16品(良医の譬え①)
叡智(えいち)聡明に達し。
薬の使い方に明らかに鍛錬している。
衆生の病気をよく治す。
その人はもろもろの子息多く。
約、十人、二十人。
ないし、数百人に至る。
以って、用事があり。
他国の遠くに至る。
まろもろの子は、至った後。
他の毒薬を飲んだ。
薬は悶絶、乱れるを発した。
地面を転げまわった。(地を這い。喉が乾き)
この時、その父は。
他国を廻って帰ってきた。
もろもろ子は毒を飲んだ。
或いは本心を失い。
或いは本心を失わなかった。
遥(はる)かにその父を見て。
皆、大歓喜した。
拝し次のように質問した。
善く安穏に帰国されました。
我等(われら)の愚痴をお聞きください。
誤って毒薬を服しました。
治療しお救い下さることを願います。
更に寿命を賜(たまわ)ること。
父は子供らを見た。
苦悩していたこの如く。
もろもろの経によって。
好む薬草を求め。
色香りは美味。
全ての資質を具足している。
従い和合している。
子供たちに服用させた。
しかし、この言葉の作用は、
この大良い薬は、
色香りは美味。
全ての資質を具足している。
汝らが服用することが出来ると。
苦悩を速やかに除く。
病を繰り返す患者はいない。
その、もろもろの子の中に。
本心を失わなかった者は。
この良薬を見て。
色香り良く好み。
即、これを服用した。
病気は微塵もなく良く除かれた。
他の本心を失った者は。
つづく