JINX 猫強

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聖闘士学園へようこそ・番外編 6 

2007-07-23 02:48:09 | ノンジャンル
 こうなったら、この学園でも問題を起こし退学になるしかないと、阿部はたまたま脇を通り過ぎた学生の肩を掴み引き寄せ、仲間はその周囲を取り囲んだ。
 腕の中の学生を見つめ、阿部は違和感に捕らわれた。
 この学園は全国の問題児、それも少年刑務所に行く一歩手前の学生や不登校の生徒の寄せ集めだと聞かされていた。が、いきなり肩を掴まれ驚いている生徒はモデルを思わせる端正な肢体と容貌を兼ねそろえていた。
 ライトブラウンの瞳が、突然の暴挙に見開かれている。
「なーに、髪を染めてやがるんだ」
 阿部は自分のことを棚に上げ、瞳の色と同色の髪の毛を軽くつまんだ。
「これは、地毛です」
 生徒が弱々しく口を開いた、なぜ自分がこんな目に合っているのか、まるで理解していない表情であった。
「逆らってんじゃあねーよ」
 阿部は腕を振り上げた。問題を起こしたいだけだから相手は誰でも良かった。だが、理由もなく殴りつけるには、目の前の少年は華奢で、端正すぎた。
 阿部は拳ではなく、平手を見舞うつもりだった。
 だが、振り上げた腕は背後で掴まれていた。
「なに、しやがるッ!」
 振り向き、阿部は瞠目した。
 男の姿を認めた仲間が、一斉に阿部から遠退いた。
 阿部の腕を掴んでいる男は、以前の学園を退学するきっかけを作った男の片割れであった。それも人相の悪い方の。
「なにしやがるは、こちらのセリフよ」
 男が唇の端を吊り上げ、眸を細めた。そうすると悪い人相に更に凄みが増す。
「やめてください兄さん」
 肩を掴んでいた学生の言葉に、阿部は生徒の肩を突き飛ばすように放した。
「瞬がキサマになにをした?」
 瞬と呼ばれた学生を放した阿部の腕を、男が捩じ上げた。
 驚きのあまりに人質になりえる弟を放してしまったことを、阿部は悔いた。
「いえ、別に…」
 阿部はぎこちない笑顔で言葉を紡ぎだした。
「別になにもなくて、オレの弟を殴るのかキサマ」
 更に腕を捩じ上げられ阿部は呻いた。
「やめてくださいてばッ」
 いって瞬は男と阿部を引き放してくれた。
「なんだ、せっかく助けてやったというのに…」
 男が瞬に笑いかけた。
「もう、ボクはそんなに子供じゃありませんよ」
 瞬が腕を組みそっぽを向いている。
「着くそうそう、因縁をつけられていたではないか」
 男の言葉に瞬が柳眉を吊り上げ、阿部を振り返った。
「もう、あなたたちが変なことするから…」
 そこで瞬は言葉を切った。
「…いいですか、この学園にはあなたたちの常識では測れない人が他にもいるんですから、もうこんなことはしない方がいいですよ」
 そう口にし瞬は、阿部たちをこの場から解放してくれた。
 だが、阿部は瞬の言葉など真に受けてはいなかった。
――なにが、あなたたちの常識では測れない人が他にもいる、だ。
 心中、嘲った。
 阿部とて、街に出れば喧嘩でそうそう負けはしない。
 いえば、あの男は別格だ。
 そう思って歩き出し、阿部とその一味は柱の影に身を隠していた。
 目の前から歩いてくる金髪の青年には見覚えがあった。
 ゆったりとこちらに歩を進めているのは、あの悪夢の元凶の美しい片割れであった。

「続く」

 強引に、一輝と氷河を出してみました。

 阿部とその取り巻きの散々な一日は《聖闘士学園へようこそ》に載ってまーす。ちょっと宣伝してみました☆