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その日、市街地は色づき始めた樹々と青空の広がる穏やかな秋の一日が始まろうとしていた。
皿ヶ嶺山麓の集落にかかる頃からポツリポツリ雨が降り始めた。
見上げる稜線には雲が垂れ込め、次第に雨脚が強くなってきた。
九十九折(つづらおり)を遠心力でグルグル廻りながら高度を上げてゆく。
雨が霙(みぞれ)に変わり、さらに粗目(ざらめ)状の液体は白く凍てつく雹(ひょう)の礫(つぶて)となって頬を打つ。
路面を流れる雨水が、みるみるシャーベット状に固まり凍りついてゆく。
久万方面への境界のトンネルを抜けると、真っ白の銀世界だった。
試しに軽くブレーキをかけるとタイヤが横滑りする。
エンジンを切って惰性で下ることにした。
後はコーナーでいかに車体をコントロールするかだ(苦笑)
横滑りする後輪を片足でバランスを取りながら、下りカーブを幾つも抜けた。
冷や汗がでてくる。
こんな状態では、土小屋までの山岳スカイライン越えは、とても無理だ。
本日は面河渓から石鎚山上を目指す。
雨に煙る面河渓は名残の紅葉(もみじ)の上に、うっすら雪を纏う山肌が靄の狭間に見え隠れする。
雪山の装備を整え、12時半面河渓終点、渓泉亭前出発。
終日、降る雪の止まぬ行程だった。
尾根に出るまでは10cmくらいの積雪。
写真を撮りながらでも3時間もあれば愛大小屋に着けると見当つけていた。
ところが北側斜面に廻り込むと、途端に雪が深くなる。
膝丈を越える雪と横殴りの吹雪にペースが上がらない。
初冠雪で、いきなりこの積雪か?
11月半ばで30cmオーバーの雪は、ちょっと記憶にない。
なんとか暗くなる前、17時過ぎに愛大小屋に到着。
早速、薪ストーブに火を入れ、濡れた衣類と凍えた身体を温める。
リピーターのMさん、ありがとうございます。
小屋のノートを見ると、あなたが秋の間に無くなってしまった薪を補充してくれた様子。
小屋利用の皆さん、使った薪は周辺の枯れ木等を集めて補充しましょう。
次の利用者のことを考えることが避難小屋のルールです。
翌朝も雪雲が垂れ込め晴れなかった。
明るくなってから小屋を出る。
束の間、雲の切れ間から石鎚山上の稜線が覗くこともあった。
それ以外は相変わらず粉雪の舞う一日だった。
山頂避難小屋には、すでに待ち合わせのKさんが到着していた。
深夜2時に西の川登山口を出発して天柱石経由で山上に達したKさんの知人だという青年は、
石鎚山岳写真の次代を担う世代になるかもしれない?
高橋毅さんや福島さん、三浦さんの先駆的世代の後に続くKさんや私たち世代の
次を担う世代がまったくと云っていいほど空白状態だった。
デジタルカメラの普及で写真を撮ることが特別なことではなく日常的な行為となってきた。
それでも待ち時間の辛抱や重い機材を運ぶ体力を要求される山岳写真というジャンルに
あえて踏み込む若い人は、なかなか居ないでしょうね。
特に山岳写真のメインストリームである雪山は、悪天候の日が普通で、何も得られないまま下山することが多く
体力を消耗する労苦の割には報われることが少ないからね。
その青年も、結局時間切れで何も収穫を得られないまま下山していった。
これに懲りずに何度も通えば、必ず魂を震わすような神々しい風景と出会えます。
それが辛い思いをしてでも通い続ける雪山が、もたらしてくれる最大の魅力です。
この風景に一度出会うと自家中毒してしまうという悪癖があるが…
もう一晩、真っ白な雪の世界に閉じ込められ、
日付の変わった三時半目覚めた。
スコーンと空が抜けていた。
煌めく満天の星空と白い冬の衣装を纏った山上の風景が360度見渡せる。
遠く室戸の街灯りから眼下の西条や西ノ冠岳の向こうの松山市街の灯りまで、群青色の冴えざえと空気の澄み切った晩秋の深更、
徐々に黎明の色が東の地平に走り、星空は輝きを失いキンキンと凍てついた雪と氷の世界が明けてゆく。
この朝、石鎚山上の気温は氷点下7℃。
そして朝陽の放つ一閃の炎が世界を一変させる。
ローズピンクからブリリアントオレンジそしてゴールドまで。
めくるめく光のグラデーションが変化(へんげ)する。
欲を云えば瀬戸内の沖に溜まっていた雲の塊が、勢いを失いそのまま自然消滅したことか。
風は確かにKさんの読み通り北東の風だったのに。
まぁ雪山シーズンは始まったばかり。まだチャンスは幾らでもあるだろう。
女伊達らに暗い登山道を西へ東へよう登ったものです
私も青年と同じく何の収穫も無いまま瓶から下山した一人
明日が絶対いいなと確信して・・・・
帰りにシライダニで見たニシキギが妙に物悲しく
末の最後のチャンスも期待薄、じっと我慢の世界
仕事を持つわが身をこれ程歯がゆく思った事は無く
☂の公休日の今日はダラダラ主婦業放棄状態です
でも私が通い続けた14年間で雪山シーズンの12月から3月までの4カ月間の勝率は1割から2割くらい。
それくらい霧氷に覆われた晴天の朝の劇的な風景に巡り会う確率は低いのです。
もちろん天気予報の推移をずっと見守りながら、ここぞという週末に山へ入ってもです。
西日本最高峰の石鎚山上は低気圧が通過した後も、なかなか雲が纏わりついて取れないのです。
そして安定した高気圧の張り出した晴天では、霧氷が落ちて黒々とした山肌と
何ら気象変化のない面白味に欠ける風景しかありません。
いつも云うように風景写真は天候の変わり目が面白い。
それには、それなりのリスクを背負わなければなりません。
踏み跡のないまっさらの雪面のラッセルや吹雪に巻かれる危険性もね。
それだけに巡り会えた神々しい風景は感動的です。
さて今シーズンは、どうでしょうか?
写真家、伊原美代子さんの祖母と猫の12年間の暮らしを撮った「みさおとふくまる」が
イギリスやアメリカで話題になっています。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2232894/Misa-Fukumaru-Friendship-pensioner-cat.html
猫のふくまるは、みさおお婆さんの側を片時も離れない(お風呂も一緒)そうです。
巷に溢れる可愛いペット写真とは一線を画する温もりを感じさせる好い写真です。
12月中旬に延期されました。
発売に合わせて年明け1/15~/20まで松山市JR駅前、フジグラン5F、ギャラリーにて写真展が開催されます。
写真集は書店売りはしない予定なので、写真展会場か土小屋ロッジや頂上山荘の石鎚山周辺施設のみで入手可能となります。
新しい写真集は掲載写真120点、定価4700円予定。
お楽しみに。
瓶でお会いしました宇和島のZです。
私も寒波のニュースで13日から18日まで瓶で6日間滞在しました
強風に雨と雷、さらにこの時期にしては記憶にない大雪とで期待しましたが・・・・・ずっ~とガスの中
やっと16日の晴天と18日の雲海を見る事が出来たので確率は低いですが上出来です。
瓶もあと10日ほどですね、またお会いできる時を楽しみにしております。
なんと、あれがzenさんだったのですか。
やっぱり、あなたは半端じゃない(笑)
その集中力には完全に脱帽です。
じゃあ、初冠雪の朝焼けも霧氷の雲海も撮影出来ましたね(拍手)
本当にね。通った者に山の神様は微笑みます。
また週末から林道閉めの月末にかけて面白そうな天候ですね。
なんとか瓶ヶ森に入りたいと思っています。
zenさん、またお会いしましょう。
石鎚は雪!ランスケさんのブログは雨からみぞれ、そして雪と時系列で引きつけます。
写真もそのあとの抜けるようなグラデエーションがすごい。
夏、秋が短く冬支度、ほんとに時に流れの速さに驚く昨今です。
以前、Kさんが撮影された天狗岳のお写真を見せていただきまして私は大変衝撃を受けました。それ以来山に行くようになりましたがまだ素晴らしいシーンに出会えておりません。これからもできる限り通いたいと思っております。
いつかまたどこかでお会いできれば幸いです。
返信遅くなりました。昨日は風邪をこじらせ一日臥せっていました。
たかが雪山で三日過ごしたくらいで情けない。
すっかり身体だヤワになっています。
そうですか、旅行に行くと仰っていたのは京都でしたか。
鬼城さんらしい寺社の歴史的背景を踏まえた豊かな語り口が楽しみです。
さて、この風邪、早く治さなければ。
あなたのことをKさんから聞き、嬉しくなってブログに書いてしまいました。ごめんなさいね。
残念ながらブログに書いたように、石鎚へ通い続ける若い世代が育ちません。
何人かの方と、これまでにも出会いましたが、その内、姿が見えなくなります。
Kさんのような写真を撮るには、何度も通い続けなければなりません。
それだけに出会えた時の感動は、私たちが日常の中で味わう感動とは、まったく次元が異なる世界です。
ぜひ諦めないで通い続けてください。
Kさんの写真世界は、独自の美意識とそれに至る努力を惜しまない非常に高いレベルの世界観に裏打ちされています。
イケピーさんもKさんの写真と出会われたのは、ある意味幸運だったと思います。
Kさんの写真術を身近で学んでください。
またお会いしましょう。