p
内容
本のタイトルを私の理解した範囲でもう少し噛み砕いてみると、
「無駄な努力をやめさせて、会社などの成果に繋がる仕組みをつくることが大切」
という内容でしょうか。
”はじめに”の2pに次のような記載があります。経済状況が厳しい中で、努力に努力を重ねているビジネス・パースンがたくさんいます。しかし、そのような「努力」が、正しく「成果」に結びついていないケースが多いように感じています。私も同じように感じています。
その状態からどうしたら脱出できるのか。それが仕組みつくりです。
仕組みをつくればどのような好循環のサイクルが回るのかは109pに、仕組みをつくるメリットは75pにまとめられています。この部分だけでも読んで理解されるのが良いのではと思います。
また、仕組みをつくることで実行力を大幅に上げることも非常に大切だと書かれていると理解しました。
私は、マニュアルをつくることで業績を回復できるのか?仕組みをつくるだけで会社が良い方向に向かうのだろうか?といった疑問を持っていましたが、読んで納得できる内容でした。そのことは、最近の良品計画さんの業績の好調さ(売り上げが2013年度は2000臆を初めて上回った)からも納得できる内容でした。
会社の中に仕組みをつくっていきましょ。
目次
(章のサブタイトルがポイントをよく表しています。そのため、わざわざサブタイトルまで記載しました。サブタイトルの意味をよく理解いただければと思います。)
はじめに 努力を成果に直結させる
序章 なぜ無印良品には”2000ページのマニュアル”があるのか
――「標準」なければ「改善」なし
1章 売上げとモチベーションが「V字回復する」仕組み
――「人を変える」のではなく「仕組みをつくる」
2章 決まったことを、決まったとおり、キチンとやる
――「経験」と「感」を排除せよ
3章 会社を強くするための「シンプルで、簡単なこと」
――「他者」と「他社」から学ぶ
4章 この仕組みで、「生産性が3倍にできる」
――「むくわれない努力」をなくす方法
5章 自分の仕事を「仕組み化する力」をつくろう
――「基本」があれば「応用」ができる
<三>
追記
2014年6月22日(日)のがっちりマンデーに松井会長が出演されていました。
本を読んだ後でさらにTVでの説明を見たので、たいへんよく理解できました。
第190回記事(2014年4月21日(月)配信)・・・・・・毎週月曜日配信予定
井上直久@晴耕雨読です。
最近、野球のイチロー選手が日米通算3018試合の日本人最多出場記録更新の記事が新聞に出ていましたので、思い出した本があります。
野村克也著 「無形の力」 (日本経済新聞社)
(本体1500円+税。2006年初版。)
著者はみなさんよくご存知のプロ野球チームの元監督の野村さんです。
(ちなみに、破られる前の記録の保持者は野村さんであり、
野村さんは、兵庫県豊岡市の隣の、京都府京丹後市の出身です。)
大企業に対して、中小企業は弱者です。
人がいない、物がない、金がない。
しかし、こらからも生き残っていかないといけない。
その為にはどうするのか?
弱者なら「弱者の戦略」で生き残っていくようにする。
たとえば、壁にぶち当たった時に、智恵を出すようにする。
智恵をまとめると、無形の力になる。
(別の言葉では、「知的資産経営」ということになります。)
これが一つの大きな方向性であり、結論でしょう。
この本は著者が、プロ野球界で壁にぶち当たったときに絞ってきた智恵がまとめられており、「弱者の戦略」について書かれています。
経営書とは異なりますが、経験に基づいた話であり、格言などの大変に含蓄に富んだ言葉が多数入っており、
一読をお薦めしたい本です。
タイトルの「無形の力」に関して、本の帯とはじめにの部分の文章を一部使用し、私の言葉と組み合わせ、再度、本の内容の概略を以下で紹介します。
「無形の力」は弱者の戦略の基礎・原点である。
野球では、パワーやスピードといった目に見える力だけではなく、さまざまな力がある。
「情報収集力」「分析力」「観察力」「記憶力」「判断力」「決断力」・・・・・・・・。
勝つためには、こうした目には見えない「無形の力」を存分に発揮することが重要なのだ。
強者が身体能力を生かしてくるなら、弱者は頭脳で勝負する。
目に見えない力、つまり「無形の力」をフル活用してこそ勝機(商機)が見出せる。
壁にぶち当たったとき、強者に挑むとき、私はいつも知恵を絞ってきた。
「目に見えない力」=「無形の力」が人生(会社)を変える。
PS
著者の別の本に「エースの品格 一流と二流の違いとは」(小学館)という本があり、
この本にも「無形の力」という記載が多数出てきます。
また、「組織はリーダの力量以上には伸びない」(69p)との言葉は経営者の方には大変参考になるのではと思います。
第184回記事(2014年3月2日(月)配信)(毎週月曜配信予定)
<はじめに>
●今回は、大阪府東大阪市にある「ハードロック工業」株式会社の代表取締役社長をされている「若林克彦」さんの書かれた「絶対にゆるまないネジ」という本をご紹介します。
<内容>
●若林社長は、「東大阪のエジソン」とも言われており、ネジに関する特許・実用新案を取得されて、差別化できそうもない「ネジ」で世界一の商品を生み出し、事業を行っておられます。しかし、アイデアがいくら良くっても、それを実用化するレベルまで高めることも大切ですし、コスト低減も大切ですし、売れるようにすることも大切です。それらの困難をひとつひとつ克服されて現在のハードロック工業があります。2012年6月期の売り上げは約12億5千万円とのことです。
●この本のポイントは、サブタイトルである~小さな会社が「世界一」になる方法~
からもわかるように、中小企業の生き残りを考えた場合の一つの方法として、技術的アイデアをベースに、どのように成長し、オンリーワンとなって生き残っていくべきなのかを指し示してくれる本です。下請けからの脱出を考えておられる方などに有効な本ではと思います。
<データ>
表紙:
著者:若林克彦
出版社:中経出版
ページ数:223p
出版年:2011年
<独り言>
▲「日刊工業新聞」(インターネット版)の「元気印中小企業」コーナに、2014年2月21日付けで「ハードロック工業」さんの紹介記事が掲載されています。本のあらすじはこちらの記事とほぼ同じです。参考にしてください。
▼私もかつては技術者で、特許・実用新案を60~70件くらい書いた覚えがあります。しかし、事業に繋がらなかった。事業に繋がらなかった・事業にならなかった理由を当時は他責で考えていましたが、この本を読むと自責にしないといけないと思います。
◆自社の売り上げが上がらない理由を、景気が悪いといった他責には簡単に出来ますが、自責で考えることで、突破口が見えてくるはずです。嘆いてみても何も始まらない。
第180回記事(2014年2月3日(月)発行)(毎週月曜発行予定)
●まずはじめに、
ビジネス寓話というものをご存知でしょうか。比喩によってビジネス・経営に馴れ染めの深い出来事を書き、それによって諭すようにした物語のことです。ビジネス・経営の現場が別の場に置き換わり、必ず擬人化が行われます。
今回はそのビジネス寓話に関するものです。
●あらすじは、
あるところに2匹のねずみと2人の小人が住んでいて、日々を生き延びるために、巨大な迷路の中で毎日チーズを探し回る生活をしています。ある時、大量のチーズを見つけ、チーズを探し回らないでもよい夢のような生活が続きました。しかし、ある日突然チーズが消えてしまいます。その消えてしまったという変化に対して2匹と2人がそれぞれ個性的な対応をします。
●ポイントは、
知性の高い人間を擬人化した小人は、ネジミに比較し知性が高いはずなのですが、チーズ(=ビジネスや人生における成功や幸せ)が消えるという事実(=変化)を受け入れられず、夢のような過去にこだわり続け、チーズの無い現状にしがみついてしまいます。
同様のことはビジネスの世界でもありますよね、過去の成功体験が企業の衰退の原因であったといった例です。
●そこから導かれる結論は、
社会や市場の変化は必ず起こるものであり、変化を探知・予期し、変化にすばやく対応し、自分自身が変わることが大切ということです。
かつて日本でもベストセラーになった本です。
〇ページ数は94ですので、あっという間に読めてしまいます。扶桑社。838円+税。2000年出版。
〇原題はWho Moved My Cheese?
〇写真