モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

すみれ(菫)の花

2009-01-15 08:59:49 | その他のハーブ
スミレは、4月頃に野山や原っぱや、いまではコンクリート道路の隙間からも顔を出している。
根元から葉を出し、1本の茎に一つの青紫色の花が咲く。
花は必ずしも太陽に向かっているわけでもなく、ややうつむき加減でそっぽを向いている。
このシャイなところがなかなかいい。

日本に自生するスミレは54種あり、これらの雑種を含めるとかなりの品種があるというが、スミレ科スミレ属のスミレという品種がスミレを代表していると思う。今は花がないのでリンク先で花を愛でていただきたい。

すみれ感覚
スミレの語源は、その花の形から大工道具の一つの“墨いれ”からきているという説と、 “摘まれる”から転化して“ツマレル”“ツミレ”と変化したという説がある。
通説は“墨いれ”のようだが、“摘まれる”の方が万葉の時代にあっていそうだ。

というのはこの万葉の時代は、様々な種類の花が歌人の心をとらえ詠われており、日本を代表する花として桜・梅がその地位を占めるに至っていない。
この点では、イメージが操作されないで花々がとらえられているといってもよい。

さてそこで、スミレを代表する詩2首があるがどちらが好きだろうか?

春の野にすみれ摘みにと来し我ぞ 野をなつかしみ一夜寝にける」(山部赤人、万葉集)

山路来て何やらゆかしすみれ草」(芭蕉)

山部赤人(やまべのあかひと)の詩は、ノンフィクションではなく虚構がある。“野に一夜寝る”わけがない。これを文学的な表現というそうだが、一事を万事に普遍的にするにはこの虚構が重要になるが、スミレが主役ではなく春の野が主役であることに注目したい。
春のすみれ摘みは、染料として使うかおひたしとして食したのかわからないが、万葉の時代には普通の行事になっていたようだ。

江戸時代の俳人、松尾芭蕉(1644-1694)は、すみれにスポットを当てた俳句を残しており、万葉から江戸までの間での変化がこのようにうかがい知れる。
そして、江戸時代の日本の園芸は世界最高水準にあったかもわからないが、それでもすみれは庭に持ち込まれることもなく改良されることもなかった。
だから芭蕉の詩が脚光を浴びるのだろう。

芭蕉の句を再度読み直してみると、写実的で情景が浮かび上がる。
文字も絵を描くそんな文字の力強さを感じる。これは、絵画に写実主義という新しい描き方をした同時代のフェルメール(Johannes Vermeer, 1632―1675)を連想させる。

(写真)うさちゃんのビオラ、バーニーイエロ(これはスミレではありません)


すみれ(菫)
・学名は、Viola mandshurica W.Becker、属名のViolaは、ニオイスミレなどの香りの強い花を示す、種小名のマンドシュリカは満州を意味する。
・日本には原種54種のほかに自然交配でできた数多くの変種がありスミレの宝庫でもある。
・代表的なスミレのミヤマスミレ(V.selkirkii Pursh ex Goldie)は、本州中部以北となぜかしら広島県西部の山地の亜高山帯に自生し、淡い紫色の花を咲かせる。
・万葉集ではスミレは4首しか詠われていなかったようで、重要な花卉ではなかったようだ。
・ヨーロッパでは、ギリシャの詩人がアテネを象徴する花として詩に歌い、ナポレオンもこの花を愛した。ナポレオン復活のシンボルはスミレでありスミレ党とも呼ばれた。また、バラ(美)ユリ(厳格)すみれ(誠実)は特別の花で、聖母に捧げられた。
・東京郊外にある高尾山はスミレの名所のようで、20種ぐらいはあるという。
・スミレの仲間はたくさんあるが、大きく分けると二つになる。地上茎がなくつけ根のところから花も葉も出るグループ、地上茎がありそこから分かれるグループ。すみれは前者にあたる。
・開花期は4-5月。
・すみれの若葉は、てんぷらやおひたしなどで食べれるが、園芸品種やパンジー、ビオラ、スイート・バイオレットは食べない方がよい。

命名者Becker, Wilhelm (1874-1928)は、ドイツの植物学者で「世界のバイオレット」を著する。

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