
夏の到来を告げる風景…それは?
汗まみれで樹林帯を抜け、稜線の笹原に出るとパッと視界が開ける。
とたんに先刻までの熱気が嘘のように、サーッと引いて行く。
爽やかな涼風が吹き渡っているのだ。
青空に湧き立つ入道雲。
そして登山道沿いには、ずっと笹百合の花が風に揺れ咲き乱れている。
夏の楽園へ。
真夏の山登りは、涼しい午前中に活動するに限る。
分かってはいるのだが、車の行き交う幹線道路の峠越えで体力を消耗した。
やっぱり黒森峠越えの方が、大型トラックが、真横を風圧と共に擦り抜けるストレスフルな幹線道路より益しかな?
1000mの峠越えか?幹線道路の精神の消耗か?
なかなか…真夏の自転車乗りには厳しい選択肢だ(笑)
落合から鞍瀬渓谷沿いの道に入ると、ホッとする。
川沿いの道は涼しいし。
水の滴る護岸の壁面に蝶が吸水に来ている。
夏ならではの光景だ。
それも目にも鮮やかな輝緑色の真夏の宝石、深山鴉揚羽蝶(ミヤマカラスアゲハ)と
涼やかな翡翠色の青條揚羽蝶(アオスジアゲハ)の取り合わせ。
そーっと近づいて、奇跡の色をカメラに収めた。
黒揚羽蝶は、華やかな舞台の黒子として。
もうこれだけで、今回は帰ってもいいような気分(笑)
登山口の保井野集落で、顔見知りのDさん宅へ挨拶。
結局、午後遅い時間からの山登りとなった。
午後の杉林は、蜩(ヒグラシ)の蝉しぐれの中だった。
カナカナカナ…その美しい余韻に浸りながら木漏れ陽に揺れる森を抜ける。
風の通らない急な登りの連続に、次第に身体に熱が籠り始める。
冷凍庫で凍らせたペットボトル3本は缶ビールを冷やすためだけではない。
氷が融けて飲み頃になった麦茶が、渇いた咽喉を潤してくれる。
石楠花尾根で出会った女性二人が、本日唯一の登山者。
二の森まで行って来たという健脚のお二人は、なんと盟友、菅さんのお知り合い。
う~ん、前回の笹倉湿原といい、こういう偶然は不思議と重なるものだ(笑)
稜線の笹百合情報をもらって、萎みかけた元気を取り戻す。
笹尾根手前で雨が降り始めた。
ガスに覆われた稜線は、襲い来るブヨの大群から耐える行程だった。
18時過ぎに堂ヶ森避難小屋到着。
梅雨末期の豊富な沢水で汗をぬぐい、缶ビールを沢に浸しておく。
ザックの荷物を解いて、夕飯の支度を終える頃には麦酒も飲み頃。
夏山の、この咽喉越しの溜息のために汗まみれで耐えて来た。
ほーっ、頭が真っ白だ。
今夜の山小屋の一冊は、今月、文庫化新刊された上橋菜穂子の「鹿の王」。
文化人類学者、上橋菜穂子のフィールドワークの成果が結実したと評価の高い作品。
レトロウィルスと人類の進化を問う内容だとか?
蝋燭の灯りと「ホッホッ、ゴロスケホッホ」の梟の声を聴きながらページを繰る。
この本を読むには最高のシチュエーションだ。
翌朝は、笹百合の咲く一の森(クラセの頭)までと決めていた。
朝露に濡れた夜明け前の山道を歩き、一の森山頂近くで朝陽が昇る。
久しぶりの緋色に燃える朝焼け雲だった。
この草原の景観を思わせる一の森までの広々とした空に抜けるような解放感が大好きだ。
ここで迎える朝陽が、今、石鎚山系では一番かもしれない?
誰ひとり会うこともなく、空へと駆け上がるskydogのような気分。
朝露に輝く笹百合、夏雲湧く稜線の笹百合、夏の楽園の風景を満喫した。
稜線上には、夏の間、高い山で過ごすヴァカンス蜻蛉、アキアカネが空を覆い尽くすほど群れ飛んでいた。
おかげで日中は、ブヨの執拗な攻撃から免れる。
昔から稲につく虫を食べてくれる蜻蛉たちは、益虫として人の暮らしと共にあった。
夏山でも、赤トンボは、ありがたい存在なのだ(笑)
そうそろお帰りのころだと思っていましたが
朝焼けの鯖雲は14日ではないですか?
私は天狗高原へ向かっていました
もし夜明け前に現地に居たら近いものが撮れたかもしれません
早速のメールに心から感謝します
と同時にごめんなさい
月曜日職場で肉離れをやってしまい絶望的となりました
普通の登山なら問題なく行けそうですが
尾根に出るまでが勝負と聞きます
年々遠くなる堂が森ですが今年も駄目の様です
無理は如何と廻りの声が多くて
カタックリさんが来年は一緒に行くよとmailありました
来年こそです
お疲れさまでした
頑張って夏の堂ヶ森へ登ろうとトレーニングしていたのにね。
残念です。
今年は春先の遅い積雪が、ずっと尾を引いているようで、山の花の開花が一週間くらい遅れています。
それが幸いして今年は7月半ばでちょうど良いくらいでした。
笹原沿いに続く笹百合に彩られた道は、クラセの頭までの長い花街道。
まさに天上の楽園の風景です。
早朝の朝露に輝く笹百合(4,5番目の画像)も美しい。
日中の稜線にはアキアカネが飛び交っているのでブヨは姿を消しています。
でもトンボが活動をしない朝夕は、何処に隠れていたのかブヨが大発生します。
ずいぶん刺されて、あちらこちら腫れ上がっています(笑)
この時期、沢の水も豊富なので、もっと楽園の日々を満喫していたいのですが、週末は海の日の連休。
避難小屋利用者も多いでしょうから一泊だけで下山しました。
カタックリさんという強力なパートナーがいるとmisaさんも安心ですね。
ぜひ来年こそは、夏の楽園を目指して体力向上を。
保井野から汗だくで登り尾根に出ると、この光景に出会えたら
一気に疲れを忘れさせてくれますよね♪
素敵なササユリ、私も勉強になりました、
それから、水場の情報ありがとうございました、
次は秋ですね♪
真夏の山登りは、何処へ行っても汗だくの体力勝負。
特に堂ヶ森は、どちらから登っても急登ですからね。
その試練に耐えた御褒美が、あの笹百合咲き乱れる楽園の風景です。
そして何よりなのが、沢水で冷えた黄金の一杯ですね(笑)
山小屋で友人たちと涼しい夜を過ごした様子。
下界の猛暑を思うと帰るのが厭になりますよね。
石鎚山系に残された貴重な往年の山風景。
そして、あの静かな山域は、石鎚山岳写真の最後の聖域でもあります。
ペンタ君も、これで未開の写真世界へ足を踏み込みましたね(笑)
人間社会も不思議な繋がりがあります。
これからも大事にしていきたいですね。
堂が森の夏風景、堪能しました。
アオスジアゲハのビロードのような羽の色、素晴らしいです。
夕闇、笹野原などなど、まさに夏!
広角の撮影も素晴らしい。
笹ユリも今年は終わりですね。
次は雲海、期待しています。
今の愛大小屋は、旧白石小屋があった場所。
昔の愛大小屋は、もう一段高い沢の水源の側でしたね。
今そこにはお不動さんが祀られています。
ここの山風景は、瓶ヶ森小屋の管理人だった小野さんが最も愛した風景でした。
昔、通った谷川岳山域の風景に似ていると。
石鎚、瓶ヶ森方面はスカイラインと林道のおかげで、秋まで賑わっています。
昔日の静かな山風景を堪能できる場所は、この堂ヶ森山域だけでしょうね。
私も空の開けた、このたおやかな風景に魅かれて通い続けています。
ここで終日、のんびり過ごしていると、おおらかな気持ちになれます。
唯、静かに自然の発する声に耳を傾けていればいいだけ…
猛暑の下界を思えば、本を読む環境としては最高です。
余計な情報も一切入って来ませんしね(笑)