「平和をつくる主体は何か」で踏み込んだ討論
24日夜、東京都内で開かれたシンポジウム「いま東アジアの『平和の準備』をどう進めるか」(主催=全国革新懇、日本原水協、日本平和委員会、安保破棄中央実行委員会で構成する「7・24『平和の準備』実行委員会」)では、パネリスト同士の討論や会場参加者からの質問など、活発な議論が交わされました。
中国との関係
(写真)「いま東アジアの『平和の準備』をどう進めるか」と題したシンポジウム。左からパネリストの纐纈厚、志位和夫、佐々木寛の各氏=24日、東京・明治大学駿河台キャンパス
コーディネーターの纐纈(こうけつ)厚・山口大学名誉教授からは、パネリストへの問題提起がなされました。纐纈氏は、東アジアの平和構築に関わって、「中国脅威論」に言及。「中国は海洋進出という形で出張ってきている。これを脅威とみなすのかみなさないのかという問題です」「覇権を求め合わないような米中関係、日中関係の構築が、『平和の準備』に資するのではないでしょうか」と問いかけました。
現状打開に「三つの共通の土台」「言うべきことは言う」
日本共産党の志位和夫議長は、昨年3月に発表した党の提言「日中両国関係の前向きの打開のために」を紹介。「提言」作成にあたって、日中両国政府の国交正常化(1972年)以降の合意文書、外交政策をすべて精査したと強調し、その中で、事態を打開するうえで三つの点で「共通の土台」が存在することが浮かび上がったと語りました。
志位氏は、(1)2008年の日中首脳会談の「共同声明」で「双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」と合意していること(2)尖閣諸島の問題については、2014年の日中合意で、「尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていること」について、日中が「異なる見解を有している」と認識し、「対話と協議」を通じて問題を解決するという合意があること(3)日中両国が参加する多国間の枠組みとしては、ASEANが提唱する「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」に日中双方とも賛意を表明していることを紹介しました。
志位氏は「『脅威とみなすか』という設問がありましたが、『互いに脅威とならない』というのが(両国政府の)合意なんです」と強調。4月に発表した党の「東アジア平和提言」では、「互いに脅威とならない」との合意を尊重した具体的対応を求めていると紹介。「『互いに脅威とならない』というのであれば、それにふさわしい行動をとるべきです」と主張し、「提言」では日本側は敵基地攻撃能力の保有など大軍拡をやめ、中国は東シナ海などでの力を背景にした現状変更の動きをやめるべきだと明記したと述べました。
志位氏は、6月下旬に緒方靖夫副委員長・国際委員会責任者が、中国・上海の復旦大学の学術講演会に招待されて、「平和提言」を語った経験も紹介しました。
「平和提言」では、中国に対し、東シナ海の問題、台湾の問題など意見の不一致がある問題でも、「言うべきことは言い」、「現状の前向き打開の立場を取っている」と強調。同講演でもその趣旨を表明し、これらの点では中国側から中国の立場が表明されたが、党の「平和提言」に対しては全体として肯定的な評価が寄せられたと述べました。
平和をつくる主体
「平和をつくる主体」とは何か―。シンポジウムはパネルディスカッションに移り、室蘭工業大学の清末愛砂教授は、憲法24条にある「個人の尊厳」について言及し、平和をつくる主体としての個人の重要性を説きました。新潟国際情報大学の佐々木寛教授は、国家と市民社会双方が平和の担い手になるとの考えを示しました。
これに対して、志位氏は「とても大切な議論が行われていると思います。平和をつくる主体として市民社会、個人を重視していくというお話でしたが、本当にその通りで、(私も)その考えです」と語りました。
その上で、「この問題を考える際、現実の問題で考える必要があると思います」として、核兵器禁止条約がどうやってつくられたか、同条約成立時にニューヨークの国連本部を訪れ、成立にむけ活動した自身の経験もふまえ振り返りました。
志位氏は、同条約の実現は各国政府の奮闘の成果だが、「被爆者を先頭にする市民社会の頑張りがなければできなかった」と指摘。「個人の尊厳を掲げ被爆者のみなさんが立ち上がり声をあげ続けた」「『人間の尊厳』をまったく奪われる、人間らしく死ぬことすらできない究極の非人道的事態に直面し、自らの尊厳をかけて声をあげた。被爆者の個人としての力が各国政府を揺さぶり、あの禁止条約に実を結んだと思います」と語りました。
「政府とともに個人・市民社会が平和をつくる主体に」(志位さん)
(写真)発言する志位和夫さん
志位氏はまた、核兵器禁止条約の前文に、「核兵器のない世界」にむけた取り組みに貢献した主体として、国連、国際機関、非政府組織、議会議員、学者などとともに「被爆者」が明記されていることを紹介。「いま、世界の平和をつくるうえで各国の政府の頑張りとともに、個人が、そして市民社会がどれだけ『平和の主体』として声をあげるか、これがいよいよ重みを増していると思います」と強調しました。さらに、「民衆のなかの草の根のたたかいに支えられてこそ平和はつくられるのではないかというのが、私たちが『東アジアの平和構築への提言』に込めた思いです」と語りました。
「一度手を結んだら、離さないように」(清末さん)
(写真)発言する清末愛砂さん
清末氏は、「市民社会の頑張りはまさにそうだと思っていました」と応じ、「平和とか人権というのは公権力から与えられるものではなく私たちが勝ち取ってきた、勝ち取るべきものです」と断言。「その時に、いかに人々が連帯の気持ちを持ちうるか」「一度、この問題に取り組むと決めたら、信頼し手を結び合ったものが手を離さずに関係性を続けていく」ことが必要だと語りました。
清末氏は、核兵器禁止条約にむけた取り組みのほか、南アフリカでの人種隔離政策(アパルトヘイト)撤廃にむけた運動を例に挙げ、撤廃実現は「南アフリカ国内の頑張りと国際社会の大きな連帯活動の成果だ」と話しました。
志位氏は、最近、駐日南アフリカ大使と意見交換したときの話を紹介。南アフリカは、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザに対するジェノサイドに強く反対しており、それは、「アパルトヘイトに反対し撤廃した、南アフリカ人民の歴史に立っているのです」と大使から説明を受けたと話しました。その上で、「アパルトヘイトと同じことを極めて残虐な形でやっているのがガザ危機であり、絶対に許せないという話です」「民衆のたたかいが南アフリカでもあって、それを支えたのは圧政に対する一人ひとりの個人の奮闘であり、それがいまのガザ危機への対応につながっていると思いました」と述べました。
「民衆のたたかいは地下茎でつながっている」(佐々木さん)
(写真)発言する佐々木寛さん
佐々木氏は、核兵器禁止条約の起源をたどると、「1997年の対人地雷全面禁止条約があり、その後のクラスター爆弾禁止条約という軍縮の一定の流れがある」と説明。米シアトルでのグローバル化反対の反WTO(世界貿易機関)デモ、ポルトアレグレ運動などの事例を出し、「社会運動は地下茎でつながっている」と強調。「市民社会はその時は負けたようでも世代を超えてつながっていく。あまり絶望する必要はなく、目の前の問題に人間として取り組むことが次につながる。志位さんの話をきいて改めてそう思いました」と語りました。
志位氏は、「地下茎でつながっているのは本当にそう思います」と応じ、昨年暮れの東南アジア訪問時のベトナム、ラオス両国代表とのやりとりについて話しました。ベトナム戦争時の枯れ葉剤の被害がいまだに続くベトナム、世界の半分の量の不発弾を抱えるラオスとも、残虐兵器という点での苦難の歴史を持つことから、「それが広島・長崎の被爆と地下茎でつながって、連帯の気持ちが強まったことを経験しました」と語りました。
女性の運動と平和
会場参加者からは、ジェンダー平等の視点を据えた安全保障や平和についての質問があがりました。参加者の女性は、1991年に韓国人女性の金学順(キム・ハクスン)さんが、「慰安婦」被害を名乗り出たことから、女性の視点・ジェンダー平等の視点が安全保障の分野に及んでいった経過を振り返り、「女性たちが被害者ではなく運動の主体として力をつけ、連帯が生まれました。ジェンダー平等の視点は、平和をつくるうえでも欠かせないものではないでしょうか」と質問しました。
清末氏は、女性が「運動」の主体となる国際的な流れの「下地」には、70年代に世界各地で展開された女性解放運動があると指摘。「各地でバッシングの波もありましたが、この時に“自分たちが運動の主体になるんだ”と盛り上がった気持ちは、確実に今につながっています。その大きな流れが、国際条約や女性関連の国連文書などにも反映されています。女性たちの運動の成果を強く感じます」と答えました。
清末氏は、女性の自立や権利擁護を求め活動する「アフガニスタン女性革命協会(RAWA)」のメンバーが6月に来日講演した際のエピソードも紹介。「講演の最後に彼女らはこう言いました。『みなさんの連帯は私達にとって世界を意味する』。女性たちが連帯の気持ちを求めて実際に世界を動かしてきたからこそ、非常に苦しい状況に追い込まれているはずのアフガンの女性たちも、声をあげ、連帯することは世界を動かすと確信しているんです」と強調しました。
ジェンダー平等を平和構築の中核にすえていく
志位氏は、党の「平和提言」の最後に「ジェンダー平等を平和構築の中核にすえていく」という決意を書き込んだと紹介しました。
その上で、日本で戦後一貫して女性差別撤廃のために頑張ってきた女性組織の結成の原点は、女性差別をなくすということと平和だと指摘。核兵器禁止条約がつくられた際には、国連会議の議長をエレン・ホワイトさん(コスタリカ)、国連事務次長を中満泉さんが務めたと紹介し、「議長団の中心に女性が座って頑張っておられた。あの条約がつくられた国連会議で女性の姿が輝いていたことを思い出します」と振り返りました。
さらに、「本当の意味でのジェンダー平等社会ができたら、平和な社会になると思うんです」と語った志位氏は、ジェンダー不平等の根っこには、権力的関係―人間が人間を支配するという関係があると指摘します。
「性暴力なども、さまざまな権力的関係をテコに起こってくる。人間が人間を支配するような権力的関係がなくなるような社会――これは根本的には社会主義・共産主義と考えていますが――でこそジェンダー不平等の根もたたれて、本当の意味でのジェンダー平等社会が実現する。そして、そういう権力的関係がなくなる社会は、平和な社会になると思うんです」と主張。ジェンダー平等と平和構築を一体に取り組む決意を表明しました。
「平和をつくる主体として根本的なところに話が及んだ」(纐纈さん)
(写真)発言する纐纈厚さん
シンポジウムの最後にコーディネーターを務めた纐纈氏は、「私が思っている以上に、深い厚みのある、今後、課題としていかなければならない議論が集約された場になった」「大きな政策構想だけでなく、それを支える主体としての私たちがどういう立ち位置にたって平和の準備にまい進しなければいけないのか、非常に根源的、根本的なところまで話が及び、期待している以上の議論ができた」と総括。同時に「日本共産党がこういったテーマで、議長が出てきていただいて非常に胸襟を開いたお話をされた。安全保障や人権の問題など、人間を大切にする党のリーダーとしての志位さんの生身の姿に感銘を受けました」「清末さんからも、非常にアクティブな発言、課題を提供していただきました。佐々木さんもアクティブで若く期待できる平和学者です。こういった方々にどんどん出てきてもらいたいです」と語りました。
24日夜、東京都内で開かれたシンポジウム「いま東アジアの『平和の準備』をどう進めるか」(主催=全国革新懇、日本原水協、日本平和委員会、安保破棄中央実行委員会で構成する「7・24『平和の準備』実行委員会」)では、パネリスト同士の討論や会場参加者からの質問など、活発な議論が交わされました。
中国との関係
(写真)「いま東アジアの『平和の準備』をどう進めるか」と題したシンポジウム。左からパネリストの纐纈厚、志位和夫、佐々木寛の各氏=24日、東京・明治大学駿河台キャンパス
コーディネーターの纐纈(こうけつ)厚・山口大学名誉教授からは、パネリストへの問題提起がなされました。纐纈氏は、東アジアの平和構築に関わって、「中国脅威論」に言及。「中国は海洋進出という形で出張ってきている。これを脅威とみなすのかみなさないのかという問題です」「覇権を求め合わないような米中関係、日中関係の構築が、『平和の準備』に資するのではないでしょうか」と問いかけました。
現状打開に「三つの共通の土台」「言うべきことは言う」
日本共産党の志位和夫議長は、昨年3月に発表した党の提言「日中両国関係の前向きの打開のために」を紹介。「提言」作成にあたって、日中両国政府の国交正常化(1972年)以降の合意文書、外交政策をすべて精査したと強調し、その中で、事態を打開するうえで三つの点で「共通の土台」が存在することが浮かび上がったと語りました。
志位氏は、(1)2008年の日中首脳会談の「共同声明」で「双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」と合意していること(2)尖閣諸島の問題については、2014年の日中合意で、「尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていること」について、日中が「異なる見解を有している」と認識し、「対話と協議」を通じて問題を解決するという合意があること(3)日中両国が参加する多国間の枠組みとしては、ASEANが提唱する「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」に日中双方とも賛意を表明していることを紹介しました。
志位氏は「『脅威とみなすか』という設問がありましたが、『互いに脅威とならない』というのが(両国政府の)合意なんです」と強調。4月に発表した党の「東アジア平和提言」では、「互いに脅威とならない」との合意を尊重した具体的対応を求めていると紹介。「『互いに脅威とならない』というのであれば、それにふさわしい行動をとるべきです」と主張し、「提言」では日本側は敵基地攻撃能力の保有など大軍拡をやめ、中国は東シナ海などでの力を背景にした現状変更の動きをやめるべきだと明記したと述べました。
志位氏は、6月下旬に緒方靖夫副委員長・国際委員会責任者が、中国・上海の復旦大学の学術講演会に招待されて、「平和提言」を語った経験も紹介しました。
「平和提言」では、中国に対し、東シナ海の問題、台湾の問題など意見の不一致がある問題でも、「言うべきことは言い」、「現状の前向き打開の立場を取っている」と強調。同講演でもその趣旨を表明し、これらの点では中国側から中国の立場が表明されたが、党の「平和提言」に対しては全体として肯定的な評価が寄せられたと述べました。
平和をつくる主体
「平和をつくる主体」とは何か―。シンポジウムはパネルディスカッションに移り、室蘭工業大学の清末愛砂教授は、憲法24条にある「個人の尊厳」について言及し、平和をつくる主体としての個人の重要性を説きました。新潟国際情報大学の佐々木寛教授は、国家と市民社会双方が平和の担い手になるとの考えを示しました。
これに対して、志位氏は「とても大切な議論が行われていると思います。平和をつくる主体として市民社会、個人を重視していくというお話でしたが、本当にその通りで、(私も)その考えです」と語りました。
その上で、「この問題を考える際、現実の問題で考える必要があると思います」として、核兵器禁止条約がどうやってつくられたか、同条約成立時にニューヨークの国連本部を訪れ、成立にむけ活動した自身の経験もふまえ振り返りました。
志位氏は、同条約の実現は各国政府の奮闘の成果だが、「被爆者を先頭にする市民社会の頑張りがなければできなかった」と指摘。「個人の尊厳を掲げ被爆者のみなさんが立ち上がり声をあげ続けた」「『人間の尊厳』をまったく奪われる、人間らしく死ぬことすらできない究極の非人道的事態に直面し、自らの尊厳をかけて声をあげた。被爆者の個人としての力が各国政府を揺さぶり、あの禁止条約に実を結んだと思います」と語りました。
「政府とともに個人・市民社会が平和をつくる主体に」(志位さん)
(写真)発言する志位和夫さん
志位氏はまた、核兵器禁止条約の前文に、「核兵器のない世界」にむけた取り組みに貢献した主体として、国連、国際機関、非政府組織、議会議員、学者などとともに「被爆者」が明記されていることを紹介。「いま、世界の平和をつくるうえで各国の政府の頑張りとともに、個人が、そして市民社会がどれだけ『平和の主体』として声をあげるか、これがいよいよ重みを増していると思います」と強調しました。さらに、「民衆のなかの草の根のたたかいに支えられてこそ平和はつくられるのではないかというのが、私たちが『東アジアの平和構築への提言』に込めた思いです」と語りました。
「一度手を結んだら、離さないように」(清末さん)
(写真)発言する清末愛砂さん
清末氏は、「市民社会の頑張りはまさにそうだと思っていました」と応じ、「平和とか人権というのは公権力から与えられるものではなく私たちが勝ち取ってきた、勝ち取るべきものです」と断言。「その時に、いかに人々が連帯の気持ちを持ちうるか」「一度、この問題に取り組むと決めたら、信頼し手を結び合ったものが手を離さずに関係性を続けていく」ことが必要だと語りました。
清末氏は、核兵器禁止条約にむけた取り組みのほか、南アフリカでの人種隔離政策(アパルトヘイト)撤廃にむけた運動を例に挙げ、撤廃実現は「南アフリカ国内の頑張りと国際社会の大きな連帯活動の成果だ」と話しました。
志位氏は、最近、駐日南アフリカ大使と意見交換したときの話を紹介。南アフリカは、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザに対するジェノサイドに強く反対しており、それは、「アパルトヘイトに反対し撤廃した、南アフリカ人民の歴史に立っているのです」と大使から説明を受けたと話しました。その上で、「アパルトヘイトと同じことを極めて残虐な形でやっているのがガザ危機であり、絶対に許せないという話です」「民衆のたたかいが南アフリカでもあって、それを支えたのは圧政に対する一人ひとりの個人の奮闘であり、それがいまのガザ危機への対応につながっていると思いました」と述べました。
「民衆のたたかいは地下茎でつながっている」(佐々木さん)
(写真)発言する佐々木寛さん
佐々木氏は、核兵器禁止条約の起源をたどると、「1997年の対人地雷全面禁止条約があり、その後のクラスター爆弾禁止条約という軍縮の一定の流れがある」と説明。米シアトルでのグローバル化反対の反WTO(世界貿易機関)デモ、ポルトアレグレ運動などの事例を出し、「社会運動は地下茎でつながっている」と強調。「市民社会はその時は負けたようでも世代を超えてつながっていく。あまり絶望する必要はなく、目の前の問題に人間として取り組むことが次につながる。志位さんの話をきいて改めてそう思いました」と語りました。
志位氏は、「地下茎でつながっているのは本当にそう思います」と応じ、昨年暮れの東南アジア訪問時のベトナム、ラオス両国代表とのやりとりについて話しました。ベトナム戦争時の枯れ葉剤の被害がいまだに続くベトナム、世界の半分の量の不発弾を抱えるラオスとも、残虐兵器という点での苦難の歴史を持つことから、「それが広島・長崎の被爆と地下茎でつながって、連帯の気持ちが強まったことを経験しました」と語りました。
女性の運動と平和
会場参加者からは、ジェンダー平等の視点を据えた安全保障や平和についての質問があがりました。参加者の女性は、1991年に韓国人女性の金学順(キム・ハクスン)さんが、「慰安婦」被害を名乗り出たことから、女性の視点・ジェンダー平等の視点が安全保障の分野に及んでいった経過を振り返り、「女性たちが被害者ではなく運動の主体として力をつけ、連帯が生まれました。ジェンダー平等の視点は、平和をつくるうえでも欠かせないものではないでしょうか」と質問しました。
清末氏は、女性が「運動」の主体となる国際的な流れの「下地」には、70年代に世界各地で展開された女性解放運動があると指摘。「各地でバッシングの波もありましたが、この時に“自分たちが運動の主体になるんだ”と盛り上がった気持ちは、確実に今につながっています。その大きな流れが、国際条約や女性関連の国連文書などにも反映されています。女性たちの運動の成果を強く感じます」と答えました。
清末氏は、女性の自立や権利擁護を求め活動する「アフガニスタン女性革命協会(RAWA)」のメンバーが6月に来日講演した際のエピソードも紹介。「講演の最後に彼女らはこう言いました。『みなさんの連帯は私達にとって世界を意味する』。女性たちが連帯の気持ちを求めて実際に世界を動かしてきたからこそ、非常に苦しい状況に追い込まれているはずのアフガンの女性たちも、声をあげ、連帯することは世界を動かすと確信しているんです」と強調しました。
ジェンダー平等を平和構築の中核にすえていく
志位氏は、党の「平和提言」の最後に「ジェンダー平等を平和構築の中核にすえていく」という決意を書き込んだと紹介しました。
その上で、日本で戦後一貫して女性差別撤廃のために頑張ってきた女性組織の結成の原点は、女性差別をなくすということと平和だと指摘。核兵器禁止条約がつくられた際には、国連会議の議長をエレン・ホワイトさん(コスタリカ)、国連事務次長を中満泉さんが務めたと紹介し、「議長団の中心に女性が座って頑張っておられた。あの条約がつくられた国連会議で女性の姿が輝いていたことを思い出します」と振り返りました。
さらに、「本当の意味でのジェンダー平等社会ができたら、平和な社会になると思うんです」と語った志位氏は、ジェンダー不平等の根っこには、権力的関係―人間が人間を支配するという関係があると指摘します。
「性暴力なども、さまざまな権力的関係をテコに起こってくる。人間が人間を支配するような権力的関係がなくなるような社会――これは根本的には社会主義・共産主義と考えていますが――でこそジェンダー不平等の根もたたれて、本当の意味でのジェンダー平等社会が実現する。そして、そういう権力的関係がなくなる社会は、平和な社会になると思うんです」と主張。ジェンダー平等と平和構築を一体に取り組む決意を表明しました。
「平和をつくる主体として根本的なところに話が及んだ」(纐纈さん)
(写真)発言する纐纈厚さん
シンポジウムの最後にコーディネーターを務めた纐纈氏は、「私が思っている以上に、深い厚みのある、今後、課題としていかなければならない議論が集約された場になった」「大きな政策構想だけでなく、それを支える主体としての私たちがどういう立ち位置にたって平和の準備にまい進しなければいけないのか、非常に根源的、根本的なところまで話が及び、期待している以上の議論ができた」と総括。同時に「日本共産党がこういったテーマで、議長が出てきていただいて非常に胸襟を開いたお話をされた。安全保障や人権の問題など、人間を大切にする党のリーダーとしての志位さんの生身の姿に感銘を受けました」「清末さんからも、非常にアクティブな発言、課題を提供していただきました。佐々木さんもアクティブで若く期待できる平和学者です。こういった方々にどんどん出てきてもらいたいです」と語りました。
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