2020年1月23日付け十勝毎日新聞(22面)「土論 耕興」欄に、以下の記事が載っていた。
【古賀茂明 元経産官僚】
『最近大きな話題になっているオーストラリアの森林火災。日本の国土の4分の1を超える11万平方キロメートルが焼け落ちたという。日本は温暖化について無関心だが、地球温暖化は、すでに「危機」レベルで、直ちに行動すべきだというのが世界の共通理解だ。
欧州連合(EU)は2050年までに二酸化炭素純排出量ゼロを目指す「クリーンニューディール」計画を発表した。
温暖化対策で先進7カ国(G7)のリーダーであるドイツでは、昨年1年間の発電量で風力・太陽光・水力・バイオマスなどの再生可能エネルギーがシェア46%で、初めて石炭・液化天然ガス(LNG)の化石燃料発電の40%を上回った。
同国は褐炭の大規模生産国で、石炭火力の依存度も極めて高いが、原発ゼロを掲げつつ、さらに石炭火力の38年全廃という大胆な計画を立てた。ただし、石炭産出地域対策が必要で道のりは険しい。
温暖化との関係で、大きな脅威となるのが、今世紀のもう一つの流れである急速なデジタル化による「電力需要の爆発」だ。
AI(人工知能),LOT、5Gなど聞きなれない言葉や自動運転などに共通する言葉が「データ」である。人と企業が生み出すあらゆるデータを収集、分析して新たなビジネスにつなげる過程では、膨大な電力を消費する。
一方、これらの大きな「課題」は、北海道にとっては追い風になる。私が住む東京近郊は、夏は暑すぎて、もはや住むところではない。移住促進策なしでも、東京都民が「ぜひ北海道に住まわせてください」と言ってくる時代は目前だ。本州のスキー場における雪不足もさらに頻度を増し、北海道のスキー場には追い風となる。
再エネの価格は劇的に下がっている。北海道は一足先に石炭産業から脱皮しているので、心配することなく再エネを拡大できる。電力を本州などに「輸出」して稼ぐという話が実現するだろう。
また、「データ資本主義」を支えるデータセンターは、大量の熱の冷却が必要で、これから寒冷地での立地が進む。ただ、一つ気になることがある。北海道電力の泊原子力発電所の再稼働だ。
アメリカのある富豪は、友人5人と北海道で莫大な土地を購入したが、泊原発再稼働の話を聞いた友人たちがそんな危ないところに投資させたのは詐欺だと怒ったので、仕方なく、彼らの持ち分を全部買い取った。泊原発は、世界の企業にとって大きな投資リスクだ。
異常気象で、世界にいつ食糧危機が来るかわからない。日本の食料基地である北海道の重要性はさらに高まるが、万一、少しでも放射能が漏れたとなれば、北海道に風評被害が広がる。福島の二の舞を避けるためには、原発など動かしてはいけない。
原発を止めて、再エネ100%を目指せば、電力料金も長期的には下がる。北海道の食の安全は完ぺきなものとなり、より多くの観光客が安心して訪れる。世界の投資も引き付けることになるだろう。
今年こそ、原発を止めて、世界中があこがれ、尊敬する「自然とともに生きる北海道」の道にかじを切る年にしてはどうだろう。』
「十勝の活性化を考える会」会長
※北海道:日本の面積の22%(5分の1)、人口約4%(現在20分の1)。