
めっきり冷え込んだ朝、遠くの山並みも白く雪化粧。
午前中に役所へ赴き、母の医療限度額適用の更新手続きを済ませる。
午後から病院へ寄るために母の居室へ。
少し外界への興味を示し始めた母のために
何か読み聞かせるのに好い本はないかと書棚を物色。
背表紙を眺めていて、1冊の本が目に留まった。
「冬樹々のいのち」柳澤桂子 歌、赤勘兵衛 絵 (草思社)
懐かしい…ずいぶん昔に私が母に送った本だ。
当時、病のなかで死と向き合っていた生命科学者、柳澤桂子の短歌に
ポタニカルアートの画家、赤勘兵衛が絵を添えた美しい詩画集。
ぱらぱらページを捲ると、季節を切り取る印象的な細密画に
儚くも透き通るような言葉を連ねた柳澤桂子の歌が綴られる。
―透きとおる蚕のような魂のうずきは 骨を かすかに揺する―
―マナティーが月を抱きて歌うとき 立つさざ波を不安というか―
―西空に黒味を帯びて燃えるとき 溢るる祈りを いずこに捨てん―
―この星に在りたき願い さらさらと枯葉のごとく乾きゆくなり―
―ひとかけの食も通さぬ臓(くえ)もちて 今日を生かされ降る雪をみる―
―冬樹々のなかで いのちは立っている 眠れば死ぬと思うがごとく―
―麻痺進み 疲れて重き両の手は 満月一つ磨きしごとく―
―黄昏の身にうつうつと濃き思い おのが無残を生き尽くさんと―

病室で本を開き見せると興味を示す。
美しい挿画を見せながら、歌を静かに読み始めると耳を澄ます。
ページを開き読み聞かせる内に母の瞼が赤く潤み
己がままならぬ身に重ねてか、涙が溢れゆく様子。
帰宅してからも何度も、死をみつめる生命科学者の透徹した言葉に目を通す。
午前中に役所へ赴き、母の医療限度額適用の更新手続きを済ませる。
午後から病院へ寄るために母の居室へ。
少し外界への興味を示し始めた母のために
何か読み聞かせるのに好い本はないかと書棚を物色。
背表紙を眺めていて、1冊の本が目に留まった。
「冬樹々のいのち」柳澤桂子 歌、赤勘兵衛 絵 (草思社)
懐かしい…ずいぶん昔に私が母に送った本だ。
当時、病のなかで死と向き合っていた生命科学者、柳澤桂子の短歌に
ポタニカルアートの画家、赤勘兵衛が絵を添えた美しい詩画集。
ぱらぱらページを捲ると、季節を切り取る印象的な細密画に
儚くも透き通るような言葉を連ねた柳澤桂子の歌が綴られる。
―透きとおる蚕のような魂のうずきは 骨を かすかに揺する―
―マナティーが月を抱きて歌うとき 立つさざ波を不安というか―
―西空に黒味を帯びて燃えるとき 溢るる祈りを いずこに捨てん―
―この星に在りたき願い さらさらと枯葉のごとく乾きゆくなり―
―ひとかけの食も通さぬ臓(くえ)もちて 今日を生かされ降る雪をみる―
―冬樹々のなかで いのちは立っている 眠れば死ぬと思うがごとく―
―麻痺進み 疲れて重き両の手は 満月一つ磨きしごとく―
―黄昏の身にうつうつと濃き思い おのが無残を生き尽くさんと―

病室で本を開き見せると興味を示す。
美しい挿画を見せながら、歌を静かに読み始めると耳を澄ます。
ページを開き読み聞かせる内に母の瞼が赤く潤み
己がままならぬ身に重ねてか、涙が溢れゆく様子。
帰宅してからも何度も、死をみつめる生命科学者の透徹した言葉に目を通す。
![]() | 冬樹々のいのち |
柳澤 桂子,赤 勘兵衛 | |
草思社 |
生きているという意識、生きてくれているという確信がお互いに持てる時間です。
このときが再び共有できることを共にお慶び申し上げます。このときを楽しみましょう。
ずっと母の側で過ごしました。
ケアマネさんと今後の母の受け入れ準備への打ち合わせ。
主治医の先生からも母の病状の経過報告と退院の目途を聞きました。
その際、ずっとお正月には家で過ごせるからと、
母に言い続けてきたのに、先生から現状では難しいと言われた時の、
母の哀しそうな顔が忘れられません。
「一時帰宅も可能ですよね」とフォローしてくれたケアマネさんの
機転がありがたかった。
それ以外は、パソコンでプリントした古い写真を見せたり、
母の本棚から物色してきた句集を読み聞かせたりして過ごしました。
少し疲れたのか眠る母の側で持参した本のページをめくる
時間が穏やかに過ぎてゆきます。
時折、母の寝顔を見ながら過ごす時間は確かに
kyoichさんの仰るように「今このときを意識できて共に過ごせる喜び」
そんな穏やかな時間だったと思います。
温かなコメントありがとうございます。
昔お母さんが手にとって読まれた本を読み気かせるランスケさん、この優しさには頭が下がります。
移りゆく季節の中で、ご病人であるお母さんはお正月、自宅への思いがあったのでしょう。
コメントの中、ケアマネさんの機転というか、優しさが伝わってきます。
人それぞれ考え方もあると思いますが、寒い季節「ほっと暖かくなるような」いいお話でした。
感性が豊かだと読み手も暖かくなります。
我が家では、小生が優しくないからショートステイで空きがあるので「奈良の里」にいるそうです。(笑)
温かくて優しい思いやりに溢れ、何時も励まされます。
今日の母は、ずっと眠ってばかりでした。
昨日一日、私の相手をして疲れたのでしょうか?(笑)
雨音を聴きながら母の側で本を読み続けるのも
昨日同様に穏やかな時間でした。
明日は低気圧通過後の寒気を狙って、再び皿ヶ嶺へ行ってみます。
さて霧氷の森と出会えるでしょうか?