支所という出先機関で仕事をしていると地域の人たちからさまざまな相談を持ちかけられる。
今日は、隣の介護施設から、昨夜、奇声が発せられて眠れなかったという相談だった。
「何夜も続いているのですか」という問いかけに、「昨夜だけです」という返答。
「何日も続けば直接言いに行くのだけども...」という言葉が続く。
母親の時のことを思い出す。
「恐らく、認知症か末期癌の方かもしれませんね。どうでしょうか、二、三日様子をみていただけないでしょうか。
それでも、続くようなら私の方で施設に直接お願いするか、担当課に相談してみますから」と提案する。
そして、私の名前と電話番号を書いた紙を渡し、「続くようでしたら、電話で結構なので連絡をいただけますでしょうか」とお願いする。
とりあえずは納得してもらい帰っていただいたが、気になったので地図で施設を調べ、その施設を伺う。
恐縮しながら、「すみません、地域の方から昨夜、この施設から奇声が聞こえて眠れなかったという相談があったのですが、どのような状況だったのでしょうか」と訊ねる。
担当の方が出てこられて、「すみません、昨夜、怖い夢を見られたおばあちゃんがいて、その方だと思います。今後は気をつけます。また何かありましたら、いってください」と丁寧な対応をしていただく。
職場にもどりながら、母のことを思い出す。
末期の時に、私の母もうなり声を上げ、入居者の方々に随分と迷惑をかけた。
そんな経験があるだけに、つらい役目だった。
支所がそこまで対応する必要はないのかもしれない。
でも、眠れないといってこられた方は、実はその裏に今回だけじゃないんだという悲痛な思いが蓄積している可能性がある。
それだけに簡単に扱えない。
私たちは、どうでもよいことに常に真摯に、迅速に向き合っておかねば、拗(こじ)れたり、爆発してからでは遅すぎることをたくさん経験してきた。
現場では、様々なことが起こっている...