帰休除隊 ⑳

　　　　　　　　百歳に向ってもう一度 歩いて世界一周　２月2８日　雪のち晴 

　昭和２０年２月２８日、本土決戦を覚悟し《一億玉砕》を叫ぶ中、私に《帰休除隊を命ず》と命令が出た。班長から「私服を取り寄せている時間がないから家に帰ったら送り返せ」と言って、軍服から階級章を取られたが何故、私一人に帰休除隊を命じた事についての説明は無かった。

　確か、その夜、夜行列車に乗り、翌朝飯山に着いたと思うのだが、詳しいことは覚えて居ない。１班の消息も分からないままだ。「戦地に行きたい者は手を挙げよ！」と言われて、手を挙げなかったから帰されたのか？其れも分からない。まさに、軍隊は《運隊》だ。

　　　　　　　　百歳に向ってもう一度 歩いて世界一周　２月2８日　　　　　　　　　

	日数「日」	総歩数（歩）	総距離（ｍ）	平均歩数(歩
今　　日	１	２4,6１５	１7，2３１
今　　月	2８	6７３,９０２	４７１,７３1	２4,0６8
今　　年	5９	1,3６４,３３９	9５５0３7	２３、１２４
２００５年から	３，６7３	５５,8３５,５８４	3９,０８４,９０９	１5,２０２
７０歳の誕生から	７,２０５	1３7,７８５,７１５	９６，4５０,0０１	19,１２４

 ワシントンからアメリカ大陸横断へ、インディアンポリスに向って後　１１2,０９１ｍ

 

　

戦地へ行きたい者は手を挙げろ！ ⑲

　　　　　　　　百歳に向ってもう一度 歩いて世界一周　２月27日 曇のち雪

 検閲が終わったというか、衛生兵の教育が一先ず終了したので今日は気晴らしか、久し振りにゆったりと過ごして居たからか、夕食が済むと《整列》の号令が掛かった。班長から訓示の後「戦地に行きたい者は手を挙げよ！」と号令が出た。

　これに答えて威勢よく大声で２～３人が手を挙げた。つられて１０人程が手を挙げた。やや間を置いてバラバラだったが続々と手が挙った。私は考えていたが、最後まで手を挙げなかった。「手を挙げてないものは前に出ろ！」と声が掛かった。前に出たのは私一人だった。５９名が手を挙げたのだ。

　私は班長室に連行された。歩きながら殴られて半殺しの目に遭うなぁと覚悟した。

　班長は言った。「お前は長男か？」と。「私は長男だから行きたくない、なんて考えたことはありません。戦地へ行きたい者は手を挙げろと言われたので、手を挙げませんでした。戦局は緊迫して本土決戦も覚悟しなければなりません。外地に行くより本土を守らなくてはなりません。松本の部隊に戻るべきだと思いました。命令が出れば外地でも何処でも参ります」と言った。

　班長は金歯をチラつかせ乍ら言った。「わかった！其処に腰掛けよ！ゆっくりしてゆけ！」と。班長は富山の人らしく、松本のことを色々と聞いた。若しかすると、時間稼ぎをしたのかもしれない。痛い目ににも遭うことも無く返して呉れた。

　　　　　　　　百歳に向ってもう一度 歩いて世界一周　２月27日　　　　　　　　　

	日数「日」	総歩数（歩）	総距離（ｍ）	平均歩数(歩
今　　日	１	２4,679	１7，275
今　　月	27	649,287	４54,501	２4,048
今　　年	58	1,339,724	937,807	２３，０99
２００５年から	３，６72	５５,810,969	3９,０67,678	１5,１９9
７０歳の誕生から	７,２０4	1３7,７61,１00	９６，432,770	19,１２3

 　ワシントンからアメリカ大陸横断へ、インディアンポリスに向って後　１29,322ｍ

 

教育終了 病院長より表彰を受ける ⑱

　　　　　　　　百歳に向ってもう一度 歩いて世界一周　２月26日曇のち小雨

　この日で出羽町本院での教育は終了する。終了に当たって私は軍医大佐の病院長より表彰された。数百名の中から５名の一人として選ばれたことは光栄だが、何を基準にされたのかが判らない。

　ペーパーテストかも知れないが、そんな記憶はない。軍人らしくもないし、衛生兵としての適性もない。でも泉野分院の皆からは祝福された。

　衛生兵の教育が終わったので、再び松本に戻るのだろうか？松本の同年兵達は驚くだろう、なんて考えてウキウキしていた。

　　　　　　　　百歳に向ってもう一度 歩いて世界一周　２月26日　　　　　　　　　

	日数「日」	総歩数（歩）	総距離（ｍ）	平均歩数(歩
今　　日	１	２５,22８	１８，360
今　　月	26	6624,608	４37,22６	２4,023
今　　年	57	1,315,045	920,532	２３，０7 １
２００５年から	３，６71	５５,７8６,２90	3９,０50,４0３	１5,１９6
７０歳の誕生から	７,２０3	1３7,７36,42 １	９６，415,49５	19,１２2

 　ワシントンからアメリカ大陸横断へ、インディアンポリスに向って後　１４6,５9７ｍ

 

空襲警報下の入浴 ⑰

 　　　　　　百歳に向ってもう一度 歩いて世界一周　２月25日 晴 

 我が国の国防圏の拠点であるサイパン島を攻略されて以来、本土空襲が常態化、制空権を握られ主要都市から地方都市まで 連合軍の思いのままに空襲される戦局となったが、日本国民は天佑を信じて楽観していた。

　太平洋岸の都市が壊滅的な被害を受けたにも拘わらず、日本側の都市は対岸視していた。昭和２０年に入っても《一億玉砕》を口にしながらも戦局を楽観視していた。

　その証拠に、金沢地区に《空襲警報》が発令されている最中、陸軍病院という微温的なムードに浸かって居たせいか、「入浴準備」の命令が出た。私は《何を考えているんだろう》と思ったが、１班全員洗面用具を持って浴場に向かった。

　入浴中も、Ｂ２９の編隊が金沢上空に向かって居ると思うと気が気でなかったが、衛生兵達は浴槽ではしゃいでいた。誰ひとり爆弾が落とされると思うものは居なかった。　　　　

 大本営発表が常に《我が方の損害は軽微なり》を真面に信じて居る者は少ないが、それでも危急存亡の瀬戸際にあるという意識まではなく、春までは国民は《神風》の吹くのをを願い《金甌無欠》を信じていた。 　 

　　　　　　　　百歳に向ってもう一度 歩いて世界一周　２月25日　　　　　　　　　

	日数「日」	総歩数（歩）	総距離（ｍ）	平均歩数(歩
今　　日	１	２５,８５９	１８，１０１
今　　月	25	５９８,３８０	４１８,８６６	２３,９３５
今　　年	56	1,２８８,８１７	９０２,１７２	２３，０１５
２００５年から	３，６70	５５,７６０,０６２	3９,０３２,０４３	１5,１９３
７０歳の誕生から	７,２０2	1３7,７１０,１９３	９６，３９７,１３５	19,１２１

 　ワシントンからアメリカ大陸横断へ、インディアンポリスに向って後　１６４,９５７ｍ

 

手術を見て ⑯

 

 　　　　　　百歳に向ってもう一度 歩いて世界一周　２月2４日 曇

 聯隊の衛生部門を担当する部門は医務室だ。医務室は軍医と衛生兵で構成されていて、歩兵は居ない。衛生兵は各中隊に所属して中隊内の衛生全般を掌握して応急の手当てはしても、基本的には医療業務はすべて医務室が担当する。医務室には診断室・治療室・薬室・休養室・事務室の５部門があって、衛生兵はいずれかの室に勤務することになって居る。伝染病や手術を要するなど手に余るものは陸軍病院に送られる。

　本院での教育期間中、手術室に案内された。壁には光った鋸があったことは良く覚えているが、消毒やマスクのことなどは全く記憶が無い。軍医がメスを執って手術が始まると、私の顔から血の気が去って、腰の力が無くなって立って居られなくなってしゃがみこんでしまった。

私は衛生兵に不向きだと悟った。戦場で血を見て腰を抜かしていては兵隊の役にも立たない。私は敵陣に突っ込んでも敵兵を刺し殺すことなど出来ないだろう。軍人不適格者だ。

 　　　　　　百歳に向ってもう一度 歩いて世界一周　２月2４日　　　　　　　　　

	日数「日」	総歩数（歩）	総距離（ｍ）	平均歩数(歩
今　　日	１	２３,３６２	１６，３５３
今　　月	2４	５７２,５２１	４００,７６５	２３,８５５
今　　年	5５	1,２６２」,９５８	8８４,０７１	２２，９６３
２００５年から	３，６6９	５５,７３４,２０３	3９,０１３,９４２	１5,１９１
７０歳の誕生から	７,２０１	1３7,６８４,３３４	９６，３７９,０３４	19,１２０

 　ワシントンからアメリカ大陸横断へ、インディアンポリスに向って後　１８３,０５８ｍ