道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

干し芋

2019年01月20日 | 食物・料理
この季節になると、干し芋が出回るようになる。
 
遠州御前崎は、古くから干し芋の特産地だ。冬の北西風空っ風と天日で乾燥させた干し芋は、美味しく保存性が高い冬の嗜好食品だった。
今日では、干し芋の出荷量は茨城県が全国トップだそうだが、製法はその昔御前崎から伝わったと聞いている。
 
近年、御前崎産の干し芋は生産量が少なく、滅多に手に入らないが、磐田原産の流通量が多く、味も劣らない。サツマイモの品種改良が進み、昔のものとはかけ離れた甘さ柔らかさと風味をもっている。
 
私が子供の頃には、外で遊ぶ際には必ず乾いて白く粉を吹いた干し芋を数枚または数本(薄板状と棒状のものがあった)ポケットに容れていた。今日のものと違って、糖分が少なく固かった。
 
遊んでいて空腹を覚えると干し芋を齧り、日暮れまで遊び続けた。今から考えると、遊びを続けるための行動食だったようだ。
 
さてその干し芋だが、郷愁からか好んで食べるようになってきた。
店頭で見かけると必ず買う。
現代の干し芋は、菓子のように甘い。菓子を食べない私には、干し柿に次ぐ甘いオヤツである。婦人たちがケーキを食べる時のように、干し芋を食べて幸福感に浸っている。
 
年少期の食生活の関係で、高齢の男性に同好の士は多いが、婦人たちにはあまり好まれないようだ。婦人はなぜか昔も今も焼き芋を好む。スイーツ狎れした現代の若者は、干し芋などに見向きもしない。
 
半世紀ほど前にはダサイ若者のことを、芋兄(いもにい)と呼んだ。今日では芋兄という言葉は辞書から消えている。芋兄はこの国のどこを探しても見られなくなった。替わりに干し芋好きの芋爺(いもじい)が、むやみやたらと増えている。


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