銀河のサンマ

何でもあり

人参サラダ

2020-02-11 | 銀河食堂

 

 

 

 

 

水の浄化をどれ程するか、1匹のシジミで実験をしている。

ボクはこの職場に来て5年、シジミが住む水に金魚のエサを撒いている。

前任から継いだ仕事の1つである。

シジミは引き継ぎ以来、姿をみていない。

水面から覘くだけでは見えないのである。

だが今日はシジミの成長記録をする日だと上司に言われ、実に5年ぶりの対面をする。

水の中に手を入れグルグルかき回す。何度か続けているとシジミが手ですくえた。

おっとっとっ!ぎゃーっ!! 

すくったシジミをみてボクはポチャンと水に落ちた。

「水の中へ銀河食堂出張」

ん?!息のできる水の中で「銀河食堂」現れる、古びた食堂、最初に出会った主の店だ。

あいよ、来たかい。座んない。人参サラダだ、食べていきな。

ボクは一目で顔を曇らせ黙り込む。

(人参、マヨネーズ、ハムステーキであろう角切り。食べれないことはないが進んで食べない。苦手だ)

店主は黙る僕にニンマリし、器をもって箸をつけてみな。と催促した。

僕は「いただきます」すら言わず箸をつける。

(あれ?)

だろう、と言いたげな店主の顔は更にニンマリする。

(臭い人参が然程くさくない!ツンとするマヨネーズが然程ツンとしない!切り刻んでは再度ひっつけるハムが口に障らない!)

店主が静かに一言、桜の椀だ。

人参サラダの椀は手に包むよう収まり滑らかでほんのり木の香がする。

香りが食材と共に鼻腔を頬ずりするように抜けていく。

香りが食材を口どおり滑らになるよう助けてくれる。

こんなものでサラダが柔らかく感じるんだっ! と声を大にしてしまったボクの目はきっとキラキラとしているに違いない。

「苦手も変化をつけたら楽しい」があるかもしれん。

まあ工夫は成長だわな、また来な。と店主がハハッと笑うと、チャポン・・・水の音がした。

気づくとボクは水をいれた器にシジミをチャポンと入れたところだった。

その器は人参サラダと同じ桜の椀。

ボクは、上司に頼みこみ休日シジミと共に過ごす為つれて帰ることにした。

休日らしい朝の匂い。

ボクは店主が作ったものに似せた人参サラダを作りシジミと会話する。

プクプクッとでた水の泡が何か言っている様で愛らしい。

勿論、仕事である記録も記している。

記録:5年間でおおよそ8cm。ボクが見てきたハマグリたちより大。

 

 

 

 

 

 

 

※ このシジミは浄水場に5年以上いきたことは確かです。

  ハマグリ大になったと聞いています。

  そして姿はなくなりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月曜日の朝食より

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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