「な、なんだってこんな…」
化け物じみた二人が揃って同じ学園にいるのかと阿部は舌打ちし、金髪をやりすごし場所を移動した。
「どうする、阿部?」
怪奇現象の場に居合わせたというだけでそろって前学園を追い出され、阿部とともにこの樹海の檻に放り込まれた井上が口を開いた。
「どうって」
こう、恐ろしげな者どもが跋扈しているようでは、問題を起こすにも相手を選ばねばならない。
「このまま、卒業するまでこの学園へいろってか? こんな所じゃあ、タバコ1箱買いに行けねぇ」
同じく現場に居合わせた植田が口を開いた。
「タバコだけじゃあねぇ、こう樹海に囲まれていたんじゃあ、抜け出すこともできやぁしねぇぜ」
江藤が拳を握り締めた。
「そんなこと、知るかよ」
阿部がそっぽを向いた。
「それに、ここは男子校っていうじゃあねぇか」
夜遊び好きの小野田が壁を蹴った。
「うるせぇ、場所を変えるぞ」
不吉な二人を見た場所から移動し、問題を起こし、すぐさま退学になる肚を阿部は固めた。
「おい、あれなんかどうだ」
真新しい校舎を物珍しげに見回しながら歩いている小柄な生徒に江藤が目をつけた。
「おう、あれなら手ごろだな」
阿部は目を細めた。
生徒には気の毒だが早々に因縁を付け、痛め付け、退学になることに一味は決めた。
「おい、チビ」
背後からの声に、星矢は周囲を見回した。
だが、辺りには星矢の他に人影はない。
「なに、辺りを見回してんだよ、おめぇしかいねーだろう、チビはよぅ」
植田が星矢の頭を軽く叩いた。
「なにすんだよ」
星矢は辺りを取り囲んだ5人の男たちを眺め回した。
「チビをチビといってどこが悪い、え? チビ」
小野田が膝を曲げ、星矢と視線を合わせて見せた。
「お前ら、オレに喧嘩を売っんのか」
星矢が小野田を睨み付けた。
「喧嘩になるのか、チビ助がッ」
いって殴りつけてきた小野田の拳を、星矢は悠々と交わした。
「いっておくけどな、オレは強いぜ」
己を取り囲む男たちの頭上を飛び越え、星矢が笑った。
喧嘩は女神から禁じられてはいるが、相手から仕掛けてくるものは仕方がない。それも、相手は理由もなく星矢に因縁をつけてきているのだ。
こういう相手なら痛め付けるのにそう、心は痛めずにすむ、それに、逃げるという文字は、聖闘士にはないのだ。
「なにが、強いだこのガキがッ」
身軽なガキにそれぞれが殴りかかった。
「バーカ、強えー強いっていったんだよ」
星矢は殴りかかってきた一人の腕を掴み放り投げ、掴みかかってきた生徒の足を払い、一歩引いた生徒の腕を掴み引き寄せ、腕とベルトに手をかけ持ち上げると、呆然と自身を見つめている二人に向かい叩きつけた。
「つ、強ぇ~」
植田の下敷きになった、小野寺が呻いた。
呻いたときには、簡単に殴り倒せると思った生徒は背を向けていた。
苦痛に呻きながら、阿部たちは最初に因縁をつけた生徒の言葉を思い出していた。
――この学園には、あなたたちの常識では測れない人が他にもいるんですから…。
生徒はそういった。
確かにその通りであった。
阿部たちは、自分たちが殴りかかった生徒の名前が、城戸星矢であることを後で知った。
そして、最初に因縁をつけた生徒の名も城戸瞬であること、やたらと人相の悪い、額に傷のある男も城戸一輝…後に風紀委員として阿部たちの前に立ち塞がる漆黒の髪を背まで垂らした城戸紫龍たちが異母兄弟であることを知ることになる。
以来、阿部たちは校舎の隅でタバコをふかし、だべっているしかない。
今は第1回寮会議、なるものが開かれている。
そんなものにはバカバカしくて出る気にはなれない。
いくら寮生活が改善されようと、酒やタバコが出るわけではない。
まじめな学生生活など、阿部たちには送るつもりは毛頭ない。
思い描くのは自堕落な、先日までの日常のみだ。
このような学園へ押し込められるのなら、いま少し控えめに過ごすのだったと阿部たちは悔いていた。
不意に金属を震わせる鋭い音に凍り付いた5人を、漆黒の鎖が絡め取っていた。
「なッ、熱ィ!」
腕に巻きつけられた鎖に、持っていたタバコごと絡め取られ、井上が悲鳴を上げた。
「見つけたぜ」
声に、5人は一斉に扉に視線を据えた。
目の前に立ち、鎖を引き据えているのは、銀色の髪を持つ留学生の一人だ。
この学園には留学生が多い。
そして、その留学生たちはどういうわけが、一輝と呼ばれる人相の悪い男に忠誠心厚い。
「手間かけさせんじゃあねえ」
阿部が殴りつければ3メートルは吹っ飛びそうな華奢な生徒に引き立てたれ、阿部たちは食道に引き立てられていた。
「続く」
化け物じみた二人が揃って同じ学園にいるのかと阿部は舌打ちし、金髪をやりすごし場所を移動した。
「どうする、阿部?」
怪奇現象の場に居合わせたというだけでそろって前学園を追い出され、阿部とともにこの樹海の檻に放り込まれた井上が口を開いた。
「どうって」
こう、恐ろしげな者どもが跋扈しているようでは、問題を起こすにも相手を選ばねばならない。
「このまま、卒業するまでこの学園へいろってか? こんな所じゃあ、タバコ1箱買いに行けねぇ」
同じく現場に居合わせた植田が口を開いた。
「タバコだけじゃあねぇ、こう樹海に囲まれていたんじゃあ、抜け出すこともできやぁしねぇぜ」
江藤が拳を握り締めた。
「そんなこと、知るかよ」
阿部がそっぽを向いた。
「それに、ここは男子校っていうじゃあねぇか」
夜遊び好きの小野田が壁を蹴った。
「うるせぇ、場所を変えるぞ」
不吉な二人を見た場所から移動し、問題を起こし、すぐさま退学になる肚を阿部は固めた。
「おい、あれなんかどうだ」
真新しい校舎を物珍しげに見回しながら歩いている小柄な生徒に江藤が目をつけた。
「おう、あれなら手ごろだな」
阿部は目を細めた。
生徒には気の毒だが早々に因縁を付け、痛め付け、退学になることに一味は決めた。
「おい、チビ」
背後からの声に、星矢は周囲を見回した。
だが、辺りには星矢の他に人影はない。
「なに、辺りを見回してんだよ、おめぇしかいねーだろう、チビはよぅ」
植田が星矢の頭を軽く叩いた。
「なにすんだよ」
星矢は辺りを取り囲んだ5人の男たちを眺め回した。
「チビをチビといってどこが悪い、え? チビ」
小野田が膝を曲げ、星矢と視線を合わせて見せた。
「お前ら、オレに喧嘩を売っんのか」
星矢が小野田を睨み付けた。
「喧嘩になるのか、チビ助がッ」
いって殴りつけてきた小野田の拳を、星矢は悠々と交わした。
「いっておくけどな、オレは強いぜ」
己を取り囲む男たちの頭上を飛び越え、星矢が笑った。
喧嘩は女神から禁じられてはいるが、相手から仕掛けてくるものは仕方がない。それも、相手は理由もなく星矢に因縁をつけてきているのだ。
こういう相手なら痛め付けるのにそう、心は痛めずにすむ、それに、逃げるという文字は、聖闘士にはないのだ。
「なにが、強いだこのガキがッ」
身軽なガキにそれぞれが殴りかかった。
「バーカ、強えー強いっていったんだよ」
星矢は殴りかかってきた一人の腕を掴み放り投げ、掴みかかってきた生徒の足を払い、一歩引いた生徒の腕を掴み引き寄せ、腕とベルトに手をかけ持ち上げると、呆然と自身を見つめている二人に向かい叩きつけた。
「つ、強ぇ~」
植田の下敷きになった、小野寺が呻いた。
呻いたときには、簡単に殴り倒せると思った生徒は背を向けていた。
苦痛に呻きながら、阿部たちは最初に因縁をつけた生徒の言葉を思い出していた。
――この学園には、あなたたちの常識では測れない人が他にもいるんですから…。
生徒はそういった。
確かにその通りであった。
阿部たちは、自分たちが殴りかかった生徒の名前が、城戸星矢であることを後で知った。
そして、最初に因縁をつけた生徒の名も城戸瞬であること、やたらと人相の悪い、額に傷のある男も城戸一輝…後に風紀委員として阿部たちの前に立ち塞がる漆黒の髪を背まで垂らした城戸紫龍たちが異母兄弟であることを知ることになる。
以来、阿部たちは校舎の隅でタバコをふかし、だべっているしかない。
今は第1回寮会議、なるものが開かれている。
そんなものにはバカバカしくて出る気にはなれない。
いくら寮生活が改善されようと、酒やタバコが出るわけではない。
まじめな学生生活など、阿部たちには送るつもりは毛頭ない。
思い描くのは自堕落な、先日までの日常のみだ。
このような学園へ押し込められるのなら、いま少し控えめに過ごすのだったと阿部たちは悔いていた。
不意に金属を震わせる鋭い音に凍り付いた5人を、漆黒の鎖が絡め取っていた。
「なッ、熱ィ!」
腕に巻きつけられた鎖に、持っていたタバコごと絡め取られ、井上が悲鳴を上げた。
「見つけたぜ」
声に、5人は一斉に扉に視線を据えた。
目の前に立ち、鎖を引き据えているのは、銀色の髪を持つ留学生の一人だ。
この学園には留学生が多い。
そして、その留学生たちはどういうわけが、一輝と呼ばれる人相の悪い男に忠誠心厚い。
「手間かけさせんじゃあねえ」
阿部が殴りつければ3メートルは吹っ飛びそうな華奢な生徒に引き立てたれ、阿部たちは食道に引き立てられていた。
「続く」