杉ちゃんのWEB日記

国際山岳ガイド 杉坂 勉のブログ

2012-8-24~27 剱岳・八つ峰Ⅵ峰D・Cフェース~上半~北方稜線縦走

2012-08-28 11:41:54 | ガイド山行記録

 激闘の北鎌尾根(山行記録はこの下にあります)から、引き続き安房トンネルを越えて立山へ転進してきました。24日からは剱岳のクライミング&縦走をしてきました!

 今回は熊の岩ベースで、八つ峰Ⅵ峰Dフェース富大ルート、Cフェース剣稜会ルートを登攀し、Cフェース~八つ峰上半~北方稜線~剱岳本峰を縦走するという欲張りな計画!

8月24日

 30キロをゆうに超える荷物を担ぎ、一路熊の岩を目指して入山。しかし午後になり雲行きが怪しくなり始めたので、この日は剣沢の小屋泊まり。

 翌日荷物をセレクトし、軽量化して熊の岩に向かうことにしました。

8月25日

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 翌日は天気が気になりましたが、起きてみると頭上には満点の星!朝の5時少し前、早速熊の岩目指して小屋を出発しました。

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 まずは剱沢雪渓を長次郎出合までくだり、ここから長次郎谷へ。今年は例年と比べ、どこの山も残雪が多く、それはここ剱岳でも例外ではなく、通常この時期には、途中ぱっくりと口を空けている長次郎雪渓も、出合から熊の岩まで見事に繋がっているではありませんか!

 おかげで難なく熊の岩へ到着することができました。ここでビバーク装備をデポし、さっそくⅥ峰Dフェースへ。

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 Ⅵ峰フェースはどこもまだ残雪が残り、Dフェースへはいったんシュルンドの中へ降り立ち、Cフェース側を廻り込んで取り付きへ向かいました。

 登攀準備を整え、富大ルートへ取り付き。1ピッチ目の出だしは、まだクライミングに慣れていない体にはちょっとしょっぱかったですね。

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 その後もⅣ級のピッチが続きますが、順調にこなし、核心部Ⅴ級も問題なし。

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 12時40分にはDフェースの頭へ立つことができました。今回2人ともなかなか調子はよさそう!

 あとは慎重にⅤ・Ⅵのコルへ下降。

 熊の岩では小宴会。今日の行程やルートのこと、ビバーク装備や食料についての談義に花を咲かせ、午後7時には就寝。明日の長大な行程に備えました。

8月26日

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 昨夜はにわか雨もなく、快適に熊の岩でのビバークを終えることができました。

 そしてこの日も朝から快晴!3時に起床し、身支度を整えます。今日はなんといってもCフェース剣稜会ルートから八つ峰上半~北方稜線と縦走し、剱岳本峰を目指す長丁場!

 午前4時45分に熊の岩を出発し、Cフェースの取り付きへ。こちらは残雪を回り込んで難なく取り付きにたどり着けました。

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 今日は全装備を担いでの登攀のため、Ⅱ級程度のピッチもなかなかのもの・・・んー、荷物が重い!

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 それでも順調に高度を稼ぎ、いよいよ上部のメインイベント、ナイフリッジのトラバース!

 ここは高度感もありとても緊張しますが、ホールドもスタンスもしっかりとしているので、快適にこなせました。

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 8時少し前には登攀終了。なかなかいいペースで剣稜会ルートを抜けることができました。

 目の前には、Dフェースの頭、そしてチンネの勇姿を望むことができました。

 休憩もそこそこに上半の縦走を開始。いつもはショートロープで早々に越えることができる峰々も、今日は重荷なのでなかなかの重労働。スタカットでピッチを切りながら慎重に越えていきました。

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 八つ峰の頭からの懸垂下降も無難にこなし、北方稜線へ。昨日泊まった熊の岩のビバークポイントを眺めながら、少しガレの多い稜線を、トラバースしながら越えていきます。

 何か所かルートが不明瞭で、確認しながらの縦走でしたが、無事に長次郎のコルへ。後はひたすら山頂を目指してガレ場を登っていきます。背後に今日越えてきた八つ峰の峰々と北方稜線を従え、12時50分、剱岳山頂に登頂!長い行程をみごとやりぬきました!!

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 あとはひたすら剣沢をめざし、長い長い別山尾根を下っていきます。

 いくつもの小ピークと鎖場を越え、いよいよ口数が少なくなってきた頃、剣沢の小屋へたどり着きました。

 振り返ると、先ほどまでガスの中だった剱岳山頂が、再びその姿をのぞかせています。そしてその右手の源次郎尾根の合間から、今日越えてきた八つ峰がわずかに顔をのぞかせているのが見えます。

 んー、今回もよく頑張りました!みなさんお見事です!!

 翌27日も朝から晴天。台風の影響か少し風がありましたが、今回の山行に充実感をかみしめながら、室堂へ下って行きました。

 


2012-8-21~23 北鎌尾根

2012-08-28 11:30:53 | ガイド山行記録

 今年の夏は暑いですねー。

 先週は特に猛暑日の連続で、下界は大変だったのでは・・・。そんな中、少しでも涼を求めて北アルプスへ連ちゃんガイドに行ってきました。

 まずは21日~23日にかけ、北鎌尾根へ。20日の夕方に沢渡の駐車場へ車を廻しておき、松本へ。そして21日朝、久々の大糸線に乗って穂高駅へ。そこからは予約してあったタクシーに乗り、予定通り中房温泉へ到着。

 午前7時20分ごろに、中房温泉から合戦尾根に取り付き、大天井への長い長いアプローチ。ここは北アルプス三大急登と言われていますが、私が手掛けている立山の内蔵助平への登山道の方が、何ぼも急登!

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 しかし下が炎天下なら、合戦尾根もなかなかの気温。汗ダラダラで上がっていきました。しかし燕山荘下では、きれいなお花畑にも!そして稜線に出てからは景色も一変。涼しい風に吹かれながら、北鎌尾根を眺め、明日のモチベーションを高めて大天井へ向かいました。

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 翌日は早朝3時に大天井ヒュッテを出発。昨日の天気予報では、この日の天気もまずまずとのこと。午後の雷がちょっと気になりましたが、願わくば午後2時までには槍に到着することを狙い、満点の星空のもと、早々に小屋を出発しました。

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 暗闇の中、貧乏沢を下降し天井沢を経て北鎌沢出会いへ。貧乏沢は暗がりだったせいか、以前より荒れている印象を受けました。

 北鎌沢の登りはまさしく地獄!午前7時にはすでに気温が急上昇しはじめ、大きく成長した草木をかき分け、大岩を乗り越しながらのアプローチは、体力をどんどん奪っていきます。やっとの思いで北鎌のコルへ到着。

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 北鎌のコルからしばらくも、ハイマツやダケカンバをかき分けながらの急登!しかも熱い!!なんか以前訪れた時よりブッシュが大きく育ったような印象を受けました。

 ようやく独標が近くなってきたころから風が出始め、上空にも雲が湧き、日陰が出てきたので少し涼しくなりました。

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 独標は今回まき道で通過。しかしここからはいよいよアルペンチックな雰囲気に包まれ、岩稜のアップダウンが連続。大小のピークがいくつも連なり、槍の穂先へと続いています。

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 岩稜のトラバースと、クライムダウン、ザレ場の登り返し、そして2級程度の岩登りを繰り返しましたが、槍の穂先はまだまだ先・・・

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 時にはまき道を辿り、しかしすべてまいてしまってはつまらないので、ルートを見ながら岩稜を伝い、午後2時ごろにようやく北鎌平へ到着。振り返ると、今日苦労して越えてきた小ピークを望むことができました。

 さあ残すは槍の穂先のみ!大きな岩をいくつも乗り越え、ガレ場を辿っていよいよ穂先の岩場へ取り付きました。

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 そして午後3時50分、みごと北鎌尾根を越え、待望の槍ヶ岳山頂に登頂!

 天気も何とかもちこたえ、午後の雷雨にも遭わずにすみました。山の神様に感謝ですね!!

 いやー、しかし天気がいいとはいえ、かなり気温も高く厳しい状況の中、12時間50分よく頑張り通しました!!