産後というのは、ものすごく大変だと思います。
何が大変って、生活の全部がひっくり返るくらいの大変さだと思います。
まずは出産で痛めつけられた体に鞭をうっての授乳。3時間おき。母乳とかミルクとかはどちらでも。睡眠時間が仮に細切れで足し合わせて6時間とかとっていても、それで足りる気がしません。寝たい時に眠れない苦痛は人生でそう味わうものではありませんから、なかなかしんどいですよね。
ちなみに私は今も夜中に痛みで起こされていますけれども、眠れない、起こされる、ということが自分の体の不調からくるものと、赤ちゃんのタイミングで起こされるのとは違う気がしています。やっぱり人のタイミングで起こされる方がしんどいかなあと。
こうしたお世話の大変さは言わずもがななのですが、何より大変なのは生活の変化かなと思います。
大人の生活だと、夜遅くまで起きているのは当たり前ですし、夕食の時間とか18時はいくらなんだって早い。残業とかして帰宅すれば一体何時になることやら。そのくせ朝は遅かったりして、5時に起きようものなら「漁にでも出るのかね?」とか「歳をとったものだ」とか、今考えれば大変失礼なことをサラリーマン時代は言っておりました。
ところが、子どもが生まれるとそうはいかない。外が明るくなれば赤ちゃんはピカッと起きちゃったりするわけで、親の方も夜も8時になればだんだん眠くなってくるのです。23時にご飯を食べていたあの頃は一体なんだったんだろうと思うのですが、最初の衝撃は半端ないわけです。こんな子どもっぽい生活なんていやだーみたいに。
今は人間の本当の生活はそもそも太陽があるうちが活動時間だよなあ、なんて思ったりして、今はむしろ大人の生活の方が異常に感じるくらいです。照明焚いて夜に活動し、朝日を遮って寝る、よく考えたらとても変です。
でも、そういう生活にすっかり慣れていたので、衝撃半端なかったです。
私の中で、最大の衝撃は「なんて無駄な時間が多いんだ」と思ったことでした。
赤ちゃんにミルクを飲ませ、おむつを替えて、よいよいとあやしながら寝る、文字にしたらたったこれだけのことが1時間とか2時間とかかけて行われるわけですね。それが3時間おきって、要するに1日5時間とか、子どもをよいよいと抱っこし続けるのです。それが毎日。休みなく。隙間時間で自分磨き、なんて啓蒙されていた私からしたら、なんとまあ無駄な時間なんでしょうと思ったのです。その無駄な時間を過ごすことが耐えられなくて、本当に辛く感じました。
寝かしつけはバウンサーに任せれば、とか、ベットに転がしておけば泣き疲れて寝る、とかいろんなことを聞いたし、言われたし、実践している人もできる人もいるのは知っています。
でも我が子はだめでした。電動で動くベットみたいなものがあるのですが、それは子どもがすやすや寝るので神さまみたいなベビーグッズだと言われ、勇んで購入していました。ところが我が子の場合には、全くの真逆。「こんなところに寝かせるんじゃないわよー」と言わんばかりにどんどん泣き声が大きくなっていくのです。「こりゃだめだ」と私も夫も母も大変にがっかりしました。無用の長物と化したお高いベットはオムツ替えのグッズおきになるという有様。
何よりがっかりしたのは、子育てにセオリーとか絶対というものがなくて、本当に人それぞれ、模索しなければならないということでした。初めてのことで戸惑いばっかりなのに、試してみてダメということがこんなにあるのか!という衝撃は結構ありました。
そして、こうした肉体的にも精神的にもドラスティックな変化をもたらされる「産後」。
これだけでも大変なのに、ここに看病をしなければならない「病人」が出現したらどうなるでしょうか。。
核家族の場合だと、家庭内の出来事だと
赤ちゃん-1、母親+1、父親外で仕事なので±0、となります。
これに加えて家事-1、という側面がありますから、ワンオペ育児だと無理が生じてしまいます。
ここで母親がマイナスになったらどうなるか。
ダブルの衝撃なんですよね。
あてにしていた戦力が失われるどころか、とんでもないお荷物になる。
もう、死んだ方がマシに違いないわけです。子どもを守るためには、自分がいなくなるべきなんです。
歪んだ思考に思うかもしれませんが、実際問題そうだから、仕方ないとも思うんです。
産後に母親が病気になるというのはそれだけの衝撃で、家庭にとっては崩壊する以外に方法がないレベルのダメージだと私は考えています。
これこそ地獄。
自殺する母親が後を絶たないわけのひとつに、こうした構造があると思います。
男性が育児休暇を取ればいいとか、お母さんをサポートすればいいとか、何か単純ではない何かが転がっているような気がしてなりません。
子育てしやすい社会って、何なんでしょうね。
朝日が登ったら起きて、夕日が沈んだらおやすみする、そんなところからはじめるのも大事なのかもしれませんね。