食の歴史 by 新谷隆史ー人類史を作った食の革命

脳と食を愛する生物学者の新谷隆史です。本ブログでは人類史の礎となった様々な食の革命について考察していきます。

初期農耕・牧畜の破たんー2・1四大文明の食の革命

2019-12-22 09:48:09 | 第二章 古代文明の食の革命
2・1 四大文明を誕生させた食の生産革命
初期の農耕は雨水に頼っており、また肥料を与えることもしなかったので収穫が少なかった。しかし、灌漑農業が始まると食料生産力が大きく向上し、多くの人口を養えるようになった。こうして特定の地域に人々が集まることによって社会が複雑化し都市化が進んだ結果、文明が生まれたと考えられている。

初期農耕・牧畜の破たん
作物を育てるには水は必要不可欠だ。人類が農耕を開始した当初は、作物を育てるための水を雨に頼っていた。このため、農耕が可能だったのは雨に恵まれた地域だけだった。このような農耕を「天水農業(乾燥農業)」と呼ぶ。

第一章で見たように、農耕が始まった地域では少し遅れて牧畜も始まった。そして、食料生産量が増大することによって、急速に人口が増えて行ったと考えられている。

やがて、その土地で養える限界まで人は増えたと推測されている。そうなると、次は農地と放牧地を広げる必要が出てくる。そこで人々は、周辺の森の木を切って新しい農地や放牧地を作った。調理や暖房用の薪のためにも木の伐採は必要だった。
しかし、少しずつ問題が生じてきたようだ。作物の生産量が次第に減って行ったのだ。土壌の栄養が作物に奪われて土地がやせてきたことが第一の原因だ。

さらに牧畜も行き詰まりを見せ始める。家畜が増え過ぎて草の生育が追い付かない「過放牧」の状態になってきたのだ。こうなると、家畜は最終的に草の根まで食べつくしてしまい、ついに草が生えなくなる。こうして牧畜は完全に崩壊する。

傾いて行った農耕・牧畜にとどめを刺したのが「土壌の流失」だ。

やせた土壌は乾燥しやすく崩れやすい。このため、少しの風や雨で土壌は流失してしまうのだ。特に森を切り拓いて作った農地は傾斜地にある場合が多いので、風や雨によって土壌は流れ出しやすい。このように土壌の流失が続くと土壌が覆っていた岩盤がむき出しになり、もはや農耕地や牧草地としての回復は見込めなくなってしまうのだ。これが現代でも世界各地で問題になっている「砂漠化」のシナリオだ。

こうして、農耕・牧畜が破たんし始めた古代人たちは、生活できる新しい土地を見つける必要に迫られである。