小オキキリムイが自ら歌った謡
「この砂赤い赤い」
Pon Okikirmui yaieyukar,
“Tanota hurehure"
〔この砂赤い赤い〕
ある日に流れをさかのぼって遊びに
出かけたら,悪魔の子に出会った.
いつでも悪魔の子は様子が美しい
顔が美しい.黒い衣を着けて
胡桃の小弓に胡桃の小矢を持っていて
私を見ると,二コニコして
いうことには,
「小オキキリムイ,遊ぼう.
さあこれから,魚の根を絶やして見せよう.」と言って,胡桃の小弓に胡桃の小矢を
番(つが)え水源の方へ矢を射放すと,
水源から胡桃の水,濁った水が
流れ出し,鮭どもが上って来ると
胡桃の水が厭なので泣きながら
引き返して流れて行く.悪魔の子は
それを二コニコしている.
私はそれを見て腹が立ったので
私の持っていた,銀の小弓に銀の小矢を
番え水源へ矢を射はなすと
水源から銀の水,清い水が
流れ出し,泣きながら流れて行った
鮭どもは清い水に元気を恢復し
大笑いをして遊びさわいで
パチャパチャ川を上って行った.
すると,悪魔の子は,持前の癇癪を
顔に表して,
「本当にお前そんな事をするなら,鹿の根を絶やして見せよう.」と云って,
胡桃の小弓に胡桃の小矢を番え
大空を射ると,山の木原から
胡桃の風,つむじ風が吹いて来て
山の木原から,牡鹿の群は別に
牝鹿の群はまた別に,風に吹き上げられ
ず~っと天空へきれいにならんで上って行く.悪魔の子は二コニコしている.
それを見た私はかっと癪にさわっだので
銀の小弓に銀の小矢を
番えて,鹿の群のあとへ矢を射放すと,
天上から,銀の風,清い風が
吹き降り,牡鹿の群は
別に,牝鹿の群はまた別に.
山の木原の上へ吹き下された.
すると,悪魔の子は
持前の癇癪を顔に現し,
「生意気な,本当に
お前そんな事をするなら,力競べをやろう.」と云いながら上衣を脱いだ.
私も薄衣一枚になって
組み付いた.彼も私に組み付いた.それからは互に下にしたり上にしあったり相撲をとったが,大へんに悪魔の子が力のある事には
驚いた.けれども,とうとう,ある時間に,
私は腰の力,からだの力を
みんな出して,悪魔の子を
肩の上まで引っ担ぎ,
山の岩の上へ彼を打ちつけた音が
がんと響いた.殺してしまって地獄へ
踏み落したあとはしんと静まり返った.
それが済んで,私は流れに沿って帰って来ると,川の中では鮭どもが笑う声
遊ぶ声がかまびすしくのぼって来るのが
パチャパチャきこえる.山の木原では,牡鹿ども,牝鹿どもが笑う声
遊ぶ声がそこらいっぱいになって
そこにここに物を
食べている.私はそれを見て
安心をし,私の家へ
帰って来た.
と,小さいオキキリムイが物語った.
chopopatki,kenashso kata
apkautar momanpeutar wenminahau
wenshinothau ronroratki,
taanta toonta ipeshirkonna
moinatara. Chinukar wa
chieramushinne chiunchisehe
chikohoshipi.
ari pon Okikirmui isoitak.
「十勝の活性化を考える会」会員 K
写真提供:「十勝の活性化を考える会」会員 S
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