勃ちあがった象の白い涙の物語

ロックンロールにゃ老だけど死ぬにはチョイと若すぎる

最近読んだ本

2019-10-20 03:03:37 | 書籍
(本文と写真との間には、何の関係もありませんし、何の意味もありません)

「天才」石原慎太郎
ちょっと以前に、田中角栄再評価ブームみたいなものがあったが、そのきっかけになった本。
面白いことは面白かったが、正直、あまり目新しい内容はなく、そういう意味では、あのタイミングで書籍化する意味があったのかどうか、疑問が残る。


「誰か Somebody」宮部みゆき

宮部みゆきは、ストーリーテラーとしては超一流であると思う。
彼女の作品は、何作か読んだが、総じてハズレという感じがするものがない。
この作品も、彼女の作品としては、あまり有名なものではないと思うが、それでも十分に楽しめる。


「寝ずの番」中島らも
映画化もされた作品ではある。
正直、表題作は面白い、しかし、その他は、イマイチである。
その表題作の面白さも、落語的な面白さであって、小説としては、どうかな、と思う部分はある。


「早雲の軍配者」「謙信の軍配者」富樫倫太郎
川中島の戦いを描いた「謙信の軍配者」は面白い。しかし、「早雲の軍配者」はイマイチな内容である。
ただ、困るのは、この「早雲の軍配者」を読まないと「謙信の軍配者」の人間関係が分からない部分があることである。
「謙信の軍配者」は、歴史上有名な川中島の戦いの第一次から第四次までを描いた作品で、元の素材となる川中島の戦いじたいが、かなり物語としての面白い要素を含んだものだけに、このことをエンターテイメントな要素を含んで小説化すれば、それなりに面白くなるのは当然だとは思うが、やはり、面白くよくできた小説であるとは思う。


「しゃべれども しゃべれども」佐藤多佳子

何でも「本の雑誌が選ぶ年間ベストテン」第一位になった小説らしい。
確か、ドラマ化もされていたように記憶してる。
話としては、やはりそれなりの内容があるものではある。
強いて言うなれば、語り口が、江戸落語調の語り口になっていて、個人的にはそれがすごくいい感じに思えたのだが、一般的には、これを嫌う人もいるんじゃないかな、と思わないでもない。


「信長の血脈」「信長の棺」「秀吉の枷」加藤廣

「秀吉の枷」は面白い。
個人的には、豊臣秀吉には、優秀な官吏で、(信長に比べればだが)あまり残虐なこともしない、どちらかというといい人というイメージのある信長の一武将時代と、それに比べ、天下人になってからは、同じ人物とは思えないほど残虐で嫌な奴というイメージを持っていたのだが、この小説の秀吉像は、そんな個人的なイメージに近いものがあって、なぜそうなったのかも、割と納得のいくかたちで説明されている。
また「信長の棺」は、正直、話の内容としてはイマイチながら、世間一般に思われている冷酷で残虐一辺倒の信長像とは、また違った姿が描かれていて、これも、個人的に思っていた信長像に近いものがあったので、そういう意味では、すこし楽しめたかな、という感じである。
一応、同一作者の同時代を描いた小説ということで、この三作には共通した歴史認識があり、そういう意味では、三作とも読んだほうが、理解は深まるし、楽しめる部分はあると思うが、個人的には、面白かったのは、「秀吉の枷」のみではある。


「闇の子供たち」梁石日
幼児売春、臓器売買などを題材とした小説。
一応、小説であるだけにフィクションであるのではあろうが、ここに描かれた世界観は、全くの作り話ではなく、真実、今も世界で起こっていることなのであろうと思われ、それなだけに、考えさせられるものはある。


「影法師」「プリズム」「モンスター」百田尚樹
最近は、すっかり右翼的なコメンテーターとしてのイメージが定着しつつあるように思う百田尚樹だが、現在の日本において、最も売れる作品を世に送り続けている作家である。
百田尚樹の小説というと、「永遠の0」があまりに有名であり、そのイメージで他の著作を手にすると、その世界観が違うだけに、ちょっと戸惑うかもしれない。
しかし、非常に豊富な知識や情報に基づいて、丁寧でキチンとした文章で書かれていて、どの作品も、それぞれに読みどころがあって、楽しめるものになっている、と思う。
ちなみに「影法師」は時代物、「プリズム」は多重人格者との恋愛もの、「モンスター」は整形を題材とした復讐もの、とそれぞれ世界観はバラバラだが、どれも、それなりの面白い。
個人的には、この3作のなかでは、「プリズム」が、一番、楽しめた。
古くはジキルとハイド氏の話があるように、多重人格そのものは、題材として、決して目新しいものではないが、それを、こういう形で悲哀の恋愛ものにしてしまうところが、すごく面白く、楽しめた。





「逆説の日本史」 井沢元彦

2019-06-23 04:46:08 | 書籍
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私は、自他ともに認めると思っている、歴史好きである。
歴史というと、学校の授業においては、とにかく年号や出来事を丸暗記させれる印象があり、あまり好きでないという人も多いと思うが、個人的には、歴史を、そういう暗記物として考えたことはなく、どちらかというと、物語を楽しむような感じで捉えていた。
こういうことを言うと、物語の展開としては、史実がキチンとあるわけで、それは変えようがなく、それ故に結末もすでに知ってしまっているわけで、そういう結末が分かってしまっている物語の何が面白いんだという声が聞こえてきそうだが、確かに、そういう部分はあるにはあるが、なぜ、その史実が起こったのかという解釈というか原因については、それは、人ぞれぞれなわけで、そういう面白みがあるわけである。

この「逆説の日本史」は、そういう史実が発生する原因を、怨霊や言霊への信仰などから解説しているもので、今の我々の目線や資料ともいうべき古典に書かれている内容だけに頼っていないという点で、なかなかに興味深いものがある。
たしかに、当時の人が何をどう感じ考えていたのを無視して、その行動を分析しようとするのは、あまりに無茶な話で、分かりやすい例でいえば、バブルの時代の人々の行動は、株価や土地価格の上昇といった経済面だけからの分析では不十分で、やはり、あの時代の雰囲気というか空気が分かっていなければ、きちんと理解できないものだと思う。
そういう意味で、この当時の人々の信仰や信じていた物事の側面からも歴史の出来事を分析するというこの著作の内容は、ある意味、かなりの評価に値するものだとは思う。

ただ、何でもかんでも怨霊や言霊のせいにして解説してしまう傾向があるのも事実で、はっきりいって、この出来事は、その視点から分析するのはちょっと違うんじゃないか、と思うようなところもあるにはある。

失業中に読んだ本

2019-05-08 02:21:48 | 書籍
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失業中は、割と暇な時間があったので、かなりの本を読んだ。

中でも面白かったのは、万城目学のもので、「鴨川ホルモー」と「鹿男あをによし」は、かなり面白かった。この2冊は、はっきりいっておすすめである。しかし「プリンセス・トヨトミ」は、さほど面白いとは思わなかった。ただ、これは、本を読む前に、これを原作として映画化されたものを見ていたせいかもしれない。映画と原作では、ストーリー的にはさほど変わらないのだが、映画に出演していた役者のイメージが頭に残っていて、純粋に作品を読んで楽しむということができなかったのではなかろうか。とはいっても、この作品が、全然ダメかというとそういうわけでもなく、映画のイメージが邪魔したのと、「鴨川ホルモー」と「鹿男あをによし」と比較するとイマイチだっただけで、それなりには楽しめたと思う。
しかし、「ホルモー六景」は、まったくのダメダメだった。はっきり言って、「鴨川ホルモー」はそれだけで完結させるべきで、この作品は、余分にも程があると言える。

和田竜の「村上海賊の娘」も、かなり面白かった。さすがに本屋大賞と吉川英治文学新人賞をダブル受賞しただけのことはあると思う。歴史好きの私としては、そこまで史実を捻じ曲げちゃマズイだろ、というところもあるにはあるが、そこは物語なので大目に見るとして、文庫本にして全4巻を、一気に読んでしまうような面白さに溢れた本だと思う。

宮部みゆきの「ぼんくら」は、始まりはイマイチな、それでいて何か消化不良を起こしそうな短編っぽい感じであったが、そういった内容も包み込んで進行していく中盤以降は、かなり面白く読み進むことができた。
さすがは、宮部みゆき。的は外していないな、という感じである。

一方、本当にイマイチだったのが林真理子の「白蓮れんれん」で、柴田錬三郎賞受賞作ということで期待が大きすぎたのか、一気に読むには、かなり厳しいような印象が残る作品で、個人的には、あまりうまく話がまとまっていないような感じがした。

そういう意味では吉川英治の「新・平家物語」も、あまり話がうまくまとまっていない印象を受けた作品で、おまけに、これは、文庫本にして16巻もある大作だけに、振り返ってみれば、よく読破できたな、という印象すらある。吉川英治は、以前に「私本太平記」を読んだことがあって、それも、あまりうまくまとまっているとは言えないような内容だったが、結構、面白く読み進むことができたので、それを期待してのことだっただけに、少し残念である。平安時代末期の平家の台頭から鎌倉時代初期の奥州藤原家の滅亡までというのは、ひょっとすると、物語としては長すぎたのかもしれない。

新海誠の「小説 君の名は。」は、もちろん、あの大ヒットアニメ映画のノベライズになるのだけれど、残念ながら、私は映画のほうは見ていないのだが、それがためか、結構、楽しめた。男女の心と体が入れ替わるという話は、大林宜彦監督の「転校生」からある、よく使われる設定ではあると思うのだが、この話は、それにちょっと一ひねり加えてあって、なかなかに楽しめる。
幾分、クライマックスが、いかにもアニメ的ではあって、少し小説として楽しむにはどうかな、と感じさせるものはあるが、それを差し引いても、面白い小説だと思う。

他にも、司馬遼太郎のものを何冊が読んだが、「覇王の家」と「菜の花の沖」はつまらなかった。特に、「菜の花の沖」は、途中で読むのをやめてしまったくらいだ。

「深い河」遠藤周作

2019-05-05 00:16:36 | 書籍
失業中、本はかなり読んだ。
なんだかんだ言って、失業中は暇なことが多いのだが、とはいえ、再就職の相談で支援会社の人に会ったり、もちろん、応募先の企業の調べモノや面接なんかで、想像していたよりはバタバタすることが多いように思うのだが、読書となると、自分のペースで読み進めることができるし、何より、安上がりなのがいい。
そんな中、最も印象に残っている本は、遠藤周作の「深い河」である。

遠藤周作というと、私的には、クリスチャンであり、その手の著作が多いという印象がある。
この本も、そのクリスチャンであるという素質がなければ書けないような内容ではあると思うのだが、勘違いしないでいただきたいのは、これは、人間の宗教観に関する話であり、けっして、キリスト教だけに限定された話でない。
また、よく日本人は、そのほとんどが無宗教であると言われるが、そんな日本人だからこそ、深く印象に残る作品ではないか、と思う。


梅原猛の『歎異抄』入門

2016-10-02 08:07:50 | 書籍
TVなどでは無責任男のキャラクターを演じていた植木等であるが、彼は元々は寺の住職の息子で、そういう生活環境で育ったせいか、本当は非常に真面目な性格の人間であったらしい。
それだけに、彼の代表曲ともいえる「スーダラ節」の、そのあまりにふざけた内容に、当初は、歌うことをためらったそうである。
ただ、「スーダラ節」を聞いた彼の父親である住職が、「わかっちゃいるけどやめられない」という歌詞の部分に、親鸞聖人の教えに通じるものがあると諭され、歌うようになったという有名な話がある。
振り返ってみれば、私も日々の生活の折々に、この「わかっちゃいるけどやめられない」行為を、多々、犯してしまっている。
電車に乗れば我先に空席目指して進み何とかして座ろうとするし、買い物に行けばきれいに陳列されている商品の3列目4列目のものを手に取ってしまったりするし、ごく稀に、タバコの吸殻をポイ捨てしてしまったりもする。
それぞれ、本当はいけない行為だとは知りつつ、さほど大したことではないし、ましてや犯罪になるようなことではないと思いながら、ある意味、確信犯的な心境でやってしまう。
不勉強なので、詳しくは分からないし、本当のところはどうなのかも知らないし、間違っている可能性は高いのだが、浄土教の教えの真髄は、「南無阿弥陀仏」と唱えることで、「極楽浄土」に往生できる、ということだと思っている。
特に、親鸞を開祖とする浄土真宗においては悪人正機説をとなえ、悪人こそ救われると説かれている。
もし本当にそうならば、何の反省もなく「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで「極楽浄土」に行けるならば、どんな悪人も悪人のまま「極楽浄土」に行けることになり、「極楽浄土」には、そんな悪人がそのままの心持で存在していることになる。
極端な話、あの麻原彰晃もヒトラーもその生前の考えのまま、「極楽浄土」に往生できるわけであり、そこまで極端でなくても、世の中に数多存在する性格の悪い奴や嫌な奴がそのまま存在するような世界は、それを地獄だとまでは思わないが、今の世とまったく変わることのない世界で、とてもじゃないが、「極楽浄土」と聞いて想像するような、心穏やかに過ごせる楽園の様な場所とは思えない。
ただ、ある意味、そういう罪深い人々も含め、諭し許される、そういうおおきな愛の様なものは感じることができる。

思えば、キリスト教においては「懺悔」という、反省することで罪を許す、というようなものがあるが、日本の宗教である神道や仏教においては、そういう概念は希薄なんじゃないか、と思っている。
絶対に許されたり救われたりできないような、とんでもなく大きな罪というのは存在するとは思うが、我々が常日頃に犯してしまう小さな罪までもが許されないとしたならば、それはあんまりなことではあるし、そういうものを救うことが、ある意味、宗教の役割のひとつなんじゃかいか、とも思う。

だから私は、そんな日々の生活と罪を折に触れ反省することもあるのだが、そんな時に「南無阿弥陀仏」とつぶやくようにしている。
こんな念仏を唱えただけで罪が消えるとは思えないが、これらの行為を許してもらえるならば、と思い、思わず「南無阿弥陀仏」と唱えてしまうわけである。


「私本太平記」 吉川 英治

2016-07-23 08:33:34 | 書籍
あまりテレビや映画の題材として取り上げられることはないのだが、この鎌倉幕府末から南北朝の時代は、メッチャクチャ面白い。
この太平記は、一応、足利尊氏を主役としているが、彼以外にも、後醍醐天皇、北条高時、新田義貞、楠正成、佐々木道誉など、出てくる人物誰も彼もが魅力的で、それぞれを主人公にしても、また違った物語ができそうである。

しかし、改めてこの小説で、足利尊氏という人物を検証してみると、足利幕府の創始者であるが、とてつもなくとんでもない人で、この人の行動がいちいち世の中を混乱に起こすだけ起こしているし、おまけに、それらの混乱に何の解決策を見いだせないまま死んでしまう。
戦前は、国賊として悪者扱いされてきた足利尊氏であるが、その評価は、皇国史観という観点からのものであることを大とするのだが、それを除いても、本人に何の悪気がなかったにしろ、これだけの大混乱を次々を引き起こしたという事実だけで、非難されるに値する人物ではないか、と思う。
なのに、紛いなりにも室町時代の創始という偉業を成し遂げたのだから、歴史というものは、皮肉で面白いものである。

「加筆完全版 宣戦布告」 麻生 幾

2016-02-22 01:34:06 | 書籍
話としては、決して面白いものではない。
北朝鮮のゲリラが日本に侵入し、原発を狙うと言う設定自体はいいのだが、話の展開やもっていき方がイマイチだし、場面を次々に変えていく手法は、緊張感を感じさせることを狙ってのものなのだろうが、そのせいで、説明が中途半端になってしまっている。

それでも、この本は、多くの日本人に読んで欲しいと思う。

ゲリラが侵入するという、国民の生命の危機すら感じさせる状況ですら、自衛隊は、出動できない。

昨年、安保関連法案の改正が行われたとはいえ、状況は、この本に書かれるものと、本質的には変わらないのだろう。

はっきり言って、今の日本の状態は、いくばくかの国民の生命や財産が、他国によって奪われるような状況になっても、それに対する行動が取れないような法律になってしまっている。

このことは、われわれは深く考えなければならない。

この本を読んで、私は、そう思う。

「本能寺の変 431年目の真実」 明智 憲三郎

2015-09-06 01:43:24 | 書籍
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確か、本能寺の変を起こした張本人である明智光秀の子孫が書いた本ということで、一時、すごく話題になった本である。

私個人が歴史好きなだけに、結構、面白く読めた。

ただ、この本で何らかの新説に出会ったかというと、そういうわけではなく、この本で唱えられている説そのものは、以前、どこかで耳にしたものばかりである。
また、歴史捜査という、発表当時は新しかったであろう概念を持ち出していたりするが、やっていることは、昔からの歴史の検証作業そのものだったりする。
おまけに、一方でその資料としての価値を否定している書物に対して、一方では、自分の論を裏付けるための材料にしている部分があるなど、その一貫性に無さが気になったりもする。

「ウルトラマンの愛した日本」

2015-07-09 05:47:04 | 書籍
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どうしようもなくつまらない本である。
はっきりいって、時間とお金をもてあまして、ドブに捨てたいと言う人だけにおすすめする。

まず、ウルトラマンタロウ(著), 和智正喜(翻訳)というのがふざけている。
で、本の内容が、このふざけた著作者と翻訳家にふさわしいふざけたテーマの内容かというと、実はそうではなく、ウルトラマンシリーズで描かれた世界観を元に、その時々の社会を論じると言う、わりと真面目な内容だったりする。
正直、テーマ自体は面白いし、ちゃんとキチンと踏み込んで論じれば、それなりに読み応えのあるものになったのだろうが、踏み込み方が中途半端で軽薄だから、なんのこっちゃ、というような内容でとどまってしまっている。

この内容で書籍として販売するなんて、はっきりいって、世間を舐めないでほしいものである。

「永遠の仔」 天童荒太

2015-06-22 00:51:20 | 書籍
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話の内容は、すごく面白い。
テーマには重みはあるし、最後のどんでん返しもナカナカだし、ストーリー展開も面白い。

でも、でもである。

はっきりいって長すぎる。

それなりの厚さの文庫本にして5冊は、あまりに長すぎる。
読み終えてみれば、その部分のエピソードは、本当に必要だったのかな、とか、長すぎてタルいな、と思う部分がある。

作者自身もそれなり力を入れて書いたようだし、作家として特別な作品であると思っているだし、そういう思いを託すことが出来る作品だというのは、十分に理解できるし、それに見合うだけの内容のある本だと思うのだが、なんせ、長い。

「炎立つ」 高橋 克彦

2015-05-02 03:52:06 | 書籍
かなり以前の大河ドラマの原作となった作品。
世界遺産となった奥州平泉を作り上げた奥州藤原氏の始まりと終わりを描いている。
ちなみに、その奥州藤原氏の始まりと言うのは、前九年の役と後三年の役で、終わりというのは、源頼朝による奥州合戦である。

作者の高橋克彦と言う人は、今の東北に住んでいて、非常に東北びいきな人のようで、この作品にも、そういう傾向はよくでている。
特に、前九年の役に関しては、それまで奥州を支配していた安部氏が源氏によって滅ぼされる戦なのだが、資料としてキチンとした物がほとんど存在しないという事情もあって、そのぶん、作者の想像で物語を作り上げる余白が多々存在することになるのだが、それをいいことに、安部氏を滅ぼす源氏がまったくの悪役として描かれている。
それだけに、キチンとした史実はともかくとして、その史実が発生した事情なんかをこの本で理解しようとするのは、かなり無理がある話だとは思うのだが、まぁ、それなりに辻褄は合っている。

正直、この長い物語の中盤まで、後三年の役までは、かなり面白く読めた。
しかしながら、後半の奥州合戦にいたる部分は、そういう作者の東北びいきの部分が、かなり強引に感じられる部分があって、ちょっとなぁ、という思いがしないではない。

「えてこでもわかる 笑い飯哲夫訳 般若心経」 笑い飯哲夫

2015-05-01 03:59:05 | 書籍
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すごく中途半端な作品。
確かに、「般若心経」の内容についてわかりやすく解説されているし、そういう解釈があるか、と目からウロコ的なものもある。
ただ、芸人が書いた本らしくもっとふざけた部分があっていいと思うし、もしくは、常日頃ふざけたことをやっている芸人が、すごく真面目に書いた本、という感じにしてもいいと思う。
この本は、それが狙いだったのかもしれないが、そういうふざけた部分と真面目な部分が混在していて、なんか中途半端で、イマイチ面白みに欠ける気がする。

「聖断 昭和天皇と鈴木貫太郎」 半藤 一利

2014-12-18 22:29:24 | 書籍
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太平洋戦争終戦時の総理大臣、鈴木貫太郎の話。
太平洋戦争の終戦という、日本の歴史上、有数の重大な出来事のあった当時の総理大臣、ということは、少なくとも、多少の当事者ではあったはずの鈴木貫太郎であるが、今となっては、それに対して驚くほどの無名の存在であると思う。

話の主役だけに、だめな人間とは表現できないという事情はあるだろうが、比較的に新しい歴史だけに、ここに書かれていることに嘘はないものと思われる。
そういう事情を考えれば、この鈴木貫太郎という人は、尊敬に値する人物だと思う。
話自体も、敗戦の決断という、非常にドラマティックな場面が話に中心だけに、すごく面白かったと思う。

「火怨 北の燿星アテルイ」 高橋克彦

2014-11-10 21:12:12 | 書籍
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東北には歴史がない。
というと語弊があるが、もちろん、東北にも昔から人々は住んでいたわけで、そうである以上、本来ならば誇るべき歴史は存在するはずなのであるが、いかんせん、日本の歴史は近畿を中心とした、俗に言う大和朝廷を中心にしているわけで、そういう点から、東北という場所は、原則的に無視されてきたため、これといった記録が残っていない。

この小説の主人公であるアテルイも、歴史上実在した人物であるのは確かなのだろうが、その記録は驚くほど少ない。
しかしながら、どうやら東北地方では、英雄として評価されている人物であるらしい。

記録が少ないだけに、彼を主役に物語を描こうとすると、そこには、大いに創作の余地があるわけで、それだけに自由にストーリーが描けるわけである。

さて、この小説の中身であるが、なかなかに面白いものになっている。
ストーリーはよく練られているし、登場人物も、誰もが魅力的に描かれている。
いささか、東北びいきの感はあるが、それすらもストーリーを面白くするのに一役かっている。

分量的にも上下巻と大作ではあるが、一気に読めるほどの面白さである。

「愛の流刑地」 渡辺淳一

2014-06-17 00:12:38 | 書籍
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今さらながら、「愛の流刑地」を読んだ。
数年前に大ベストセラーを記録し、映画化もされて、一種の社会現象にまでなった本である。
はっきりいって、渡辺淳一の本を読むのは、これがはじめてである。

内容的には、前半はほぼエロばかりで、もうちょっと文章が上手ければ、よくできた官能小説かと思わせる内容である。
それだけに、後半、裁判の話が中心になると、ちょっと拍子抜けである。

全体的には、まぁまぁ刺激的な内容だし、面白かったとは思う。
ただ、作者のやりたいことはわかるのだが、なにかイマイチ詰めが甘いような気がする。
それだけに、なにかおとぎ話を読んでいるような気になるし、説得力に欠ける。

まぁ、絵にしたらサマになるようなシーンも多いし、それだけに映画化は納得がいくが、いかんせん、主演女優がねぇ。。。。。。
映画よりもテレビドラマの高岡早紀はいいのだが、なにせTVだけにそうしても露出が限られるし、そこが残念ではある。