ある日料理店のアルバイトから戻ると、家財道具もろとも同棲していたインド人の恋人の姿は消え、部屋はもぬけの殻になっていた。衝撃的な失恋とともに声まで失った倫子は、ふるさとに戻り、実家の離れで小さな食堂を始める。お客は一日に一組だけ。決まったメニューはなく、事前のやりとりからイメージをふくらませて、その人のためだけに作る料理。食べたお客に変化が現れ、いつしか「食堂かたつむり」で食事をすると願いごとが叶うという噂が広まっていった。一方、十年前に家を出るもととなった母親との確執は解消されず、依然ぎくしゃくとした関係が続いていたのだが--。
昨年この小説が面白いということを聞きおよび、読んでみたいな・・・と思っていた矢先映画化されました
ヒロインの倫子に柴咲コウさん母親役の余貴美子さん・・・これはおもしろそう
主人公の倫子が次々考え出す心のこもった渾身の料理にうならせられます
昔でいうところのお妾さんのが頼りにしていただんなさんに死なれて未亡人に・・・
それ以来喪服を着て能面のような顔をしてただ生きているという状態であった・・・その人に少しでも生きる元気を出してもらうために倫子が作った料理は・・・
またたび酒のカクテル
林檎のぬか漬け
牡蠣と甘鯛のカルパッチョ
比内地鶏をまるごと一羽焼酎で煮込んだサムゲターンスープ
新米のカラスミリゾット
子羊のロースト・野生のきのこのガーリックソテー
柚子のシャーベット
マスカルポーネのティラミスバニラアイスクリーム添え
エスプレッソ珈琲(濃いめ)
これを食べて未亡人さんは明るい色の服を着るようになり表情も生き生きとしてくる
拒食症のうさぎにも手作りの胡桃入りの全粒粉のビスケットを作ってあげる
そして衝撃的なのは大切に愛情かけて育ててきたランドレースという食肉用の種類の愛豚「エルメス」の解体
豚を余すところなく食べつくすことで成仏させてあげるという
非常にショックを受けながら、そもそも生物は何故に生まれくるのだろうか?その役割をまっとうするとは?
かなり倫理的な感情の中で輪廻転生をかみしめたのでした
私たちが日常的に口にしている食品にどれだけの命が詰まっているのか・・・
愛情をこめて食べ物に再生してやり、おいしい料理に生まれ変わらせてやる
それを食べた人の血となり肉となり勇気となり・・・生きるエネルギーとなる・・・
常に食べ物の前では真摯であるべきだということを改めて思い出させてくれる一冊でした
今朝本を手にして・・・夕方までにまたたくまに読み終えることができた心躍る楽しい一冊でした