石鎚山の紅葉は一週間周期くらいで徐々に標高を下げてゆく。
山頂天狗岳周辺の紅葉が、ほぼ終わり標高1700m付近まで紅葉前線が下りてきた。
北壁下から東稜辺りの紅葉が見頃を迎えると、南東面の柱状尾根の紅葉も色づきのピークを迎える。
秋の石鎚、もう一つのドラマチックな風景写真の聖地の幕が開く。
陽が低く西に傾き、南尖峰の突先で吹き上がる冷たい風に晒されながら、その時を待つ。
ダウンを着ていてもガチガチ歯の根が合わないくらい身体が震える。
柱状尾根が夕映えに赤く染まり、吹き上がるガスが黄金の光芒に包まれる瞬間、
身体の震えが止まず、何度ピントのブレた写真を撮ったことやら。
また今年も、決定的瞬間は、ピントが甘かったようだ(残念)
柱状尾根(墓場尾根)の夕映えは、眼下でNHKが取材していた。
今年2月の瓶ヶ森同様、三浦さんを山の案内人として撮影されていた。
12月放送予定ということです。お愉しみに。
翌朝、山頂の日の出を撮影して、混雑する登山道を下る。
山頂周辺の紅葉はイマイチだったが、北壁下周辺の紅葉は目も覚めるほど美しい。
これから暫くは紅葉前線を追い掛けて私自身も忙しくなりそうだ。
画像を御覧の通り、今年はブナの黄色が期待できるかもしれない。
土小屋から今夜は瓶ヶ森へ移動。
瓶ヶ森では夕暮れから雲が空を覆い、期待した星空も朝焼けも一面の大雲海もなかった。
まぁ、こんな時もある。
テントを張って、のんびり山の時間を過ごした。
あっ、そう云えば、ここ瓶ヶ森や先週の堂ヶ森では渡りの途中のノビタキの群れと出会った。
ここで熟した木の実や虫を沢山食べて、更に海を越えて南へ帰ってゆく。
同様に渡りの途中のアマツバメの姿は、めっきり少なくなった。
渡り鳥ではないが、ルリビタキも山頂周辺で、よく目にした。
この鳥も山が雪で覆われる頃には里へと下りてゆく。
それから石鎚山系で繁殖を始めたソウシチョウを、初めて土小屋からの尾根道で目撃。
もう完全に、この外来種は石鎚周辺で、その分布を広げているようだ。
さて今週から色づいた森へ入ろうか。
それは当然、撮る写真にも端的に現れている。
梨木香歩の「ぐるりのこと」と星野道夫の写真集の文庫本を山へ持ってゆくことが多い。
「ぐるりのこと」の末尾で梨木香歩は、「かつてあった風景を言葉で描写する」という物語作家本来の行為に言及する。
風景を表現するには、絵画や写真と共に言葉によるイメージを喚起させる力は計り知れない。
もっと自然を観察して、言葉で伝える風景の放つ光や風、それに刻々と移り変わるダイナミックな自然の営みを感じている自分自身の視線と鼓動を忘れないようにしたい。
それは結構、しんどい作業だが、風景と正面から向き合うには欠かせない作業だと思う。