新天地は乾燥地帯
四大文明が生まれるためには、土壌以外にも重要な要件があった。それは、四大文明が誕生したチグリス・ユーフラテス川、ナイル川、インダス川、そして黄河の流域のいずれもが「乾燥地帯」であったということだ。
当時も今もそれほど気候が変わっていないと考えられている。そこで、現在の年間降水量を見てみよう。すると、チグリス・ユーフラテス川流域のバクダッドは約150㎜、ナイル川流域のカイロは約30㎜、インダス川流域のジャコババード約100㎜、黄河流域の西安は約500㎜となる。ちなみに、東京の年間降水量は約1500㎜で、四大文明の発祥地の降水量がとても少ないことは明らかだ。
この極端に少ない降水量が食料の大量生産にとても重要だったと考えられるのだ。
どういうことだろうか。
雨が降らないということは、つまり晴れる日が多いということだ。植物が行う光合成には太陽光が必要なため、晴れ間が多い方が植物は育ちやすい。また、太陽光で気温が高くなるのも作物を育てるのに好都合だ。日本でも昔から「日照りに不作なし」と言われ、よほどの水不足が起こらない限り不作にはならない。逆に、日照不足で米や野菜などの作物の出来が悪くなることが時々報道されているように、晴れる日が少なくなると不作になる。このように、日照時間は作物の収穫量を決める大きな要因なのだ。
つまり、チグリス・ユーフラテス川、ナイル川、インダス川、そして黄河流域は乾燥地帯で十分な日照時間があったために、水さえ確保できれば作物の栽培にとても適していたのだ。
ところで、中国の長江流域だけは日本と同じように高温多湿の気候だ。この流域ではイネが良く育つ。イネはとても生産性の高い作物だ。このため、長江流域では高い生産力を獲得できたと考えられている。