届いたダンボールを開けると野菜が詰まっていた。
1つ1つ手にとると、ふわっと記憶が移動するように遡っていく。
採ってい?と畑で祖父と茄子を下からのぞき、鋏で切った瞬間の香り。
芋ほり遠足で、土まみれになっても芋1つ掘れなくて泣いた日。
祖母が畑の南瓜を裏返すとナメクジがついていて叫んで逃げた私。
お土産の松茸を、どんな味やか?と家族で興味津々、囲って炙った日。
初めてマスカットを食べ、不思議な味と食感に笑った母と私。
大根葉に塩ふりすぎっ!と容赦なく叱られた日。
90で椎茸もつくりはじめたの?と驚いて庭裏へ走り見に行く私。
遡る記憶の感触、食感、嗅ぐ、体感、感情すべて巻かれ包まれる。
それはとても温かい。
さて記憶の移動から戻ってきた私は、俎板をおろしエプロンをつける。
糠漬けをしようかしら、と小茄子を手にとる。
有難くも調理でき、料理をする喜び溢れ、涙がぽつりと俎板へおちた。
※朝食風景