なぜ、ロシアは、現実の読みを誤ったのか・
日本で得るニュースは、90%が西側よりであるため、理解不足が生じる可能性がある。今回は、NATO側とロシア側を比較考察するのではなく、情報整理としては世界をリードするロシアが、なぜ下手を打ってクルドサックに入りこんだか、その状況を解説する。
ロシアは、NATO側を軽く見たわけではないが、生活権の基礎であるガスは、ロシアパイプで欧州に送られている。NATOの中核であるドイツには、完全に生活権を危うくするガスのストップは、鬼門であり、ロシアには逆らえない情勢下にあるとロシアの首脳部は、考えていたのだろう。NATOの団結はありえないと解釈していたのだ。ところが、ウクライナがロシア侵攻をくい止め、犠牲を出しながら強い抵抗と戦線を強化しているところから、ヨーロッパ全域に反ロシア団結が出来上がり、隣のフィンランドですらスエーデンとともに、NATO加盟を申請するというロシアにとっては、考えてもいなかった情勢が起きている。その予想が掴めなかったのであろう。これもまた、ロシア首脳部、プーチン側の大きな判断誤りがあったのは間違いない。世界から見ても、経済動向が互いに停滞し活動が停止すれば、想像を超えた不況が来るのは、当然であろう。ロシアの読みの違いは、同盟関係に近い中国が一歩を足を引いて、ロシア側に寄り添った言葉は現在乖離している。このロシア侵攻によって、中国にとっては、台湾侵攻が近いと言われていたが、一歩下がった政策を考えざるを得ない状況になったといえる。ロシアのもうひとつの読みの間違いは、NATOをはじめウクライナを援助する各国家の軍事が、進歩していたという過程を読み切れなかった点にある。ウクライナの反転攻勢はサルジニー最高司令官が指摘するように、占領された地域を奪還している点から、ウクライナの軍事力を軽視していたロシアがある。
ロシアの読み違いは、大ロシアを普通のロシアにおとしめた重い侵攻のつけが回ってきて、NATOの全盛時代を迎えるかもしれない。核を使えば、勝利者も敗者もなく、世界は消滅、人類は終わりを告げる、まさに危険を超えた悪魔の戦争になってはならない世界がある。
日本時事新聞社
論説 委員 古賀剛大