草むしりしながら

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危険生物図鑑 その5

2023-07-12 06:59:10 | 草むしりの「ジャングル=ブック」

危険生物図鑑 その5 フグ

 以前近所の高齢者のサロン活動のお世話をしていたことがあります。月に二回お年寄りとお料理やお茶会をするのですが、責任者は年に数回行政側の指導を受けなければなりませんでした。

 指導と言っても主に高齢者向けのリクレーションや健康体操などの紹介などでしたが、ある時保健所の職員の話を聞くことになりました。ちょうど夏の時期でしたので、食中毒の講話でした。その時は実にタイムリーな内容だと思いました。

 ところがいざ蓋を開けてみれば、なんとフグの食中毒の話でした。たぶんその年に県下でフグの食中毒者が出たからでしょう。保健所職員は苦虫をかみつぶしたような顔をして、自分で釣ったフグを勝手に調理して食べてはいけないと、いきなり説教をはじめたのです。

「まったく困っているのですよ!」と語気を強めて言うのです。

 そんなこと言われても困ってしまうのはこっちの方です。そんなやってもいないことで怒られるなんて。フグどころかアジやサバだって釣ったことないのに……。この人田舎の年よりってみんなそんなものだと思っているのでしょうか?

つまりカチンと来たのです。こういう場合は言い方次第ですね。

「皆様もご存知のように先般フグによる食中毒が発生いたしました……云々。そこでひとことフグに食中毒の話をさせていただきます」

 くらいのことをはじめに言ってほしかったですね。

 さてそれから翌年には新型コロナウイルスの感染が広まりました。対応に追われている医療関係者以下多くのエッセンシャルワーカーの方々のようすが、テレビで毎日紹介されましたね。

 世の中にはなんと素晴らしい方々がいるのかと、私は感心して見ておりました。この方たちの負担を減らすためは自分ができることは自粛しかない。などと思ったりもしていました。一方で鳴りやまぬ電話に必死に対応する保健所職員の方々のようすも写しだされましたが、どうしたものかまったく同情する気がおこりませんでした。

 つまりまだカチンときていたのです。考えたらたらこの文章を書いている今だってカチンと来ているのです。あれからずっとカチンときていたのです。そんなに長くカチンときているなんて、もしかしたら話を聞いただけなのに、フグの毒に当たったのかも知れませんね。


危険生物図鑑その4

2023-07-10 07:00:36 | 草むしりの「ジャングル=ブック」

危険生物図鑑その4

  昔の農家はどこでもそうであるが、生家でも私が子供の頃には牛を飼っていた。耕運機が普及するまでは牛で田んぼを耕していたし、毎年子牛も生ませていた。

 農家にとっては貴重な動力源であり子牛を売れば現金収入にもなるので、家のものは牛を大切にしていた。牛も人に良く懐いていており、ドウドウと言って喉を撫でてやると嬉しそうに喉をぐいぐい伸ばしてきた。

 代搔きが終わって泥だらけになった牛を、叔父と一緒に川の浅瀬で洗ってやったこともある。家の庭には牛をつなぐ専用の太くて頑丈な杭があった。杭の天辺には回転する金具が打ち付けられており、牛をつないだ綱が絡まらないようになっていた。

 夕方そこに牛をつないでブラシを掛けてやったり、尻や腿にこびりついたフンを掻き落としてやったりしたものだ。その時牛の周りにはたくさんのハエやアブがまとわりついていた。牛は尻尾を振りながらそれらを追い払っていた。

 とりわけアブは刺されると痛いのだろう。

 刺された部分を小刻み揺らしていた。そこで私はハエ打ちで、牛にとまったアブを打ち据えてやっていた。牛も嬉しいのだろうか、パチンと打つと心なしか喜んでいるように見えた。

 何度もそんなこととしているうちに悪戯心がおこり、アブがいないのにハエ打ちでバチッとたたいてみた。牛はアブを叩いたと思ったのだろうか、怒るようなようすもない。

 面白くなった私はバチバチと牛を叩いていたのだが、それを母に見つかって大目玉をくらってしまった。

 当時牛は大切な家族の一員だったのだし、アブは牛だけはなく人も刺した。そして刺されると非常に痛いのだった。

  

 


危険生物図鑑 その3

2023-07-08 05:30:29 | 草むしりの「ジャングル=ブック」

危険生物図鑑 その3

 子供の時に毛虫に刺されことはおぼろげにしか覚えていない。ただその時親がしてくれた処置の方法を思い出すと、どこか懐かしさを感じたりもする。しかし大人になって刺された時のことはははっきりと覚えているし、嫌悪感しか感じない。

 もう三十年以上になるが、緑色の変な形をしたケムシに刺されたことがあった。危険生物図鑑で調べてみたところ、ヒロヘリアオイラガの幼虫のようだ。普通の毛虫のように細長くはなく、体長2センチくらいで大人の小指先くらいの大きさの平べったい形をしている。きれいな緑色をしており、背中には青色の線と多数のとげがある。

 写真をみるとこの幼虫に間違いない。とにかく刺されたと思った瞬間、激しい痛みがしてみるまに赤くなった。

 とたんに子供の時に毛虫に刺されて病院に行ったことを思い出した。あの時は発疹がどんどん大きくなり体中に広がった覚えがある。今度もまたそうなるのかと思いすぐに病院に行ったが、塗り薬一つで簡単に治ってしまった。

 意外と簡単に治ったので拍子抜けもしたが、とにかく最初の一撃の痛さに恐怖さえ覚えたのだ。

 それにしてもおかしな形の毛虫だ。足が退化して腹部が葉にぴったりとくっいているので、英名slug caterpillar(ナメクジ型のけむし意味)と言われている。こんなケムシ昔からいたのだろうか?その時初めて見た。

 我が家の八重桜の葉にはこの毛虫がいるようで、時々地面に落ちている。もちろん見たらすぐに踏みつぶすことにしている。

 


危険生物図鑑 その2

2023-07-07 06:07:28 | 草むしりの「ジャングル=ブック」

危険生物図鑑 その2

 子供の時に刺されたのはチャドクガの幼虫だろうか。例の危険生物図鑑のよるとチャドクガの幼虫は春と秋の年二回あらわれ、ツバキなどの葉に大発生することがあると書かれていた。

 あれは小学校の中学年くらいだったと思う。夕方無性に体が痒くなり赤い発疹ができたことがある。掻いているとどんどん大きくなって、ほぼ体全体に広まった。

 これには親も驚き、慌てて医者に連れていってくれた。幸い注射を一本打つと嘘のように発疹が引き、家に帰ったのを覚えている。

 その翌朝だった。父が興奮気味に昨日の犯人はこれだと、裏庭の山茶花の木を指さして言っている。よく見てみると、山茶花の木に毛虫がいっぱいついていた。

 そういえば昨日はこの木の下を何度も通って、風呂の水くみをした。当時風呂には水道がついていたが、井戸からポンプで汲み上げていた。その日は井戸枯れしたのかポンプが壊れたのか、水が出なくなったのだ。

 そんなときには樋(とい)から流れてくる谷川の水をくむことになっている。その日の夕方もそうで、何度も山茶花の木の下を往復してバケツで水を汲んだのだ。

 山茶花の木は父が切ったのだろうか、その日学校から帰ると山茶花の木は既に切られていた。母は以前からこの木を毛嫌いしていた。いつも虫がついて白い花も辛気臭いというのだ。

 でも私はなぜかこの花が好きだった。たぶんその頃は花の咲く木なんて、その木以外には植わってなかったからだろう。誰にも見向きもされないで白い花をポツンと咲かせるこの木は、どこか亡くなった祖父を思い起こさせた。もちろんそんなこと母には一言も言わなかったが……。

 以来毛虫に刺されることは無くなったし、井戸もボーリングをしたので枯れることも無くなった。。そして山茶花の木のあった場所には椿の木が植わっている。とても元気のよい木で、毎年無数の赤い花を咲かせる。きっと母がその後に植えたのだろう。


国宝級

2023-04-17 07:57:05 | 草むしりの「ジャングル=ブック」

国宝級

 それは夢であったのだが、ひどく不気味な夢だった。だが冷静に考えてみると、その夢がひどく幸運な夢であることに気づき、とても幸せになったことがある。

 田舎の家はどこもそうなのだが、母屋が一軒だけポツンと建っているわけではない。大概その横に厩ないし納屋があり、少し離れたところには倉があるものだ。我が家はその上に味噌小屋や薪小屋なども別にあった。

 私が夢を見たのは薪小屋だった。薪小屋は内所と呼ばれる台所の横で、西側の一番隅に建っていた。家のすぐ横が山になっているので、一日のうち数時間しか日が当たらず、小屋の周りはいつもジメジメしていた。

 今では瓦も葺き替え周囲もコンクリートを張ったので、それほどではないが、雨の日などはやはり湿気ている。

 ある日私は、薪小屋に蛇の住処がある夢を見たのだ。いるいる。大きな蛇から小さな蛇まで、親子だろうか。自分たちは代々ここに住み着いていていると大きな蛇がいうのだ。

「では薪小屋は昔から、白蛇の住処だったっていうのか」

 そこで私は目が覚めた。

「縁起でもない、今日か明日には初孫が生まれるというのに、あんな白蛇がたくさん夢に出てくるなんて……。こんな不吉な夢、見なかったことにしよう。……うん。……まてよ、白蛇……。なんだって白蛇がたくさんだって!」

 やっと目が覚めた。その日の午後生まれた初孫の手は開いていたが、はなぜかしら片方の手の親指と人差し指で丸を作っていた。

👌(オッケー)にも見えるし、お釈迦様の手のポーズにもこんな形あったな?いやいやお金のジェスチャーか……。「パパ、じいちゃんしっかり稼いでね」って意味か?

 余談だがその朝嫁は、お黄金のうんちから赤ん坊が生まれた夢を見たという。

 白蛇に黄金のうんち。なんと縁起のいいことか。嫁姑そろって国宝級の夢を見るなんて。  

 さても皆さま方には、母ばか婆ばかの戯言として、軽く聞き流していただきたいと、節にお願い申し上げます。