(2012年2月27日発行)(次回3月5日予定)
今回は、ものづくり・工場改善の12回目ですが、今までとは少し毛色の違った内容で、会社の経営に関係する「見える化」についてです。
著者の小山昇さんは株式会社武蔵野の社長さんで、株式会社武蔵野は経営品質では良く知られた会社です。会社の色々な点を「見える化」されることで、日本経営品質賞(中小規模部門)を2回受賞されています。日本経営品質賞を2度も受賞した会社は他にはありません。それだけ、すごい会社ということになります。
経営品質をご存知ない方も多いかと思いますので、説明をしますと、「企業が長期にわたって顧客の求める価値を創造し、市場での競争力を維持するための仕組みの良さを表すものが経営品質」です。日本経営品質賞は、日本経営品質賞委員会が受賞企業を決めており、日本生産性本部が関係しています。
この本は、大変気軽に、そして面白く、あっという間に読めますので、一度購入して読んでください。
年間12冊の中の3月の一冊です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
タイトル:経営の見える化
著者:小山昇(株式会社 武蔵野 代表取締役社長)
出版社:中経出版
ここが読みどころ:
「大変面白いです、ま~あ一度全部読んでみてください。」というのが結論です。
本の表紙に「9割の社長・幹部は自分の会社のことは何も知らない」というドキッとすることが書いてあります。本当にそうなのか?全部読んでいただいて決めてもらうしかないでしょう。
内容:
小山社長の発想が一般的な発想とどれだけ違うかを、第1章の中からひろってみました。
25p:まず、まねるから入る
37p:経営計画書にはできることだけ書く
41p:まずやらないことを決める
49p:経営改革書には社長の実印を押す
かなり違うことを実感じただけたのではないでしょうか。
目次:
第1章 「社長の思い」の見える化
第2章 「お金の流れ」の見える化
第3章 「儲かっているかどうか」の見える化
第4章 「現場の仕事」の見える化
第5章 「情報」の見える化
第6章 「評価」の見える化
ページ数:223p
価格:1429円
外観
井上三右衛門
(2012年1月30日発行)(次回2月6日予定)
今回は、ものづくり・工場改善の11回目になります。
この本は、書店で本を物色していて見つけました。なかなか良いなと感じて購入をしました。著者の一人の田村先生はIEの専門家のようです。その著作も持っています。そのため、「IE」の視点からみた「見える化」の本になっています。特に、IEの視点で見たモノづくり最適化の原則が記載されており、役に立つと思います。興味のある方は、本の購入などをご検討ください。
年間12冊の中の2月の一冊です。
タイトル:見える化でわかる ムダつぶしコストダウン
著者:田村孝文(日本能率協会コンサルタント。IEをベースに生産性向上、品質改善、原価低減、生産管理改善などを指導。) 大塚泰雄(大手工作機械メーカに11年勤務。現在、(株)MEマネジメントサービス取締役。マネジメントコンサルタント。)
出版社:日刊工業新聞社
ここが読みどころ:
「はじめに」の部分では、著者の経験から、巨大資本で設備投資をする中国などの新興国に対し、日本的なモノ作りを極めてモノ作り国家として存続をしてほしいとの強い希望が書かれています。
第3章のモノづくりの原則を適用する-モノづくり最適化の原則とは-に、製造方式を設計・改善していく際の多数の原則が分類されて記載されています。
■工程のつなぎ方の5原則
■人と設備のつなぎ方の5原則
■設備と設備のつなぎ方の5原則
全ての原則を記載すると大変長くなるので、私が気付きがあった原則を記載しておきます。これらは、実際に読んでいただくとなるほどと納得いただけると思います。
○量的分業を優先する
○人をネックにする
○ばらつきダン緩衝の原則
○ロットを変えない
内容:
まず、17pに「見える化」のレベルが5段階で記載されています。参考になると思います。
「見える化」の方法は、標準原価管理を用いて行います。117p。材料費、労務費、製造経費別に消費量差異(製造責任で発生)と価格差異(管理責任で発生)を明確にすることで「見える化」を実現させます。
また、122pでは、見えるロスよりも、見えないロスのほうがコストダウン余地は大きいことが多いことが強調されています。見えないロスの事例が6つ記載されています。
余談:
110pに、南極第1次越冬隊の西堀越冬隊長のことが書かれています。最近のTV番組で南極大陸が放映されましたが、大切なことは、まず越冬したことが無い中で越冬するという大目標を決める。大目標を決めた後に、越冬をするためには何をするべきかというアプローチを行うことです。とにかく、大目標を決め、その大目標を達成するための手段を徹底的に研究し、それを実現するための一番良い方法は何かを考えることです。状況分析的なアプローチからは、大きなブレークスルーは生まれない。
目次:
第1章 モノづくりの現場のロスとは
第2章 ロスのないモノつくりとは
第3章 モノづくりの原則を適用する
第4章 モノづくりで設備の特性を活かす
第5章 標準原価管理により、現場のロスがお金で見えるようにする
第6章 現場の材料費のロスをつぶしてコストダウン
第7章 現場の労務費のロスをつぶしてコストダウン
第8章 現場の製造経費のロスをつぶしてコストダウン
ページ数:205p
価格:2400円
外観
井上三右衛門
(2012年1月16日発行)(次回1月23日予定)
ものづくり・工場改善関係の本のブックレビュー・紹介の10回目になりました。紹介では、あまり本を書かれていない方を選んで紹介してきましたが、今回の西沢先生は多数の著作があります。この本の選択理由は、やはり「工場長としての視点」になります。参考になりりそうと思われた方は、ぜひ購入ください。
年間12冊の中の1月の一冊です。
タイトル
工場長のための実践!生産現場改革
著者
西沢和夫(三井造船、米国系大手産業機械メーカ、コンサルティングファームを経て西沢技術士事務所を設立。コンサルティングファームではチーフエンジニアとして、本物の5S、見える化などの企業指導を行う。)
ここが読みどころ
この本の特徴は、生産改革を工場長の視点から書いてある点です。
モノづくり工場を取り巻く環境が急激に厳しくなっており、対応策として従来の改善では効果が得られなくなっており、「生産改革」が必要になっています。そして、「生産改革」は工場長のトップダウンで推進していくことが必須条件です。
しかし、工場長のトップダウンによる「生産改」の実践的な勧め方について書かれた書籍は(ほとんど)見られませんでした。工場の生き残りに取り組み、悩む工場長に、工場の生き残りの方策を提供することが本書の目的です。
内容
18pに変化に対応する工場改革の「基本10方策」が記載されています。これは、ほとんど本の目次の内容と同じですので、目次を参照ください。
24pに「全員参加の改善活動から生産現場改革への基本4ステップ」が記載されています。
ステップ1:「本物の5S」で全員参加の基礎づくり
ステップ2:「作業標準化」で人づくりの基礎づくり
ステップ3:「見える化」で見える職場を造る
ステップ4:「人づくり」で人が育つ生産現場をつくる
その上で、生産現場改革への本格的な取り組みがスタートします。
尚、ここでよく出てくる「本物の5S」については、31pに説明がされています。
目次
1章 工場長主導の工場改革実践で生き残りを図れ!
2章 「本物の5S」の導入・定着による現場改革を率先せよ!
3章 標準化で非正規社員の短期ひとづくりを推進せよ!
4章 「見える化」とコミュニケーションで変化対応力の高い生産現場をつくれ!
5章 管理者と監督者(現場リーダ)を育成して組織力を強化せよ!
6章 安全管理と機械設備管理で労働災害と機械故障のリスクをなくせ!
7章 生産管理と品質保証なしに顧客満足は達成できない!
8章 「6Mなぜなぜ分析」で問題解決力を強化せよ!
9章 「ムダとり」の徹底実践で儲かる工場体質を実現せよ!
10章 リードタイム短縮と在庫削減で速い生産体制をつくれ!
11章 コストダウンと利益創造で本物の生き残りを図れ!
ページ数
237p
価格
1800円
概観
井上三右衛門
(2011年12月19日発行)(次回12月26日予定)
こんにちは。
また土曜は雪が降ったようです。早く雪囲いをしたいのですが、土曜日曜に雪が降ると車で帰れないので、延期にせざるを得ません。また、来週も土曜日曜が雪が降るようで、どうしましょうかね。
今回は、ものづくり・工場改善の9冊目のお話ですが、著者が2名以上になるはじめての本になります。内容が役に立ちそうなら、ぜひ本を買って読んでみてください。
年間12冊の中の12月の一冊です。
タイトル
工場管理の改善手法がよ~くわかる本
著者
①松井順一(アイシン精機、中部産業連盟、トーマツコンサルティングを経て、現在コンサルソーシング代表取締役)
②石川秀人(一部上場大手メーカ、中部産業連盟、トーマツコンサルティングを経て、現在コンサルソーシング取締役)
ここが読みどころ
現場改善にあたっての、各管理の極意をずばり「○○管理の極意は△△」と章のタイトルで示してくれています。そのため、ポイントがたいへんつかみやすくわかりやすくなっています。その点が一番のおすすめ点です。また、章の中の各項目も、その極意を説明するために組立られています。章のタイトルをまとめ・整理するだけで役に立つと思います。
ところで、「生産準備」とは何かわかりますか?私もこの本で初めて知ったのですが。生産準備をする力ということはわかりますが、具体的には、工程設計、作業設計、コスト設計、品質計画、生産計画、物流計画などを通じてQCDの計画と管理の準備をする力のことらしいです。この準備力は価格競争のみならず魅力競争においても不可欠とのことです。この視点からも自社はどこが今弱いか、できていないかを考えると役に立つと思います。
内容
内容は一般的な内容ですので、他の本ではあまり見ない内容を2点上げます。
①156pにカンバンの枚数の決め方(理論値)の記載があります。これを書かれている本は私の記憶にはありませ。
②160pに横物流の記載があります。横物流とは、購買・構内・製品などの各段階でのストックにかかわる物流のことです。
なお、無理に○○管理の極意は、△△とされているため、個人的には納得できないところもあることは書き加えておきます。
目次
第1章 現場管理体制の構築
第2章 現場管理環境づくりの極意は、5S
第3章 工程管理の極意は、整流化
第4章 品質管理の極意は、工程でのつくり込み
第5章 作業管理の極意は、標準化
第6章 生産管理の極意は、後工程引き取り
第7章 物流管理の極意は、流れ化
第8章 要因管理の極意は、人づくり
第9章 日常管理の極意は、見える化
ページ数
231p
価格
1500円
概観
井上三右衛門
(2011年11月7日発行)(次回発行11月14日予定)
今回は、ものづくり・工場改善の8回目になります。前回の吉原靖彦先生の5Sの本に続き、今回は高原昭男先生の「実践!5Sの定着」です。タイトルにあるように、5Sの定着を目指しますが、その方法は、①5Sを徹底する、②コーチングを活用する、③目で見る管理を活用することにあります。そのため、サブタイトルが「コーチングと目で見る管理で継続的にレベルアップ」となっています。5Sが形だけで、進化しない企業の方にお勧めの本になります。
実際に本を手に取って読んでください。役に立つと思います。
年間12冊の中の11月の一冊です。
タイトル:
実践!5Sの定着化 コーチングと目で見る管理で継続的にレベルアップ
著者:
高原昭男(ベーシック・マネジメント研究所代表)(経歴:1953年生まれ。キャノン、経営コンサルタント機関を経て83年独立、現在に至る。)
出版社:JIPMソリューション
ここが読みどころ:
著者は最後の第8章で5S定着化の基本原則を10個条にまとめてくれています。ここに著者の考え・主張が一貫して流れています。
【基本原則1】5Sの不十分な箇所を残さない
【基本原則2】5Sを苦労して取り組む
【基本原則3】5Sを楽しむ
【基本原則4】納得して取り組むこと
【基本原則5】5Sの指導はコーチングを活用して
【基本原則6】定期的な監査を受けること
【基本原則7】常に外部の目を入れること
【基本原則8】継続的・恒久的なステップアップを図ること
【基本原則9】目で見る管理でレベルアップを継続して
【基本原則10】本気さを持って取り組む
内容:
内容はここが読みどころのところで全て言ってしまったように思います。ここでは、サブタイトルにある目で見る管理について、その基本方向が4つのキーワードで解説されており、具体化方法も記載されています。それが大変参考になるので上げておきます。この様な記載は他の本では見たことはありませんので。
①見える化:透明化する。図表化する。表示する。色分けする。グラフ化する。かんばんを活用する。
②区別化:番号をつける。記号をつける。色分けする。範囲を明確化する。
③目印化:目印をつける。基準線を入れる。インデックスをつける。
④ルールの表示:統一化・ルール化・標準化。掲示。
付録として付いている「定着化に向けたチェックシートとワークシート」も有効に活用できます。
目次:
第1章 5Sが目指すもの
第2章 5Sの停滞について考える
第3章 5Sを定着化させる考え方・取り組み方向
第4章 定着に向けたコーチング
第5章 5Sの問題解決を促進するコーチング事例
第6章 5S定着化の施策
第7章 目で見る管理による定着化の徹底
第8章 5S定着化の基本原則
ページ数:165p
価格:1800円
表紙:
井上三右衛門
(2011年10月3日発行)(次回10月10日発行予定)
ものづくり・工場改善の本の紹介も7回目になりました。
今回は、5S関係の2冊目の紹介です。ぜひ本を購入して読んでください。
全体では7冊目です。
年間12冊の中の10月の一冊です。
タイトル:「5S」によるコストダウンの進め方
著者:吉原靖彦(東京都市大学工学部卒業。(社)中部産業連盟参与。主席コンサルタント)
出版社:中経出版
ここが読みどころ(ここがお勧め):
「5S」の本を整理・分類してみると、①実際の5Sのやり方、実施の前後の様子を写真で紹介した本(初歩的、基本的)②より高度な5Sのやり方などを紹介した本(応用的)に分かれると思いますが、この本は後者の部類です。「5S」を実施しているが会社としての成果が出ていない会社の方にお勧めの本で、サブタイトルには「成果を追求を徹底し、習慣化することで確実にコストダウンに結びつきます!」とあります。
本の中では、特に、本の最後についている切抜きのページ(5Sからコストダウンへの繋げ方説明が入っている)は有効かつ参考になります。
内容:
43p、45p、47p及び最後についている切抜きのページに記載されている、
5Sの展開(ホップ)
⇒経営資源4Mの質の向上(ステップ)
⇒PQCDのレベルアップ(ジャンプ)
⇒コストダウン(労務費、材料費、経費の削減)
の流れを図で理解ください。形の5Sではなく、コストダウンという成果を強く追求する中で、徹底・習慣化の5Sにすることで、成果が必ず上がります。
また、コストダウンも、労務費狙いなのか、材料費狙いなのか、経費狙いなのか目標項目を明確にした活動が大切です。
最後に、4Mの質の向上がコストダウンにつながるところの説明・事例が少なく、読者の一人として、この点は理解ができなかった点を付け加えておきます。
目次:
序章 今こそ5S活動で差をつける
第1章 5Sなくして改善の成果は上がらない
第2章 逆風でも利益を生む5Sによるコストダウン
第3章 コストダウン活動の基本を押さえる
第4章 コストダウンに直結する5S実践法
第5章 コストダウンをめざす5S導入法
第6章 躾で5Sを強化・維持する
ページ数:173p
価格:1400円
概観:
ほぼA5の大きさです。
井上三右衛門
(2011年9月12日発行)(次回は2011年9月19日発行予定)
雑談(それともつぶやき?)ですが、ここで書いている本は、いろいろな分野ごとに20冊程度読んでみて、ぜひ皆さんに読んでもらいたいなという本を数冊だけ取捨選択してのせています。たまたまあった本を載せているわけでないので、約1ケ月の期間をかけて、読み込み、読み込み、準備することもあります。それなりにたいへんです。
全体の6回目になります。
年間12冊の中の9月の一冊です。
タイトル:くたばれ!ISO
著者:森田 勝(経歴:ご存じの方も多いと思いますが、月刊誌「工場管理」で「工場運営の光と影」のページを執筆されています。)
出版社:日刊工業新聞社
ここが読みどころ:
皆さんの会社のISOマネジメントはうまく機能していますか、成果は上がっていますか?この本の帯には「ISOは日常業務の役に立つのか?ISOは企業に利益をもたらすのか?その明確な答えがここにある!」とあります。この本のタイトルを見て、実際に読んで、正直にいえば衝撃的でした。だから、この本は、ISOマネジメントがうまくいっていない会社の方にぜひ読んでいただきたい本ですが、読んでもらいたいポイントがかなり多く、「ここ」というポイントを指定するのがむずかしいです。そのため、まず目次を見ていただきます。
目次:
第1章 ISOの取得を目的にするから、ISOのために仕事をするようになってしまうのだ
第2章 ISOは役に立たない。それはマネジメントシステムの中身がないからだ
第3章 必然性があるから文章化がある。それがなければ面倒くさいだけだ。
第4章 不必要なものを管理してもしょうがない。帳票でプロセスを一元管理するのだ!
第5章 ISOで価値観が固定されてしまったら、経営改善のツールとはならない
第6章 経過でなく、結果に焦点を当てれば、ISOの効果的な運用ができる
第7章 会社の方向性を整理するためにも品質と環境の統合マニュアルは必要だ
第8章 審査時に言われぱなしではダメ!もっと議論を深めよう
ここが読みどころ(続き):
目次を読んでいただいていかがでしたか。衝撃を受けられた方、思い当たることがある方はぜひこの本を読んでください。
内容:
タイトルに「くたばれ!」と入っている衝撃的なタイトルの本ですが、ISOを攻撃する内容ではなく、ISOをうまく使って、経営改善・工場改善をしていこうという本です。
内容も、代表的な項目のみを並べるだけにさせていただきます。
問題点例
①管理責任者が規格要求の勉強に熱心だと、頭でっかちのシステムになってしまう
②まず要求事項ありきでは、その会社に合ったマネジメントシステムは構築できっこない
③規格の順番にそって構成したマニュアルでは、自社の特徴を生かしたマネジメントシステムにはならない
④100点満点のシステムをつくろうとするから、ISOのために仕事をするようになってしまう
⑤ISOは自己増殖する
改善の方向性
⑥せっかくお金を払うのだから、企業にとって役に立つISOにしなければ損
⑦ISOの強制力を、組織と改善力の強化に活かせ
⑧ISOを経営改善のツールと考えれば、こんなにもすぐれた側面がいっぱいある。
出発点
⑨本当に役立つISOにするためには、プロセスの整理と改善からスタートする
ページ数:227p
価格:1500円
表紙:
井上三右衛門
(2011年8月1日発行)(次回は2011年8月8日発行予定)
たいへん暑くなってきましたね。
神鍋高原には、中小企業診断士の実務実習でお店などの調査をしているので、帰れていません。
日中に店舗の調査に歩きまわるので、たいへん暑く感じます。
さて、今回は、以前紹介した新郷重夫先生の改善の本の続刊のような本です。全体では5回目になります。
年間12冊の中の8月の一冊です。
タイトル:改善はだれでもできる 工場改善の具体化と実例
著者:新郷重夫
出版社:日刊工業新聞(昭和32年初版)
ここが読みどころ:
本書は「改善は誰でも出来る」の2部作の1つで、すでにブックレビューを書いている”工場改善の見方・考え方”に続くものです。”工場改善の見方・考え方”は、改善のヒントの掴み方を説明してあるが、この本”工場改善の具体化と実例”では、改善を実行するための色々な難問題を解決する方法が書かれている。
何事にも定石がありますが、「改善の立案と実行のやり方」にも定石があり、定石に従えば改善案が実現する可能性がズット高くなります。このことを意識して読んでください。
内容:
本の中で一番大きなポイントである、第1編第2章の中にある
「反対論の捌き方 10カ条」
について書きます。今でも十分に通用する内容です。
(1)例外論法
そんな事実(例外)があるというような、”抽象的な理由”だけで、量的な裏付けの無いままの反対論。対応策は、量的な裏付けをとること。例外なので、発生確率はたいへん低い。
(2)アラサガシ論法
改善案の欠点(アラ)のみを指摘する反対論。対応策は、大局的な視点に立ち、今のやり方と改善案の長所と欠点の両方をマトリックスで正当に評価するようにする。
(3)お題目論法
看板に掲げられた「お題目」のみを眺めると”全く正しくその通り”であるが、”実質を伴わない”反対論。対応策は、お題目が正しいのでやりにくいが、実質を伴わないことを的確に示す。
(4)エリグイ論法
自分に有利な文句やポイントのみをエリゴノミして選んで使用しする反対論。正に、盲人の象探りに同じである。対策案は、真相の全部・全体を知ること・知らせることである。
(5)ニワトリ論法
「ニワトリが先か?タマゴが先か?」と対立する2つの主張を繰り返す水掛け論。対応策は、水掛け論を続けないために、対立の外にある条件から解決を導くこと。
(6)オ玉ジャクシ論法
「オ玉ジャクシ」が成長すれば「カエル」となることは間違いないが、時間的には異なる。しかし、「オ玉ジャクシ」と「カエル」を同列に並べて反対する理論。作業改善直後は慣れ無いためにやりにくいが、この「オ玉ジャクシ」状態が、将来効率的な改善「カエル」になると主張するのが対策案。
(7)仮定論法
たとえば「○○は旨い!」と言ったときに、何を基準に旨いと言っているのか明確にしないままの反対論。基準が不明確である。対応策は、前提の立論の基礎を明らかにするすること。
(8)ヤブニラミ論法
反対が、手段に対する反対であり、目的に対する反対ではない反対論。目的までは反対をしていない。対応策は、手段の面の欠点を改善した方法を提案すること。
(9)ロータリー論法
ロータリーをお互いが同一方向に廻って合致しないように、議論がぐぐぐる廻って結論の出ないこと。対応策は、議論が廻りだしたら「おや、これはロータリー論法では?」と考えてみることで、気付きがあり、議論からの抜け出しが可能。
(10)ユサブリ論法
相手の指摘事項に対して説明をして、相手から了解の結論をもらわないうちに、相手の次の指摘事項への説明を始めてしまう議論。相手の「ユサブリ」にはまってしまっている。対応策は、はじめに全ての指摘事項を出してもらうことである。
目次
第1編 改善案を実現させるには
第1章 案をたてる
第2章 判断と再着想
第3章 提案を実行して貰うために
第4章 改善は誰でもできる
第2編 色々な改善の実例
第1章 生産と実務の改善
第2章 改善に関する実例
むすびの言葉
ページ数:221p
価格:1300円(昭和54年当時)
外観:
井上三右衛門
(2011年7月4日発行)(次回2011年7月11日発行予定)
ものづくり・工場改善の4回目になります。
年間12冊の中の7月の一冊です。
タイトル:大不況に勝つ5Sのすすめ方[実践活用版]
著者:山名敏文(名古屋工業大学卒業、中小企業診断士、中部産業連盟でコンサルタントをされていたようです)
出版社:三修社
ここが読みどころ
タイトルにある「大不況に勝つ」と「実践」の2つの言葉に惹かれてこの本を購入しました。
調べてみると、5Sの本には大きく分けて2つのタイプがあるようです。1つ目のタイプは初心者のために豊富に事例写真をいてている。2つ目のタイプが5Sの先にある経営改善を目指すものです。
この本は、「実践」の言葉にあるように豊富な事例が業種別に写真で紹介されているとともに、「大不況に勝つ」に表わされるように経営改善の方法も記載されています。そのため、この本には両方のタイプが入っています。また、「5Sはやったが経営改善につながっていない」と嘆いている方には、何が間違っているかを示しており、その点でも参考になるのではと思います。
内容:
第1章で5Sに関する5つの間違いが指摘されています。
①5Sの正しい意味(定義)を知らない
②5S運営の仕方が間違っている(組織)
③5S運営の仕方が間違っている(行事)
④5Sの展開を「物」だけと思っている
⑤5Sは常に「進化」が必要なのを知らない
①については、たとえば、整理の定義は「今、必要な物と不必要な物を区分けして、不要な物を処分すること」(太字部分が正しい定義では追加)となっています。
④⑤については、対象が「物」に限定されるわけではなく、会社の状況により、「安全」→「物」→「機械」→「情報」→「仕事」と進化させるべきだと言っています。
ただ、②③の項目に関しては、間違ったものと正しいものが比較されていないため、よく理解できませんでした。
物だけの5Sから次のステージに進めていない方、5Sが経営改善に寄与しておられない会社の方にはたいへん役に立つと思います。
目次:
第1章 利益が出ない原因は?利益が出る5Sと出ない5S
第2章 5Sの対象は企業が置かれている環境で違う
第3章 品質・納期・原価との関係は
第4章 5S活動に有効な道具立て
第5章 業種別の対応の仕方、注意点と良い事例
あとがき
ページ数:166P
価格:2200円
写真
井上三右衛門
(2011年6月20日発行)(次回2011年6月27日予定)
ものづくり・工場改善の3回目になります。
年間12冊の中の6月の一冊です。
タイトル:できる・使える 生産管理の基礎テキスト(1998年発行)
著者:福田拓生(日立製作所 専門コンサルタント室長。技術士(経営工学部門)。千葉工業大学卒。
出版社:日本能率協会マネジメントセンター
ここが読みどころ:
”第2章 生産管理の混乱のいろいろ”は必読です。
生産の現場でいろいろな問題(混乱)が次から次に発生しててんやわんやという方も多いかもしれませ。その問題(混乱)への対策が紐付けられています。
筆者のコンサルタントとしての実務経験から、「生産管理の混乱を鎮める」という観点からまとめられています。そのため、まず生産管理の混乱のいろいろなものを2章で述べ、その混乱への対策と関連項目が混乱の項目ごとに表にまとめられています。そのため、自分が現在困っている生産の混乱の項目を探し出し、対策のところを読むことで、効率的な対応が可能になります。
内容のポイント
第2章に以下の記載があります。
①「混乱」の実相のつかみ方
②記述されている混乱の事例
以下の14項目の混乱に思い当たる方はぜひ本書をお読みください。
材料切れが多発する
飛び込み短納期による混乱
物がどこにあるかわからない
外注が生産の足を引っ張る
何がどこまで進んだかわからない
在庫が多く経営の阻害要因になっている
生産品種が多くて管理できない
コンピュータのデータがあてにならない
不良品が多くて計画が達成できない
季節変動が大きくて毎年混乱を繰り返す
多額の不良資産が発生する
海外生産・海外調達にかかわる混乱
新製品立ち上げ時の混乱
増産時の混乱
目次:
第1章 生産管理とは
第2章 生産管理の混乱のいろいろ
第3章 在庫管理の改善
第4章 現品管理の改善
第5章 生産管理の改善
第6章 生産管理方式の選択
第7章 源流管理による生産管理の簡素化
あとがき
索引
ページ数:197p
価格:2300円(当時)
写真
最後に:
この本は中小企業診断士の勉強を始めたころ、生産管理の問題への対応テキストとして書店を調べ回って見つけました。大変懐かしい本であり、当時、大変役に立ったテキストです。技術士(経営工学)になって今読んでみても、生産の問題は全く変わっていないと思います。
井上三右衛門