害虫とよばれる青虫は這って白菜を齧りながら私に言った。
私ね、ヒラヒラ可憐な白い蝶になるため今を乗り越えるの。
やがて青虫は蛹になった。
蛹の中は液体のように溶けていると聞いたことがある。
季節は過ぎ、少しずつ淡い緑が萌えはじめる。
蛹から目が覚めた蝶は立派で可憐な姿の蝶だった。
おはよう、ひさしぶり。お目覚めいかが?とたずねると
蝶が蛹の殻からフッと離れ、私に言う。
あら、おはよう。私は蝶。あなたは誰?と不思議そうな目をした。
私の周りに春がいっぱい、とくに黄色い菜花が好きだわ。と蝶は嬉しそうに去っていく。
蛹の中で青虫が溶けて液体の様になるとき、害虫よばれの白菜を這い齧る青虫時代や蝶を夢みた記憶も溶けて無くなってしまったようだ。
蝶は今を謳歌し可憐さは輝かしくもみえる。
無事孵化した仲間と合流しヒラヒラ舞う姿を私は見届ける。
ただ潜在的に残る記憶もあるのだろう、白菜も今きみが好きな黄色い菜花もアブラナ科じゃないか、と突っ込みたくもなった。
少し肌寒くポケットに手を突っ込み家の中へもどる。
さて16団子をつくる用意でもしようか、台所へ向かう。
※ 写真と文は関係なし