1995年3月20日の朝、東京の地下でほんとうに何が起こったのか。同年1月の阪神大震災につづいて日本中を震撼させたオウム真理教団による地下鉄サリン事件。この事件を境に日本人はどこへ行こうとしているのか、62人の関係者にインタビューを重ね、村上春樹が真相に迫るノンフィクション書き下ろし。
一人一人被害者の話をお聞きしてテープに録音し、それを聞いて村上さんが活字にするという形をとっている珍しいノンフィクション小説です。文字にしたのが村上さんで、話に少しだけ表現描写がついて、それが村上春樹さんの文体の特徴が出ています。 地下鉄サリン事件はすでにものすごい過去の出来事のような気がしますが、その特異性を忘れてはいけないという思いで村上さんは本にされたそうです。 宗教団体が、その教祖による常識を逸した思想を掲げ、さまざまな人を入信させ洗脳していくという特異性・・・ 私たちは絶対にそんな宗教には関係ない、かかわりを持たない・・・ 即座にみんなそう考えるのだろうけど、各自の心の中にある小さな溝にその宗教は思いがけず入り込む・・・ 何かに希望を失った人・・・目標の見えない人・・・寂しい人・・・孤独な人・・・ 世間には大勢いるはずです 私だって、絶対に洗脳されませんとは言い切れないはずです たくさんの人が通勤でごった返す地下鉄の日常と・・・ その地下鉄にサリンがまかれ、多くの人が次々倒れていく非日常・・・ それは常に背中合わせの出来事なのだと・・・ いつ自分がその非日常に迷い込んでしまうかもしれない紙一重の危険性・・・ この62人の被害者の声を一つずつ聞いた村上さんはものすごく考えさせられたに違いない・・・感化されたに違いない・・・ 最近読んだ1Q84の根底にあるものが少しは垣間見られたような気がしました 被害者一人一人の人生の重さを、私もこの本を通じて教わりました 世界中のどの人の上にも平等に同じ大切な生が輝いており、それは誰にも、何によっても奪われる権利などありはしないのだ・・・と・・・改めて強く感じさせてくれました。 | |