監督である自分に対して「韓国人のくせに、なぜ日本をあんなに美しく撮るんですか」と言われたことがあり、それに対してはすごくびっくりしたし、ショックを受けました。、、
象徴していますよね、「韓国人のくせに、、」ある意味親日になりますから。
監督するうえで弊害はないんでしょうか?
ソースから
チャン・ゴンジェ JANG KUN-JAE
1977年11月26日生まれ。韓国映画アカデミーを卒業後、中央大学先端映像大学院映像芸術学科映画演出専攻で製作修士学位(MFA)を取得。数々の映画祭に招待された1998年の短編映画『学校に行ってきました』の後、2009年に『つむじ風』で長編デビュー。第28回バンクーバー国際映画祭グランプリ、第45回ペサロ国際映画祭ニューシネマ大賞などを受賞するなど、多くの映画祭で注目を集める。2009年には自身の映画会社MOCUSHURA(モクシュラ)を設立。現在、龍仁大学校映画映像学科教授。
今回は日本で順次公開中の日韓合作映画『ひと夏のファンタジア』のチャン・ゴンジェ監督のインタビューをお送りします。奈良県五條市を舞台に、ある夏の出来事を2部構成で描いたこの作品は、穏やかで優しく繊細、そしてどこかファンタジックで、韓国ではインディーズ映画としては異例の大ヒットを記録しました。“韓国の是枝裕和”ともいわれるその作風は、是枝監督の初期の作品を思わせる即興的な演出でできあがっています。今回は開催が危ぶまれる釜山映画祭について、今の韓国で映画を作ることについても、お伺いしてきましたー。
日本を舞台にした作品を作るきっかけは?
長編第2作目の『眠れぬ夜』という作品がなら国際映画祭に招待され、その中のプロジェクトである「NARAtive」(活躍が期待される若手映画監督による、奈良を舞台にした映画の製作)への参加のお話をいただいたんです。「奈良県五條市で撮影すること」「日本のスタッフの参加」など様々な条件があるのですが、映画祭の実行委員長である河瀬直美監督とご一緒したくてお引き受けしました。当初は河瀬監督が作った構成を自分が監督するというお話でしたが、せっかくならば自分の方向性が示せる、日韓のコラボレーションのような作品にしたいという思いがありました。プロデューサーである河瀬監督からは、映画監督の視点から様々なアドバイスをいただきながら、最後の最後まで緊張感あふれるやり取りを続けました。映画が完成した後に、日韓の映画関係の友人たちには「河瀬監督からよくぞ生き延びた」と、真っ先に言われたんですよ(笑)。
1部は五條市でロケハンする映画監督を追う話、2部はその登場人物だった役所の男の、過去にあったほのかな恋愛のエピソードをもとにした物語という、独特の構成ですね。
1部は実際の自分の体験がベースに、映画監督と通訳が、五條市役所の広報課の職員の案内で五條をロケハンする話をドキュメンタリー風に描きました。
2部は、それをもとに作られた映画という設定です。一部で登場した、岩瀬亮さん演じる役所の職員が「数年前に(キム・セビョクさん演じる通訳の女性と似た)韓国人の女性を案内したことがある」と言うセリフがあるのですが、それを思わせる、青年・友助と韓国人女性ヘジョンのほのかな恋の物語になっています。
1部の撮影が始まった段階では2部は別の話を想定していたのですが、撮影の途中で、一部に出演していたセビョクさんと岩瀬さんに、二部もやらない?と声をかけてしまったんです。想定していた物語は予算の都合上できそうになく、その時点ではストーリーすら決まっていなかったんですが。
韓国で多くの若い女性に支持され、インディーズ作品では異例の大ヒットになったそうですね。
この作品をきっかけに、五條を一人旅した女性も多かったようです。SNSなどでは「奈良に来たけど友助はいない」とつぶやく人もいたりして(笑)。僕は残念ながら結婚しているので、そうした経験はできないのですが、やっぱり旅行に行ったときにちょっとしたロマンスみたいなものがあるといいなと思いますし、そういうものへの憧れがあります。今の韓国では、若い人たちは就職難だし、やっと就職してもオーバーワークで、恋人同士もデートをしないし、結婚の年齢も遅くなっているし、自殺も増えています。そんな生きにくい社会で生きる若い世代にこの作品が受け入れられたのは、みなが僕と同じような憧れを持っているのかなと思います。
これまで過去の作品では、韓国人の男性と日本人の女性という組み合わせはあるのですが、歴史的な問題があるせいか、日本人の男性と韓国人の女性という組み合わせはほとんどありませんでした。そうした作品が韓国人の若い女性に受け入れてもらえたというのは、ひとつには岩瀬さんの誠実なキャラクターがあったからこそだと思います。岩瀬さんは韓国で人気が出て、今年8月には『最悪の一日』という主演のロマンティックコメディも公開されるんですよ。
公開されていた2015年は、日韓関係が冷え切っていたタイミングでしたね。
韓国での舞台挨拶で、岩瀬さんに映画とは無関係の厳しい質問が飛んでくるのではないかと思い、質疑応答のシミュレーションをしたりもしました。幸い岩瀬さんにはそうした質問はなかったのですが、監督である自分に対して「韓国人のくせに、なぜ日本をあんなに美しく撮るんですか」と言われたことがあり、それに対してはすごくびっくりしたし、ショックを受けました。
韓国では釜山映画祭への政治の介入で開催が危ぶまれていますが。
これは個人的な見解ですが、おそらく今年も開催はされると思います。ただ映画祭としての表現の自由、政治からの独立性をどうやって保っていくかは大きな問題です。
上映作品の選定に政治が口を出すなんてありえないことだと思いますし、それに反発した韓国のほとんどすべての映画人が映画祭をボイコットしています。ですからその問題がクリアにならなければ、最悪、映画人がほとんど参加しない映画祭が開催されるという展開もあり得るかもしれません。
そういう状況で、韓国で映画を作る時に何か影響する部分はあるんでしょうか。
何が問題かと言えば、こういう事態が起こっていることで、自分が作っている映画を自分自身が検閲してしまうことです。「こういう作品を作って、もし何か言われたら。政府に問題視されたらどうしよう」と、事前に思ってしまうんですね。そのこと自体がクリエイターとしてはとても大きな問題です。それは自分に限ったことではなく、気分的には作り手の誰もが感じていることだと思います。
最後に日本の観客にメッセージを。
韓国人の監督が日本で撮った作品ですが、国籍に関係なく理解できる普遍的なものを描いた映画だと思います。映画を見て気に入ったとしても、そうでないとしても、どんな感想を持たれるかお聞きかせいただきたいなと思います。
象徴していますよね、「韓国人のくせに、、」ある意味親日になりますから。
監督するうえで弊害はないんでしょうか?
ソースから
チャン・ゴンジェ JANG KUN-JAE
1977年11月26日生まれ。韓国映画アカデミーを卒業後、中央大学先端映像大学院映像芸術学科映画演出専攻で製作修士学位(MFA)を取得。数々の映画祭に招待された1998年の短編映画『学校に行ってきました』の後、2009年に『つむじ風』で長編デビュー。第28回バンクーバー国際映画祭グランプリ、第45回ペサロ国際映画祭ニューシネマ大賞などを受賞するなど、多くの映画祭で注目を集める。2009年には自身の映画会社MOCUSHURA(モクシュラ)を設立。現在、龍仁大学校映画映像学科教授。
今回は日本で順次公開中の日韓合作映画『ひと夏のファンタジア』のチャン・ゴンジェ監督のインタビューをお送りします。奈良県五條市を舞台に、ある夏の出来事を2部構成で描いたこの作品は、穏やかで優しく繊細、そしてどこかファンタジックで、韓国ではインディーズ映画としては異例の大ヒットを記録しました。“韓国の是枝裕和”ともいわれるその作風は、是枝監督の初期の作品を思わせる即興的な演出でできあがっています。今回は開催が危ぶまれる釜山映画祭について、今の韓国で映画を作ることについても、お伺いしてきましたー。
日本を舞台にした作品を作るきっかけは?
長編第2作目の『眠れぬ夜』という作品がなら国際映画祭に招待され、その中のプロジェクトである「NARAtive」(活躍が期待される若手映画監督による、奈良を舞台にした映画の製作)への参加のお話をいただいたんです。「奈良県五條市で撮影すること」「日本のスタッフの参加」など様々な条件があるのですが、映画祭の実行委員長である河瀬直美監督とご一緒したくてお引き受けしました。当初は河瀬監督が作った構成を自分が監督するというお話でしたが、せっかくならば自分の方向性が示せる、日韓のコラボレーションのような作品にしたいという思いがありました。プロデューサーである河瀬監督からは、映画監督の視点から様々なアドバイスをいただきながら、最後の最後まで緊張感あふれるやり取りを続けました。映画が完成した後に、日韓の映画関係の友人たちには「河瀬監督からよくぞ生き延びた」と、真っ先に言われたんですよ(笑)。
1部は五條市でロケハンする映画監督を追う話、2部はその登場人物だった役所の男の、過去にあったほのかな恋愛のエピソードをもとにした物語という、独特の構成ですね。
1部は実際の自分の体験がベースに、映画監督と通訳が、五條市役所の広報課の職員の案内で五條をロケハンする話をドキュメンタリー風に描きました。
2部は、それをもとに作られた映画という設定です。一部で登場した、岩瀬亮さん演じる役所の職員が「数年前に(キム・セビョクさん演じる通訳の女性と似た)韓国人の女性を案内したことがある」と言うセリフがあるのですが、それを思わせる、青年・友助と韓国人女性ヘジョンのほのかな恋の物語になっています。
1部の撮影が始まった段階では2部は別の話を想定していたのですが、撮影の途中で、一部に出演していたセビョクさんと岩瀬さんに、二部もやらない?と声をかけてしまったんです。想定していた物語は予算の都合上できそうになく、その時点ではストーリーすら決まっていなかったんですが。
韓国で多くの若い女性に支持され、インディーズ作品では異例の大ヒットになったそうですね。
この作品をきっかけに、五條を一人旅した女性も多かったようです。SNSなどでは「奈良に来たけど友助はいない」とつぶやく人もいたりして(笑)。僕は残念ながら結婚しているので、そうした経験はできないのですが、やっぱり旅行に行ったときにちょっとしたロマンスみたいなものがあるといいなと思いますし、そういうものへの憧れがあります。今の韓国では、若い人たちは就職難だし、やっと就職してもオーバーワークで、恋人同士もデートをしないし、結婚の年齢も遅くなっているし、自殺も増えています。そんな生きにくい社会で生きる若い世代にこの作品が受け入れられたのは、みなが僕と同じような憧れを持っているのかなと思います。
これまで過去の作品では、韓国人の男性と日本人の女性という組み合わせはあるのですが、歴史的な問題があるせいか、日本人の男性と韓国人の女性という組み合わせはほとんどありませんでした。そうした作品が韓国人の若い女性に受け入れてもらえたというのは、ひとつには岩瀬さんの誠実なキャラクターがあったからこそだと思います。岩瀬さんは韓国で人気が出て、今年8月には『最悪の一日』という主演のロマンティックコメディも公開されるんですよ。
公開されていた2015年は、日韓関係が冷え切っていたタイミングでしたね。
韓国での舞台挨拶で、岩瀬さんに映画とは無関係の厳しい質問が飛んでくるのではないかと思い、質疑応答のシミュレーションをしたりもしました。幸い岩瀬さんにはそうした質問はなかったのですが、監督である自分に対して「韓国人のくせに、なぜ日本をあんなに美しく撮るんですか」と言われたことがあり、それに対してはすごくびっくりしたし、ショックを受けました。
韓国では釜山映画祭への政治の介入で開催が危ぶまれていますが。
これは個人的な見解ですが、おそらく今年も開催はされると思います。ただ映画祭としての表現の自由、政治からの独立性をどうやって保っていくかは大きな問題です。
上映作品の選定に政治が口を出すなんてありえないことだと思いますし、それに反発した韓国のほとんどすべての映画人が映画祭をボイコットしています。ですからその問題がクリアにならなければ、最悪、映画人がほとんど参加しない映画祭が開催されるという展開もあり得るかもしれません。
そういう状況で、韓国で映画を作る時に何か影響する部分はあるんでしょうか。
何が問題かと言えば、こういう事態が起こっていることで、自分が作っている映画を自分自身が検閲してしまうことです。「こういう作品を作って、もし何か言われたら。政府に問題視されたらどうしよう」と、事前に思ってしまうんですね。そのこと自体がクリエイターとしてはとても大きな問題です。それは自分に限ったことではなく、気分的には作り手の誰もが感じていることだと思います。
最後に日本の観客にメッセージを。
韓国人の監督が日本で撮った作品ですが、国籍に関係なく理解できる普遍的なものを描いた映画だと思います。映画を見て気に入ったとしても、そうでないとしても、どんな感想を持たれるかお聞きかせいただきたいなと思います。