とうちゃんの実家がある田舎町は、
庚申様の桜の木問題でもめています。
先日、町内会がらみのえらくくだらない
用事で一時帰宅させられた際、
町内会(うちの田舎では「組合」と呼称)
の会計係を引き受けてくださっている
K林さんから報告を受けました。
とうちゃんは、住んでるわけでもないのに
組長というお仕事を引き受けているので
地域の問題がいちいち耳に入るんです。
庚申様というのは地域の神様ですね。
道端に何体かのお地蔵さまが並んでるん
ですけど、そこの敷地の桜の木が、
裏のM本さんちの庭に入り込んでるので
何とかしなければ、という話です。
「誰かチェーンソー持ってるでしょ、
借りられれば俺が切りますよ」
って言ったんですけど、
K林さんが神妙な顔していう事には
「いえ、問題は、そういう事ではなくて
ですね、あの木を切るとタタリがある
らしいんですよ、それでみんな頭
悩ませちゃってて……。」
「は?」
「八つ墓村」とか「もののけ姫」の話し
してるんじゃないんですよ。
「タタリ」という言葉を、日常生活に
根差した現実の問題として話したり
聞いたりした人っていますか?
昭和通り越して大正時代だよ。
ところが、
「前回、枝切った時は三人死んだんだ
そうです、人の想いが何百年と重なって
きてるわけですからねー……」
とか言っちゃって、K林さんはびびり
まくるし、O川さんは、
「みんなで一回づつのこぎりを引こう」
とか変な決意を込めた顔で言い出すし、
……おいおい。
で、とうちゃんは、
「まあ、M本さんが困ってるんなら
ほっとけないけど、そこに桜の木が
あるのを承知の上で引っ越して来た
んだから枝払うだけで勘弁してもらい
ましょう、気にする人がいるんなら
組合費で拝んでもらってもいいし」
って、真ん中取ったまっとうな意見に
落ち着けようとしたんですけど、
「いや、あの桜の木はM本さんが
引っ越して来た後に、N村さんの
ばあさんが勝手に植えたんだ」
って情報がもたらされ、なんだよ、
だったら何百年も想い重なってねーよ。
つーか、N村さんちの孫に切らせろ。
って話ですよ。
なのに、またもや神妙な顔したK林さんが
「では、この問題は新年会のときに改めて
みんなで考えましょう」
なんて、言うから
「そーだねー、それがいい」
「それがいいよ」
「そーだそーだ」
ってなって、
「では新年会をどこで開くか打ち合わせしましょう。
組長、次いつ来られますか?」
って流れで、また近々群馬に戻らされるんですよ。
これタタリかな。