Landscape diary ランスケ・ ダイアリー

ランドスケープ ・ダイアリー。
山の風景、野の風景、街の風景そして心象風景…
視線の先にあるの風景の記憶を綴ります。

秋の日は野辺へ

2013-10-23 | 風景

 

山の行き帰りに、ふっと目にする野辺の光景に心惹かれる。

例えば、河川敷一面に広がるイネ科の草叢が夕陽を浴び、風に波打つ穂先を煌めかせる一瞬の光景であったり、

朝霧が退き、木立から射す光芒の放つ、眼を射るような光の矢であったり、

野辺の草叢に射した光が浮かび上がらせる季節の花々の常にない光輝であったりする。

それは本来、旅の車窓の風景のように、目に飛び込んで来た刹那、鮮やかな印象を残しながらも、

多くの記憶と共に忘れ去られるような類の曖昧な記憶の断片なのだろう。

 

私の風景写真への最初の一歩は、そんな類の一瞬の光輝を

実体のあるものとして手元に残しておきたいという、

夏の日の遠い逃げ水の幻影を追い求めるような詮無い願望から始まった。

そう、こいつは、はなっから実現不可能な、子供の日に焼き付けた切ない記憶の切れぎれを

拾い集め繋ぎ合わせ再生させるような、果てしもなく野蛮な目論見なのだから…

 

 

秋の草叢に群れ咲く野辺の花々の風情が好きだ。

ノジギクやヨメナ、ノコンギクなど野菊の群れがミゾソバやイヌタデ、アキノキリンソウと一緒に

秋草の一群を成す草叢の佇まいには、

私たち日本人の「もののあわれ」に強く訴えかける情緒がある。

私の傾倒している日本画家、手塚雄二も作品のモチーフとして、よく秋の草叢を描く。

花の写真を撮るという行為は、

目の前の自然素材をそのまま生かし、そして自らの花を活ける所作だと思っている。

全体の構図を見て、光を読み、色味を整える。

野趣溢れる野辺の花、その場の空気感が何より命。

 

 


コメント (9)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« もみじ(紅葉)が凍える | トップ | 秋冷 / 立ち竦む秋 »

9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
美しき花を愛でる (ホッホ)
2013-10-23 22:06:11
野辺の花々を賛美する詩情豊かなエッセイーそして
写真で綴る静謐で屈託のない生命力に溢れた草・花(拍手)

 いつでも死ねる草が咲いたり実ったり(山頭火)

以前、ランスケさんに観せてもらった手塚雄二の作品集「夜想」の中に枯葉が蜘蛛の糸に絡んで張りつめた空気に包まれ不思議な浮遊感と微妙なバランスで描かれている作品がありましたね。

そうだ思いだしました。2012-10-25のブログhttp://blog.goo.ne.jp/toshiaki1982/e/7a5eaebe684e6b46f7b260bf1fdbb0bf
のトップ画面の写真を観た時、ああ面白いあの時観た作品だ写真で再現していると勝手に想像しました。

そう、あの不思議な世界です。時は一瞬止まっていますが時間は流れていきます走馬灯のように。
返信する
短日について (ランスケ)
2013-10-23 22:58:34
ホッホさん、びっくり。

あなたがリンクを貼った過去記事「短日」は、私が最近書いた記事で最も好きだった文章です。
簡潔だけれど、気持ちが素直に現れた好い内容だったと思っています。
(カテゴリー「森」は全体に気持ちが籠ったアベレージを維持しているかもしれませんね?)

今回の文章は、正直逃げています(笑)
正面から風景描写をするには気持ちの余裕がありませんでした。
たぶん次回、秋の森に入れば、書けるかもしれませんが?

写真は、冒頭2枚が現在の私の心情を素直に現わしています。
後半のトリッキーな写真は、ほとんど意味ありません。

季節の終わりを告げる秋の草叢の風情は、私たちが脈々と受け継いで来た「死生観」の端緒ですよ。
返信する
Unknown (鬼城)
2013-10-24 09:32:43
野菊、ランスケさんの写真に掛かったらどのような構図でも絵になります。ススキとのコンビネーションも見事です。水滴の接写など心が震えます。
撮ったご本人は、心境について説明されていますが、受け取り方は見た人それぞれですよ。
まさに秋、高茂岬のノジギクの群落を見に行きたくなりました。
返信する
写真の宿命? (ランスケ)
2013-10-24 11:52:53
鬼城さん、仰る通りです。

私は風景に対する心象を語っているだけで、
それが掲載した写真の全てでもないし、正しい鑑賞の手引きでも、勿論ありません。
時々文中で、断定や否定的言い回しで切り捨ててしまうので御容赦を(苦笑)

私が切り取った写真が、こうやって掲載され、皆さんの視線に晒された時点で、
それは観る人の主観に委ねられます。

あらゆる罵詈雑言や冷ややかな視線や、はたまた祝福や賞賛、
それら全てを甘受せざるを得ません。

でも、それに耐えられるほど、私はタフではないので、
あえて言葉を連ねてエキュスキューズを繰り返しています(笑)

高茂岬のノジギクですか?
南予から足摺そして物部にかけての海岸線にはアシズリノジギクという野菊の大群落が晩秋に見られるそうですね。
私も見てみたいです。

高知のmisaさんからもEメールが届きました。
本人はコメント欄への掲載を厭がっていますが無視して(笑)

≫良いですね
表紙を捲った瞬間にズキンと衝撃を受けたような(暫くぽ~っと見とれてました)
郷愁、憧れ、幻想
そんな全ての想いがこのoneショットに込められているよな気がします≪

ありがとうございます。misaさん。
返信する
目が点の動画 (ランスケ)
2013-10-24 14:56:16
凄い動画を見つけました。

パリで行われた世界空手道選手権大会女子個人「形の部」優勝、
宇佐美里香さんの演武。

http://www.youtube.com/watch?v=KTpM0d6lr4A&feature=share

何?この音。このキレ。この速さ。
ワイヤーアクション無し。
まじ凄い。
それに美形だし。
返信する
夕暮れ時はさみしそう (ホッホ)
2013-10-24 20:03:00
最近、朝のラジオで武田鉄也が古武術の甲野善紀と
内田樹をよく採り上げてます。

まず、体を動かさないと頭が働きませんね。
朝から行動すると一日中慣性の法則(?)で体も脳も動き続けるから本当に不思議です。

夏が過ぎ、祭りも終わってしまって何故かブルーグレイのハートになっているランスケさんと皆さんに井上陽水の「少年時代」を貼り付けました。http://www.youtube.com/watch?v=d3jl9u4-ZL8
返信する
身体性への傾倒 (ランスケ)
2013-10-24 20:34:24
なるほど、私が内田樹に共感するのは、フェアネスなバランス感覚と共にその身体性にあります。
甲野善紀との対談、「身体を通して時代を読む」も「修業論」も読んでいます。
その感想は、ホッホさんにも伝えましたよね。
上記の動画も元ネタは内田樹のブログに寄せられたマルキスト矢作俊彦のツイッターです。

およそ歪なレイシストたちの巣窟のような動画が集まったサイトでしたが、
この動画は、正直、素直に感動しました。
人の身体性は、屈折した精神の病とは、別のところにあります。

でも、この宇佐美さん、みえをきるときの表情が、妙に艶っぽいよね(笑)
返信する
少年時代 (misa)
2013-10-24 21:24:04
ほっほさん、ありがとう
胸がキュンとちょっぴりせつなくて
今夜は良い夢見られそう・・・・
misaは単細胞なので難しい言葉を並べられても
小さな文字が詰まった本を差し出されても
五感で感じる世界が好き
返信する
はちきんの乙女さまへ (ホッホ)
2013-10-26 13:03:46
改めmisaworldvol.4を観てます。http://blog.goo.ne.jp/photo/175973?fm=entry_s
狙い澄ましたアングル、フレームからはみ出す大胆な構図そしてカメラを覗く目力で撮った花・・・元気です。
そうです、花のポートレイトです。
じっと観ていると人のポートレイトと同じように一つ一つの物語が始まり出します。

シンディ・ローパーの「タイムアフタータイム」
体中にシンディ・ローパの歌声が満ちてきたらおもいきり背伸びをすると凄く元気になります。
http://www.youtube.com/watch?v=BrLWU8cogrA
返信する

コメントを投稿

風景」カテゴリの最新記事