陶芸教室 夢工房あすか

大分市内にある陶芸教室のブログです。
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日日是好日/連載17

2019-04-29 00:06:15 | 日日是好日/連載

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 ー 「陶芸」 が教えてくれる 15 のしあわせ ー

第六章 : 読んで感じること/その2
その内に、著名な陶芸家の自伝なども読むようになった。陶芸や陶壁と言う言葉を創った巨匠・加藤唐九郎さんや、現代陶芸界の父とも言われる人間国宝の濱田庄司さんの自叙伝などである。感銘を受けた。巨匠 加藤唐九郎さんの自伝 『加藤唐九郎(土と炎の迷路)』 (日本図書センター版) は作歴ともども波乱万丈である。お二人とも陶芸の近世を開いた人たちだが、本の粗筋を掻い摘んで書こう。

加藤唐九郎さんは、半陶半農の窯屋の家に生まれ中学しか出てないが、漢文や南画を自ら学び、17歳で「越嶺」と言う雅号までもらっている。バイオリンも弾き楽団まで組んで演奏会も開いている。陶芸に専念してからは、土を求め土を食べ歩いた人としても有名である。波乱万丈の人生だが巨匠になる人は違う。あらゆるものに秀でてる。不撓不屈である。

本人が一人で瀬戸の古窯址を発掘調査していた時には何度も留置所にぶち込まれている。それを救ったのが偶然にも警察署長になっていた小学校の時の図画でデッサンを教えてくれた先生であった。「お前は唐九郎ではないか・・・」 と。

また、戦時中の中国でのいたましい状況なども生々しく書かれている。ノンフィクションだけに胸に詰まされる。戦争では弟さんや息子さんも5人のうち2人も亡くしている。戦時中も戦後も、陶芸家でありながら、中国やソ連との文化交流を促進するなど日本の工芸美術のために尽くしている。一方で魯山人さんや志野焼の荒川豊蔵さんなどとの出逢いなども知ることができた。偉くなる人や活躍する人たちはみんな何処かでつながっている。

その後に起きた 『永仁の壷』 事件で公職から退いているが、この事件を書いた単行本も読んだことがある。陶芸では最初の人間国宝になったのだがこの事件で返上している。この壷は他の目的で創ったものが訪欧中に永仁時代の壷  (瓶子) として有形文化財に認定されたのである。この壷が習作であることを明るみにした長男の岡部嶺男さんとはこの事件後に絶縁している。嶺男さんも青瓷作品などの著名な陶芸家になっている。嶺男の嶺は唐九郎さんが17歳の時にもらった南画の雅号の嶺である。名字は変わったがつながりが名前に残っている。加藤唐九郎さんが編纂した 『陶器大辞典』 は1,000頁を超える原色の大辞典だが、今も発売されている。

私は加藤唐九郎さんの本を2冊持っている。『唐九郎のやきもの教室』 と 『やきもの随筆』 だ。とんぼの本 『やきもの教室』 には氷柱(つらら)銘などの抹茶茶碗の名品が載っているので、何度となく本を開いて眺めている。気持ちが落ち着く。今も書店で売られている。作品はあのピカソからも所望されたほどである。

又、濱田庄司さんの自伝には民芸運動を始めた経緯や、親友のバーナードリーチとの交流などが記されている。二冊とも日本経済新聞の履歴書に連載された自伝シリーズの配本である。益子焼を見学した時に、濱田庄司さんの 「陶芸記念館」 を訪ねたが、当時の茅葺の工房や作品に感動した。素晴らしい流し掛けの大皿にしばし見惚れた。
時が経ち、今はそのお孫さんたちが陶芸家として活躍する時代になっている。


話がはずれるが、下の写真の 「瓶子」 は、東京・駒場の 「日本民藝館」 で観た濱田庄司さんの 「塩釉紋押花瓶(高さ33㎝ × 胴直径19㎝)」 に憧れて、真似をして私が作った「備前灰釉瓶子(高さ38㎝)」 です。穴窯で薪で焼成して産経新聞主催のアマチュア陶芸コンテスト公募展にも出したが落選した。入選してたら第二の永仁の壷まがいの事件になってたかも?? 同時に出品したお猪口二つは入選した。陶芸教室を開くまでの数年間は公募展にもよく出品した。入選はするものの賞をもらうところまでは行かなかった。この程度だなと思った。

 「瓶子(へいし)」 とは、酒などを入れて捧げ物に使う高さが30㎝前後の容器。

 - つづく -

 


 

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日日是好日/連載16

2019-04-27 00:05:55 | 日日是好日/連載
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 ー 「陶芸」 が教えてくれる 15 のしあわせ ー

第六章 : 読んで感じること/その1
陶芸の雑誌もよく読んだ。陶芸を始めた時に、一番参考になった雑誌は 『陶遊』 である。身近な手頃な雑誌だった。志野焼きなど色々な技法や、陶芸教室の生徒さんの作品などもたくさん掲載されていたので参考になった。20冊くらいは買って持っている。生徒さんがお雛様などを作る時にも参考に見せている。季刊誌では 『つくる陶磁郎』 も参考になった。何冊か持っている。その他に 『陶工房』 や 『炎芸術』 などを持っている。『炎芸術』 は芸術的な雑誌で近寄りがたかったが、最近は優れた作品に感銘を受けている。アートな作品が堪能できる雑誌である。

こちに来てからは、県立図書館で 『陶遊』 を閲覧することが出来た。折り目がいくつも付けられていてよく読まれてるようだったが、一時この本が休刊になったことがある。再刊された時に、また置いてほしいと図書館に要請したが予算がないと断られた。いまだに復活していない。姉妹紙の 『盆栽世界』 の方は復活して閲覧棚に置かれてるのに、 『陶遊』 は何故か置かれていない。陶芸には関心が薄いのだろうか。陶芸への理解がほしいものだ。定価が1,200円の雑誌だ。近くの明林堂や中心街のジュンク堂、紀伊国屋書店にも置かれてない。車で行けば販売している書店もあるのだが出掛ける機会が少ない。それからというもの、県立図書館へもほとんど行かなくなった。歩いて7,8分くらいの所なので毎月のように行って、館内のレストランでランチしてコーヒーブレイクするのも楽しみの一つだったのだが・・・。

私が陶芸を始めた頃は、陶芸がブームだったようである。陶芸の体験を書いた本がいろいろと出版されていた。感動を覚えた本を二冊ほど挙げてみよう。

一つは、林寧彦著作の 『週末陶芸のすすめ』 だ。陶芸にのめり込み電気窯をマンションに設置して作陶を続けたことなどや、釉薬づくりのことなども面白く興味深く書かれていた。痛快なストーリーだった。大いに刺激を受けた。その後、この著者は大手の広告会社を中途退職してプロになったが、最初に渋谷の青山で開いた個展も見に行った。2冊目の本も出版していたので記念に買ってサインをもらった。花のスケッチを入れて 「〇〇様  恵存 2003年4月25日 林寧彦」 とサインをしてくれた。私はこの数年後に大分市で陶芸教室を開いたのです。

もう一冊の本は、岡崎裕子著作の 『器、手から手へ』 だ。頭を丸刈りにしてイッセイミヤケのOLから陶芸界に飛び込んだドラマチックな話などが綴られていた。掲載されてる写真も調度品など洗練されていて楽しめた。著者は育ちやルックスもよいので、当時は女性雑誌に毎月のように掲載されていた。同じ月に4,5冊の女性雑誌に掲載されていたこともある。この陶芸家は今もマスメディアに出て人気だ。トンボの器で有名だ。本を出版する前は陶芸ブログでも人気だった。

又、工芸全般に関しては、日本工芸会が出版している 『伝統工芸ってなに? (見る。知る。楽しむガイドブック)』 が参考になった。71頁の大型版の本で、陶芸から染織、漆芸、金工、木材、人形、ガラスなど工芸の諸ジャンルについて、技法や鑑賞のポイントなどが分かりやすく、やさしく解説されている。それぞれの分野の人間国宝や現役作家の作品が掲載されている。薄い本だが、いろいろな伝統工芸品を知ることが出来るので、ためになる。一冊は持っておきたい工芸鑑賞用の入門ガイドブックだ。本の帯 (裏面) には

 ・ 子供目線に立って、基本の 「き」 から分かりやすく解説
 ・ 小学生から工芸の基本をおさらいしたい大人まで。
   たのしく読める工芸入門!

とうたわれている。

 ・・・つづく・・・





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日日是好日/連載15

2019-04-25 00:05:53 | 日日是好日/連載
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 ー 「陶芸」 が教えてくれる 15 のしあわせ ー

第五章 : 見て感じること/その2
作品づくりでは抹茶茶碗を作るのが好きだったので、京都に行った時は、「樂 美術館」 にいつも立ち寄った。京都御所の近くの住宅地にある。こじんまりとした気持ちが落ち着く美術館だ。樂家の窯場でもある。館内には歴代の樂茶碗が飾られている。私は今の 15代の樂吉左衛門さんのモダンな造形の茶碗にすごく憧れていた。大胆にデフォルメされた形と斬新なアート的な加飾模様に心が洗われた。見学後は美術館の前にあるカフェに立ち寄ってコーヒーブレイクをした。コーヒーも一味違った。15代の樂吉左衛門著作の 『樂ってなんだろう』 と言う本も持っている。本を開いては作品に見入っている。

又、私は美術館などに行った時には記念に絵葉書を買っている。教室を開いた時にいくつかの絵葉書を教室の梁に飾った。何気なく買っていたものが教室を開いた時に役に立った。

 教室を飾る15代 樂吉左衞門 の作品絵葉書(下段3枚)



東京では、三越本店の大広間で開催された元総理大臣の細川護熙さんの抹茶茶碗の個展には驚かされた。その当時は総理大臣を辞めて陶芸家になった直後だった。抹茶茶碗一つがどれも50~70万円もしていたが、ほとんどに赤札が付いていた。さすがに東京だなと思った。また、壁に掛けられてる書の掛け軸にも赤札が付いているのが多かった。茶碗は半筒型の黒楽や赤楽茶碗が多かったが器の形も景色も趣があった。私には手が出ないので作品集 『やきものを楽しむ/細川護熙のやきもの』 を買って帰った。この写真集を眺めてるだけでも楽しい。さすがにうまいなと感心する。作陶の日々を綴った 『不東庵日常』 もその後に買った。生徒さんを教えている時には作品集などを見せて、このようなことも話題にしながら陶芸指導をしてきた。

 細川護熙 作品集より


生徒さんには、「陶芸の作品展などには出来るだけ観に行って、気に入った作品があったら、買っておいた方がいいよ」 と勧めている。参考になるし記念になる。陶芸の作品展や窯業地などで器を購入する生徒さんが多くなった。

前述した人たちの作品は我々には高嶺の花だが、観るのは安い。観に行って、真似ることだ。それが上達への道だ。真似て行くと自分のものになる。自分のものが出来るようになります。

 ・・・つづく・・・


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日日是好日/連載14

2019-04-23 00:03:37 | 日日是好日/連載
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 ー 「陶芸」 が教えてくれる 15 のしあわせ ー

第五章 : 見て感じること/その1
陶芸を始めてから陶芸作品の展示会などを観るようになった。日本橋の高島屋、三越本店や、銀座の松坂屋、新宿の京王百貨店、小田急百貨店、渋谷の東急などのデパートの陶器の展示フロアーを毎月のように覗いた。

ある時に三越本店で常滑焼の急須展と実演会が開かれていた。人間国宝の山田常山さんの息子さんが実演をやっていた。じっと見ていたら 「陶芸をやっているの?」 と聞かれた。「もう一度やってみるから、そばにどうぞ」 と言って再度見せてくれた。忘れまいとじっと見ていたが、帰ったら一瞬の早業が思い出せなかった。ろくろで何度か試みている内にそれらしきやり方が摑めた。私の急須の蓋受けのかかり部を内側に折り返す手法は、何と今の常滑焼の常山さんの直伝なのです?! 

渋谷の教室に通ってる時は、青山通り付近の信楽焼きのギャラリーや、しぶや黒田陶苑などにもよく覗きに行った。何も知らないので、黒田陶苑の店主に 「いい作品が多いですね」 と無造作に気軽にタメグチを叩いていた。戸惑ったような表情をされていた。私が知らなかっただけで、ここは一流の陶芸家の作品が多い店だった。この店主は陶器に関する本もたくさん執筆されている。

新宿・大久保駅付近には、鈴木五郎さんの異色の作品が展示されている「ギャラリー五郎」があった。中野の自宅から歩いても行ける所だったのでよく覗きに行った。斬新な陶製の椅子やゴツゴツした豪快な土瓶などの作品が飾られていた。織部の焼き物でも有名な現代を代表する陶芸家である。陶製の椅子は彫刻のような感じで量塊感があり、教会や彫刻の森にでも置かれてそうなアートな造形物だった。背もたれが付いた高さ 120㎝、幅が 55㎝、奥行きが 50㎝くらいの人が座れるサイズで、1脚が 150万とか 250万円とかするスケールの大きいものだった。

ホテルニューオオタニの 「寛土里」 というギャラリーも有名作家の個展が開かれていてよかった。大平和正さんの化粧土を施した造形的な焼締作品などにも魅せられた。暫くすると近くに 「菊池寛実記念 智美術館」 と言う陶芸の素晴らしい美術館が建築された。私の一番のお気に入りの場所になった。虎ノ門のアメリカ大使館やホテルオークラに囲まれた高台にあった。素敵な美術館で地下に展示場があり、加藤唐九郎さんをはじめ名だたる陶芸家の作品が飾られていた。毎年開かれるイベントも素晴らしかった。ディスプレーや照明も素晴らしい。そして、雰囲気がいいのだ。

一階にはレストランがある。そこでいつもノンビリとコーヒーブレイクをした。前庭には芝生が広がり、庭ではすずめが屈託なく遊んでいた。左に持仏堂、右側には大正時代の西洋館が残されていた。東京なのに前をさえぎる建物が何もない。東京の喧騒を忘れさせる雰囲気に浸れた。最近になり前方に高層ビルが建ったが、景観を損ねないように建てられている。さすがだ。この美術館が開館されてからは、こちらに来るまでは毎年何回も訪ねた。この美術館は陶芸ファンには特にお勧めだ。

 ・・・つづく・・・


 鈴木五郎 作品集より





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夏井いつき著書/季語手帖

2019-04-21 00:03:35 | よもやまごと
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前回アップした中鉢を作陶したイラストレーターの なかむら葉子 さんは
テレビ番組の 「プレバト」 で人気を博している夏井さんの著書、 2019年版
『夏井いつきの 365日 季語手帖』 の表紙や、挿絵のイラストを描いています。
よく売れてるようです。毎年描いてます。今年度版で3回目だそうです。
楽しい本ですよ。みなさん、すぐに本屋さんへ買いに行きませんか。



私はテレビの 「プレバト!!」 が大好きで最初の頃から見ていますが、
俳句がいまだに一句も浮かばないのが残念です。素養がないようです。
この本に掲載されてる俳句も、読んだだけでは映像が浮かばないのですが、
季語の意味や選句の解説を読んでから見るとなるほどと思います。
ブレバトで見た俳句も載っていた。その一つが、
 3月の季語  「ゆるゆると鷹鳩と化す日のリフト」 梅沢冨美男

先々週でしたか、直木賞作家の俳句が才能なしの40点の
査定をされてましたが、小説と俳句とはまた違うのでしょう。
この番組に登場する芸人さんたちの俳句と
夏井いつきさんの名解説には感心するばかりです。
若い芸人さんたちは、水彩画や生け花なども上手いもんですね。秀でてる!

ときに陶芸も登場することがあるが、
陶芸は、成形、装飾、施釉、焼成の四つの部門に分類されるだろうからか、
査定基準がどこに置かれてるのかも分かりづらく難しさを感じるところです。
削りと釉掛けを誰がやってるのか。先生がやってれば先生の作品になる。
又、実用的な観点でみるのか、美的な観点でみるのかによっても変わってくる。

陶芸においては、課題作品や成形の模範品をつくるのも、かなりの時間と
手間がかかるだろうし、成形という範疇だけでは視聴者の受けを良くする
のも難しいだろう。といって、これという名案も迷案も浮かばない。
プレバトでも陶芸がアピールできると良いのだが難しそうだ。
工芸というものの難しさなのだろう・・・。




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