内田英雄文 古事 あらすじ16
第六章 国譲り(くにゆずり)
㈠高天原の神々の会議
その頃高天原では日本の国全体をおさめるために、天照大神のお子様を日本の国にくださねばならないことになりました。しかし下界にはまだまだ悪いことをする神や人間が、うようよいます。こんなことでは大御神の御子の天忍穂耳命(あまのおしほみみのみこと)は下界に降りていかれません。
そこで天照大御神は天安(あまやす)の河原に八百万(やおよろず)の神々を集めて会議をお開きになりました。
高天原で一番の知恵者の思金命(おもかねのみこと)が議長の席に着き、高天原の神々が輪になって座っています。八百万の神々は頭をひねって考えましが、いい考えが浮かびません。その時思金神命が、大国主命が治めている出雲の国が良いのではないかと言いました。
出雲の国はもともと大御神さまの国ですが、大国主命が苦心してひらいた国です。素直に返すでしょうか。
そこで大国主命と気があいそうな天菩比神(あめのほひのかみ)お使いとしてくだるって行きました。しかし気が合いすぎたのか、三年も音沙汰なしです。
㈡天若日子(あめわかひこ)
いつまで経っても菩比神は帰って来ず、高天原では再び会議が開かれました。
考えてみればこんな仕事は人がいいだけでは駄目だということになり、若くて頭のいい国玉神(くにたまがみ)の子どもの天若日子が選ばれました。
天照大御神は天麻迦古弓(あまのまかこゆみ)と天羽羽矢(あまのははや)を天若日子にお授けになりました。若い天若日子は大国主を説き伏せて手柄を立ててやろうと、大得意になって、下界に下って行きました。
しかし出雲の国は、高天原にも劣らないほどの立派な国で、大国主の命は顔を見るのがまぶしいほどの立派な方でした。
大国主命は高天原から来た天若日子を、心から敬い、下にも置かないくらいにもてなしました。天若日子は大国主命の娘の下照比売(しもてるひめ)と結婚をして、高天原の任務をきれいさっぱり忘れて、この出雲の国の主になろうという考えさえ抱くようになっていました。
月日の経つのは早いもので八年の歳月が、夢のように過ぎていきました。