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連休明けの11日は、我が家の菩提寺がある愛媛県南西部の河口の街へ
母を伴って出掛ける筈だった。
ところが「母の日」の遠出が思いの外、疲れたようで、
「私は、よういかん」と母は留守番を申し出た。
この小旅行は、母の故郷の街や女学校時代を過ごした宇和島市街の
思い出の場所を巡る、母のセンチメンタルジャーニー(感傷旅行)となる筈だった。
2年前にも父の申し出で、父が子供時代過ごした故郷の山や川を巡る小旅行を行った。
幾度も幾度も繰り返し懐かしさを噛み締め思い出を語る父の嬉しそうな顔が、今も忘れられない。
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また機会はあるだろう。
今回は父母の入る墓所に建つ墓石の決定と49日の法要そして納骨の日取りを
決めなければならない。
小雨の降る朝、母に留守番を頼んで、弟と二人国道を南下した。
母の故郷、津島町岩松は(父は近在の蜜柑農家出身で婿養子だった)
入り組んだリアス式海岸が広がる愛媛県南西部、岬と岬に挟まれた入り江の奥に
ひらけた河口の街だ。
鬼ヶ城山域に源を発する岩松川は、流域距離が短いわりには珍しい生態系を
保つ不思議な川だ。
早春の風物詩「しらうお漁」は(本当はハゼ科の素魚(シロウオ)サケ科のシラウオ
とは違う)いつもローカルニュースで取り上げられほど有名だし、
県立博物館に展示保存されていた2mを越える大うなぎも生育していたようだ。
そして母が、いつも思い出として語る川一面を覆う蛍の乱舞は(まるで宮本輝の「蛍」のラストシーンのような)
私にとっても記憶の襞を刺激するような甘酸っぱい光景として残っている。
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臨済宗妙心寺派、金龍山「臨江寺」は禅宗の寺だ。
正直言って、この静謐な佇まいの寺院を訪れるのは二度目だ。
母方の実家は戦後の農地改革による没落地主の典型で、
私たち兄弟にとって母の故郷である岩松は縁が薄い。
その代わり父方の実家である吉田町立間は夏休みを過ごした思い出の地だ。
それでも父母は、我が家の先祖たちが眠る、この寺への埋葬を希望した。
母にとっては可愛がってくれた曾祖父さんの眠る、この場所への埋葬は
理解できるが、婿養子として入り凋落してゆく家を横目に苦労してきた父が
この墓所を希望したのは、ちょっと複雑な気持ちだ。
母の生い立ちにしても、決して裕福な地方の資産家の長女として
幸福な少女時代を過ごしたわけではなかったことが最近判ってきた。
後妻に入ってきた継母のために、幼い頃から宇和島の親戚筋の乳母に預けられ
小学校から女学校卒業までを親元から離れて過ごしたという。
実母と再会したのは成長した、だいぶ後だったようだ。
ずっと我が家の仏壇にあった位牌が女性名であることに疑問を抱いた弟が、
母に問い質したことで、この複雑で錯綜した血族の経緯がみえてきた。
健気に耐えてきた母の幼い頃の姿を想像するだけで、愛おしさが込み上げてくる。
決して母を疎かにしないと心に誓うのだが、
私の決意は長続きしない…また母の粗相や我がままに愚痴をこぼす
堪え性のない愚かな息子を許してください。
さて父の葬儀にも来て頂いた和尚さん(禅宗の住職さんの呼称)
から石材屋さんを紹介され墓石を決め、49日の法要や納骨の日取りを決め、
別仏壇という本堂に設けられた小さな区画の位牌を祀る場所も決める。
そして初盆の日程の打ち合わせと、葬儀後の仏事や役所の手続きは
まだまだ終わりそうもない。
う~ん本当に私は世間の常識や行事、因習から意識的に遠い場所で(若かった…)
暮らしてきたので、良い大人になってから何も判らずに右往左往しなければならない。
その点、所帯を構える弟の方が世知にたけ教えられることが多い。
私自身の身の振り方は好きなようにすれば好いが、
親族や先祖たちと共に生きたきた父母は、ちゃんと世間並みに弔わなければならない。
なんとか頑張ってみますね…父さん母さん。
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