道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

サザエさん

2019年01月25日 | 人文考察

漫画「サザエさん」の朝日文庫版45巻のうち、欠けていた7冊を補充した。漫画そのものの面白さは言うに及ばず、戦後昭和の世相、風俗、庶民のライフスタイルをあれほど的確に描写し続けた「サザエさん」。作者長谷川町子の才幹には、今も傾倒し切っている。

オリジナルの〈姉妹社〉刊行版も、「仲よし手帖」「似たもの一家」「いじわるばあさん」「新やじきた道中」など、主な作品は半世紀前までは全て揃っていたが、今は散逸してそれぞれ数冊しか残っていない。

絵としては、テレビ放映される前の、〈姉妹社〉刊時代のキャラクターの表情に、格段の味わいがあった。アニメ化されテレビ放映されてからの「サザエさん」は、発刊当初のものと較べると、人物の顔がかなり変化している。

今年は元号が変わる。昭和はまた遠ざかるが、オリンピックまでの昭和の時代を回想する援けには、長谷川町子作品がもっとも確実だ。

長谷川町子は、多様な人物の表情を描き別ける技倆と、画面に臨場感を与える建物、乗り物、家具、動物、草木などの背景や物体を簡潔な線で直截に描く写生力において、他の追随を許さない天分があった。写実を超え本質を的確に掴みマンガ絵に表す創作性をもっていた。

読者はサザエ一家の生活空間に我知らず出入りし、登場人物を自分の分身や身内のように感じ、彼や彼女らの生活感情を膚で感じとることができた。

長谷川町子は大正9生まれで、戦争の時代に青春を過ごした。既に才能は開花していて、戦争中も新聞連載をいくつかもっていた。戦後は曲折あるものの、姉とつくった出版社〈姉妹社〉から刊行した「サザエさん」が大ヒット、テレビ時代になるとアニメ化されて、昭和を代表するお茶の間アニメ漫画となった。

俗物嫌いの稟質があった人と理解しているが、それが彼女のユーモアの源泉になっていたのではないかと思う。クリスチャンだったことは今になって知ったが、これも作品の下地になっていたのかもしれない。


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