オーケストラの指揮をしておられる方の講義を聞きました。
I先生とおっしゃる方ですが、音楽大学でコントラバス科を卒業されて、在学中よりオペラ指揮者として各地で研鑽を積み・・・・・ オペラレパートリーも50演目を超え・・・・
要は国内外のオーケストラでいろいろなオーケストラやオペラの指揮をされているすごい人なんです。
楽譜を手に話しておられますが、この話がとてもうまい。 2時間近く話だけで引きずり込まれてしまいました。
白板の絵は、オペラの時にオーケストラボックスは舞台の前の少し低いところにある。 これが高い位置だと、観客から指揮者が邪魔だと言われるので低い位置にあるのですが、指揮者は舞台での演劇を見ていて、たとえば、役者が舞台の上に物を落として、それを拾った瞬間に音楽を始めたりする場面があるので、舞台の床が見える高さにいなければならない、など当事者しか知ら無い様な話をしてくれます。
☆ オペラとミュージカルの違いは?
基本的にはオペラは作曲家の意図を汲んで、それからあまり外れ無い様な演奏をするが、ミュージカルは作曲家よりも観衆のためにという意識が強く、皆に受ける様に曲を変えることもある。
また、オペラでは歌手はマイクを使わない、地声です。 一方ミュージカルではマイクを使う。 ですから、オペラではオーケストラが歌手に勝ってしまうと歌が聞こえなくなるので、少し小さめに演奏するけれど、ミュージカルではアンプで音を増幅しているのでオーケストラも思いっきり大ききな音を出せるし、ドラムなども使う。
☆ 指揮者が行う3本柱は? Art, Entertainment、Education まあこの辺りは省きましょう。
☆ プロフェッショナルとアマチュア: プロはこれで生計を成り立たせている人ですが、ほとんどはどこかに所属して給料を得ているが、指揮活動だけで生計を成り立たせている人は少ない。 この方は指揮だけで生きているプロです。
アマチュアはプロでは無い人なのですが、アマチュアの語源がアモーレで、愛という意味だそうです。 アマチュアはそれを愛している人ということですね。
☆ 「稽古」と「練習」: 稽の意味は知るということで、古い物を知るのが稽古、すなわち先生からちゃんと教えてもらうのが稽古です。 それに対して「練習」は、習ったことができる様に自分で行うトレーニングです。 私は今ギターを習っているので、その通りだと実感しています。
☆ 音を振るな!息を振れ!: この辺りになると難しいのですが、ビックリした時にどうしますか? 息を吸う? 止める? などなど、ビックリのあとで、ホッとして息を吐く、などなど、音楽においても息の使い方が大事なのです。
この後まだまだたくさん指揮そのものの説明も出てきますが、指揮棒を出して、「これ幾らするかわかりますか?」 女の人が10万円と答えたが、私の隣のおっさんは100均で売ってるんとちゃうか? と幅が広い。 1000円ちょっとだそうですが、握りる部分は自分の手に合わせて削っているので握りだけは変えずに、棒だけを差し替えていますと言っていました。
休憩時間
後ろのトランクに楽譜をいっぱい詰めて持ってきてくれました。
オーケストラの楽譜ですから、全パートが載っているので、分厚くて重い。 これはラ・ミゼラブルですね。
指揮棒は安いんですけれど、楽譜は高い。
ベートーベン、マーラー、マイフェアレディーなど、色々見せていただきました。
皆が寄ってたかって色々聞く。 まあ、休憩にはなりません。
私でも楽譜に書き込むのですが、指揮者の楽譜は全パートなのでお玉杓子が小さい。 だから見にくいので大きな字で書き込みしなければ見え無い。 1ページに数小節しかないので、1ページあたり数秒で進むのであっという間に楽譜をめくらなければなら無い。
実際には楽譜を見ながらでは指揮が出来ないのですが、指揮者の本当の仕事は楽譜を覚えて曲を解釈して自分なりの色付けを考えることにあります。 それは演奏の何ヶ月も前から家にこもって孤独な仕事で、コンサートでの派手な場面とは全く異なる真の世界です。 そして、本番前のリハーサルが2〜3回で、本番を迎える。 リハーサルで楽団員が自分の気持ち通り演奏できる様になれば、本番は指揮なが無くても良いぐらいだ、と。 立派なオーケストラならそうかもしれません。
作曲家の作った曲に色付けをする、
この絵に色をつけるというような作業だと。 茅葺の屋根は茶色に塗る、草は? 山は? 季節に合わすだろうけれど、これは人によって違うだろう。 外国人なら屋根をピンクに塗るかもしれない。 日本人にとって、この屋根がピンクならおかしいと思うだろうが、ある意味斬新だ。 などなど、 実際には絵はないので、空中のキャンバスに色を塗る様なものだと。
鉄道模型のレイアウトでいえば、何もないベニヤの上に作図するのが作曲家、それに景色を考えてゆくのが指揮者で、実際に作るのが演奏者だろうか、無理やりこじつけているけれど、レイアウトを作るのはそういうことで、何もないところに景色を作り上げるのだから結構大変なのです。
最後に
こんな楽譜を渡されて、みんなで歌ってくださいとのこと。 知らない曲だがなんとなく歌い出すと、それは棒読みに等しい、音符の長さも音の虚弱も何もついていない、「たとえばきみが〜」と歌う時に「たとえば」と「きみが」は同じ感じじゃないだろう?
「きずついて」は心を込めて歌うだろう。 などなど、いろいろな指摘が有って、数回歌ううちにはそれらしい音楽になってきた。 やはり指揮者は教え方がうまい。
これは歌詞があるので、内容がわかりやすいが楽器では歌詞はない。 メロディーから想像して感情をつけてゆく。 だから、難しいが、逆に歌詞があるとそれに意識が行きすぎて自由に歌えないなどの欠点もある、とか、ギターの練習にとても役立ちそうな内容です。 おっと、こういうことを習うのは練習じゃなくて稽古をつけてもらっているのです。
大昔の写真です。 ロイヤル・アルバートホールです。
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