父の日
あたしはお父さんが嫌いだった
だらしなくて、なんだか不潔で
話も聴かずに怒ったり
気が向いたときだけ子どもをかわいがる
お母さんが買ってきたネクタイを
父の日には目も合わさずに手渡した
じゃあ、一緒にお風呂に入ろうなんて
家を出てやるって思った
もう父の日なんて関係ない
でも、好きなお花でも持って
顔を見せに行こうと思う
元気でなって
最期に言ってくれたから
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紫陽花
あなたとの最後のデートは鎌倉だった
いくつもお寺を回って
そのたびに雨にぬれた
紫陽花が出迎えてくれた
途切れがちな会話を救うように
いろんな色と形の花が
穏やかに咲いていた
気持ちの行き違いも
これからのことも
もう気にしなくていいんだよって
デジカメを忘れたんだよ
あなたは小さなウソを言っていた
でも、青い傘をさして
じっと花を見ていたあたしを
少しの間でいいから覚えて . . . 本文を読む