絵画指導 菅野公夫のブログ

大好きな絵とともに生きてます

Tさんの絵

2009-10-15 | 絵画指導
Tさんが、秋の展覧会に出品したいということで、絵を持って来ました。

三点見せてくれましたので、その一つを紹介します。

これは、近くにある神社の池の端にある木です。秋の紅葉ですね。
この絵は、私が指導する前に描いた絵です。

紅葉も上手です。木の根っこも上手です。木の両サイドに見える神社の景色も上手です。どこも上手に描けているのですが、これでは、だめです。

どこを見たら良いかわかりません。狙いがわからないのです。結局全体的に見ると、木の幹に目が行って、その中心辺りを見ることになって、その中心には見るべきポイントがないのです。まるで、のっぺらぼうの顔を見るような感じになっています。

私は、よくこういう人がいたら、どこを見て話をしますか?と尋ねます。どうも中心の幹を見てしまうのです。

そこで、もし、この絵を出品したいなら、根っこが上手に描けているので、根っこを見せる絵にしてみますかとアイディアを出しました。
それには、絵を切らなければなりません。
本当は、その構図でもう一枚描けば良いのですが、体の状態で無理ができないというので、時間もないことから、トリ―ミングをして、40号を20号にして額に入れてみたらどうでしょうかとお話しました。

もし、そのようにすると、こんな絵になります。


本当は、もう少し下まで描いてあると良いのですが、描き直すことができないのでは、これで、出すしかないでしょう。
この方が、テーマがはっきりします。根っこの存在感がテーマです。色もこの方が落ち着きます。また、紅葉が隠れてみると、下の草に木漏れ日が当たっている感じが美しく見えます。いかがでしょうか。
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絵を通しての教育

2009-10-15 | 絵画指導
私が書いた「ぴかそがライバル」を読んでくださった方からの感想に、絵のレベルも凄いけど、生徒たちの礼儀作法に驚くという言葉がたくさんあります。

実際に、さわらび展を見に来て、同じ感想を言ってくださる方がたくさんいました。「何であんなに素直な子ばかりが集まっているの?」と言われた方もいます。

みんな普通の子ですよと私は答えていました。

しかし、それは、教育の成果でもあるのです。

私は、絵より礼儀作法に厳しい顧問だったかもしれません。

  具体的には、

服装、髪型、言葉使い、挨拶、返事、表情、態度
この7つを言い続けてきました。

そして、最後に気配り、目配り。

これは、もっと、言えば、先生の気持ちで部員のあるべき姿を考えるということでしょうか。
一言で言えば、ハートのレベルの高い人になれ!です。

それは、人の気持ちの分かる人になろうということでもあります。

この方針で、やっていくと、3年生になったときには、顧問の私以上に厳しい先輩が出て来ます。だから、先生が何人もいるみたいな部活になるのです。
そうなると、私がいなくても安心して部活が行なえます。

私は、副顧問もなく、常に一人で指導をしてきましたから、出張の時もあり、休むこともあり、入院騒ぎもあり、いろいろなことで、留守がありました。
しかし、それでも部活はいつものように、実施できました。
私が入院したり、休職したりしているのに、展覧会の実績が変わらないのです。いやむしろ良かった時もあり、先生がいない方がいい結果が出るねなんて冗談を言っていました。

ーーーーーー
礼儀作法につながる具体例を一つ紹介します。

例えば、展覧会で絵を見てもらうときの、生徒の態度です。
麓原展では、必ず、生徒はメモ帳を持って行き、会の先生方から絵を見てもらって、アドバイスを受けました。

「絵を見ていただけますか?」とお願いする訳ですが、その言葉使いから始まります。返事の仕方や態度は先生に対して失礼のないようにということは、最低条件です。

私は、立つ位置も考えさせました。

絵を見てもらうのは、恥ずかしさもあって、なんとなく後ろに下がりがちです。
しかし、指導する先生にしてみると、話しかける関係から、自分の隣よりやや前に出てもらえるとやりやすいのです。その逆の自分より後ろに居られると、絵を見て本人を見るという動作をするときに、振り返らなければなりません。それはとても大変なことなのです。
だから、生徒には先生の隣に位置して、やや前に出るようにするといいよと話しました。そして、先生の顔と自分の絵が同時に見える位置で聞きなさいとアドバイスしたのです。

話してくれる先生の表情まで分かるような位置ですね。

これは、なかなか教えないとわからないですよ。

しかし、自分が教える立場に立つと分かるのです。だから、人の立場に立って物事を考えるということでもあるのです。人の気持ちがわかるということに通じます。

ーーーー
生徒たちは、態度や表情がいいので、麓原会の先生たちからはとても褒められました。
「あんまり良く聞いてくれるので、ついいろいろ言ってやりたくなるんだよね」と先生たちもおっしゃっていました。

女子高生から声を掛けられて嬉しいこともあり、一人にアドバイスをするのに、5~6人の女子高生に囲まれて、真剣に話に耳を傾けてくれるのですから、先生方もそういう嬉しさもあったかもしれません。

とにかく、態度が良いことが、先生たちのアドバイスの熱の入れ方に変化をもたらすということがわかります。逆に、態度が悪ければ、アドバイスもしたくなくなります。

服装、髪型などの見かけもその一つです。

服装、髪型と、絵の内容とは、関係ないと言いたいでしょう。ところが、そうではないのです。人は、まず、見かけから入るのです。その印象が良いか悪いかで、先生のアドバイスも変わります。

この話の中には、最初に上げた7つが入っています。

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服装、髪型、言葉使い、挨拶、返事、表情、態度、いかがですか。

絵を見てもらうというたった一つのことにも、全てが含まれています。

挨拶は、お願いします。有難うございました。でしょう。
しかし、次に会ったときに、「この間はどうも有難うございました」から、入れるのです。高校生は、これが言えません。

次に会ったときに、その言葉が言えると、ああ、あの時の子か?と思って、続きが出てくるのです。そう言えば、あの時、言い忘れたんだけどねと話が始まるかもしれません。

「先日は、ご馳走様でした」がなかなか言えませんね。その言葉一つで、その人との関係が良くなるのですが。

そういうことも、教えました。

これは、社会に出てから、私の話が嫌というほどわかったと言っていた卒業生がいました。自分が社員教育をする立場になってみて、私に教えられたことが、身にしみてわかったと言っていました。

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付け加えますが、5~6人で聞くのは、私の指示です。部員が60人からいるのですから、60人が集まっては、他のお客さんに迷惑です。しかし、せっかくアドバイスをしてもらうのに、一人ではもったいないので、5~6人にしたのです。

また、聞きながらメモをするのは、先生の表情が見えなくなるので、他の仲間がメモをとるようにしました。

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私が、部活の終わりに毎日いろいろな話をしたのは、そういう内容です。
ただ、単に服装、髪型、などというのではなく、具体例をあげて、なぜ、服装、髪型、挨拶、返事、言葉使いなどをきちんとしなければならないかを語ったのです。

生徒には、わかるように具体例をあげて話してやらないとだめですね。

だから、絵の指導より礼儀作法などの生活指導が多かったという感想になるのでしょうね。








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